航空事故調査報告書 模範解答は、、、




 今日の記事は昨日の続きのような内容となります。
 
 航空機事故の場合の事故調査報告書は色々とあって、たとえば今回の群馬防災へりの場合、まず事故調査を実施する組織体別に、国土交通省の安全運輸委員会、次に犯罪捜査上行う警察検察、運航主体の群馬県、操縦士や整備士などを派遣していた運航会社などがそれぞれ独自に行う事が多いようです。

 国土交通省は、同種事故再発防止のために純粋に事故原因の真実に迫り、どうすれば同種事故の再発を防ぐかと言う観点で調べますが、調査に強制力はありません。

 警察検察の場合は犯罪捜査ですから、場合によっては強制力があったり、関係書類などを押収されたりして、重大な過失や場合によっては故意、航空法違反などの犯罪を立件する目的で行います。

 防災ヘリを運航する群馬県は、事故原因を特定し、責任の所在を明確にし、再発防止策を策定し、そして一番の重要な事は出来るだけ運航再開を短期間に確実に行うことにあります。

 運航会社の事故調査は事故原因を解明し、自社の運航能力信用の失墜を出来るだけ少なくし、経営にダメージが少なくなるような調査にならざるを得ないでしょう。

 このように列挙すると同じひとつの事故に対して、まったく切り口の違う調査が行なわれて、出てくる模範解答が微妙にそれぞれ違う事が想像されます。

 共通しているのはあまり芳しいことではないのですが、事故調査の結果によって自己の組織が受けるダメージを出来るだけ少なくしたいと言う事はある程度は致し方ないと言えるでしょう。

 たとえば運航会社がフライトプランの運用をいい加減にしていたとか、パイロットがライセンスを携帯せず、搭載書類を載せていなかったなどと、事故にまったく関係ない、運航会社の不利になるような情報を流す目的は、航空会社の悪辣振りを印象つけて、原因調査の目を捻じ曲げる目的でしょう。

 神戸空港でAS350が横転した事故で、滑走着陸の地面がぬかるみでやわらかく横転しやすい状況であったかどうかを調査対象にしなかったか、調査しても無視して取上げなかったならば、空港管理、航空局関係の責任のがれかもしれません。

 群馬県が事故調査を行なって、運航会社の非を大きく取上げるのは、運航再開を他社でやるかまたは自主運行として、早期再開を図りたいと言う目的があるかもしれません。

 運航会社としては、群馬県はあきらめるとしても自社の経営へのダメージを出来るだけ抑えたいと思う事は当然のこととなります。

 と言うことで関係各組織に置いてなされる事故調査は目的も違い、調査方法や能力も違い、さらには求められる模範解答も大きく違ってくる可能性があり、どれが一番真実に迫っているかなど素人にはまったくわかりませんし、事情を知った関係者にしても良く注意しながら読み解く事がないとすっかりだまされる可能性があります。

 このような状況で、どの部門にとっても納得できる絶対的な模範解答ががあり、それはパイロットがドアホで馬鹿で大失敗をしでかしたと言う内容の事故調査報告で、これを出せば運航再開はいち早く出来、再発防止策もほとんど何もせず、今度は優秀なパイロットを乗せます、で終わります。
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Secre

No title

長野県 防災ヘリ事故当時の機長は、カメラで操縦中に撮影する事が過去にあり、上司から注意されていたようです。事故当日も、午前に山岳救助出動の際、機内を撮影していたとの事です。また、異常な低空飛行中にも外を撮影したデータがあるそうです。ヘリの操縦中にこのような(手放なし?)は出来るのでしょうか。

No title

手を離す程度は十分出来ますし、お弁当を食べたり電話したりも、、しかし手を離す事が一概に悪いとはいえないと思いますが、、、> nsxr8198さん

No title

私の場合は訓練開始から30年以上手と足を離すことはなかったです。
短時間手を離す場合は両足でサイクリックを挟みます。
コレクティブについては不測の事態が起きないように監視、確認しながら
無線操作します。 飛行中に弁当食べたり電話することもなくヘリ人生を終えるこ
とができました。めでたし めでたしです。

No title

もちろん高性能のSASやオートパイロット着きですが412なら着いていると思います。不安定なKH4でもタバコを吸ったり、地図を探したりそれなりに手放しをマスターしたものでした。> hik*****さん

No title

もちろんオートパイロットでも500フィート以下は手放し禁止とかそれなりにルールはありましたが、、> hik*****さん

No title

> bel**14b*989さん
すばやいレスありがとうございます。補足説明していただいたことで一般の方が
誤解されないようにして頂いたことに感謝します。

No title

操縦士の実地試験では航法作業を機上で行います。
これは片手を離さないと行えませんからヘリではコレクティブにフリクションを入れ片手でサイクリック、もう一方の手で航法作業を行うやり方が一般的です。
太ももにサイクリックを挟むやり方を行った方も居るようですが試験官に怒られたそうです。
固定翼機は操縦に両手が必要とされる場面が少なくこの辺は羨ましいですね。

No title

管理人様のように許容範囲で手放し操縦しても事故を起こさない人は起こさない。
何故なら許容範囲を自己管理できているから。
事故を起こす人は手順書が有ったって、事故をを起こす時はは起こす。
何故なら自己管理できていないから。(運もあり100%ではないにしても確率的な話ですが)
二人体制にすれば片方がフォローするだろうと管理する側は都合よく考えるのでしょうが、では墜落事故が発生し、助手席の予備パイロットだけが生き残った場合、操縦していたパイロットが居眠りしていたのかどうか、不適切な操縦をしていなかったかをチェックできなかったからと言う事にされ、多額の損害賠償請求を遺族らから受ける可能性と言うのも考えなければいけません。

No title

機長の問題行動、知事「残念」 防災ヘリ墜落報告書受け
二〇一七年三月の県消防防災ヘリ墜落事故について運輸安全委員会が公表した調査報告書で、死亡した機長が飛行中に写真を撮影していたなどと問題視されたことを受け、阿部守一知事は二十六日の会見で「安全注意義務を果たしておらず、残念だ」と話した。

報告書では、機長は〇六年、飛行中の写真撮影に対して当時の県消防防災航空センター所長から「安全運航に徹すること」と指示を受けたが、一七年一月や事故当日の午前中にも機内を撮影しており「最近は指示に従っていなかった」と指摘された。

同乗の整備士や隊員が機長に何も言えない雰囲気だったのではないかと質問されると、阿部知事は「そのような状況だったわけではないと聞いている」と認識を示した。「運航再開に向け、できるだけの対策をしたが、報告書で議論されているようなことも対応していきたい」と話した。

中日新聞(渡辺陽太郎)

No title

> aaa*****様へ
試験の場合に足ではさむことはまずないですね(笑)。試験ではそもそもサイクリックを離しませんので良くわかります。
プロになって仕事でいろいろと事情が出てきたときにどうするかの前提として
考えた場合のことをBellさんたちが言及しているのだろうと思われますので
bellさんやAAAさんの考えかたわかります。コレクティブにフリクションいれる
ってのも知ってましたが、こちらの説明不足にご指摘ありがとうございます。
よくわかっている人が集うこのBlogいいですね。

No title

ブログ内容に関係ありませんが、手放しコメントで盛り上がってるので一言。
航法計算盤を実務で使うことも使う方も見たことが無い(今時)。
しかし資格試験では、これ以外使えない。私はPCやスマホのない30年位前から当時からあったプログラム関数電卓で処理。その後はポケットPC(今の人はたぶん知らない)、今はスマホのアプリ。航法で手放しの負担は無い。昔の人からは『壊れたら』『電池が切れたら』とイヤミを言われた。計算盤がスタックする恐れのほうがよほど高い。この業界は本当に進歩が遅いというか無い。もちろん計算盤のほうが速いという方もいるが(神業です)、大方は面倒を感じてるはず。すくなくとも資格試験での計算盤使用限定はやめましょう。
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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