ドクターヘリの無線機、、

取り込み画像 002

 ヘリのパイロットが管制上のトラブルに巻き込まれやすいのは、無線機の使い方や性能などが影響して、聞き取りにくい、送信がうまく伝わらないということが相当に影響します。

 私はいろいろな航空機に乗った経験がありますが、ヘリの無線機が一番、職場環境が劣悪で、頭の上から騒音が発生するエンジンとロータを回すギアボックスからの轟音は半端なく大きくて、ヘリパイロットを長くやると難聴になるものも多いようです。

 ヘリの操縦はほぼ手を離せない局面が多く、周波数を変えたり、送信する無線機を選んで切り替えてマイクを通して送信する場合に、固定翼機のようにいつでも片手が開いているということがないので、切り替えるタイミングに苦労します。

 特にホバリングで地上滑走している場合にはほとんど両手ともを離せないので、離着陸前後の地上管制と飛行場管制の周波数の切り替えはある意味命がけで、強い追い風や乱気流で墜落しかけたパイロットは多いと思います。

 ドクターヘリの場合は航空管制用と社内無線用の2台の無線機のほか、パイロットが扱うのは現地ヘリポートの消防と通話する消防無線、そしてドクターが患者情報のやり取りに使う、医療無線があり、通常パイロットは送信はしない場合でも、受信音の情報はヘルメットのヘッドセットから流れてきます。

 2つ以上の無線機から同時に受信音が流れると、ほぼ両方とも理解できないことは多いようです。

 もう一つ問題なのは、ダブルトランスミッションと言って、通信する相手と自分が同時に送信してしまうと相手が何と言っているのがわからないだけでなく、相手が受信していなので相手もわからないことになり、両方が再確認しないと言いっぱなしで、相手が了解していると思っていると昨日の記事のようなことになります。

 管制等の見学に行ったことが何回もあるのですが、管制塔の無線機はダブルトランスミッションでも相手の送信がダブってもなんとか聞こえるようになっていたと思います。

 さらに管制塔の中は鉛筆を置いただけでもコトンと聞こえるほど静かで、ヘリの中で通信する困難さに比較にならないほどよく聞こえます。

 車輪タイプのヘリの地上の場合や、オートパイロットが装備されているヘリなら、手を放すことは自由にできますので、無線に専念できますが、操縦かんやピッチレバーを持っている両手は、ただ掴んでいるだけではなく絶えず修正操作をしますので、無線に専念できないという場面が多々あり、固定翼機に比較するとむつかしいようです。

 航空局の操縦試験官や陸自で2名パイロットで飛んでいたパイロットが会社で訓練を請け負って、最初に離陸してすぐに、無線機の周波数を社ない波に切り替えるときに、片手を離して操作したところ、ヘリは背面飛行になりかけたと同僚の教官が大笑いしていましたが、ジェット機でもトリムオフしていれば、離陸直後に両手をはなしてもしばらくまっすぐ飛んでくれます。

 シングルパイロットで無線機を3台も4台も駆使して、何回も周波数を変え、マイク切り替えをしながら、管制塔とやり取りし、会社と交信し、消防と交信することはある意味相当な技術です。

 そのような場面で管制塔の新米がわけのわからないことを言い出したら、ブチ切れそうになります。

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35年間のヘリパイロット生活 
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