ヘリ事故調査報告2件と死亡事故の報告







 昨日はヘリ事故2件の調査報告と、平成7年以降の航空事故でヘリコプターの死亡者が全体の死亡者の半分以上を占めていると言う報告1件との3件が安全運輸委員会からありました。

 不謹慎な言い方かもしれませんが、ヘリ事故花盛りとでも言うのでしょうか、ヘリコプターのパイロットたちは一体何をしているのかと言わんばかりの報告となっていると感じるのは私だけでしょうか。

 日本の公式の航空事故調査委員会は1966年の羽田沖に全日空のB727が墜落し、133名が死亡したことで組織されました。

 実はこのときに臨時に組織された事故調査委員会の責任者がこの727を導入することを主導した、かの有名な木村秀政という人間にやらすことに多いに不公正を危惧した勢力が公正中立な事故調査の組織を作ることを提唱し、専門的に継続的に調査をする今の事故調査の基本が出来上がりました。

 この事故調査委員会と言う組織が出来たのですが、旅客機の事故などそうそう起こる事はなく、この組織が何をしたかというと、当時から最大250機にも爆発的に増えたヘリコプターの農薬散布の事故の調査をすることでした。

 事故調査委員会の事故調査の目的は、事故の原因を正しく突き止め、同種事故の再発防止策を図る勧告などをすることでしたが、農薬散布がラジコンヘリに取って代わるまで有効な事故防止策を打ち出すことなく、多くの犠牲者が出たまま終わりました。

 そして今、2007年から2018年までのヘリコプター事故の死亡者は航空事故全体の半分以上であるとの報告を出して警鐘を鳴らしたつもりでしょう。

 同じ日にヘリコプター事故2件の調査報告を出したのですが、果たして事故の真の原因に迫り、再発防止に決定的な決め手をあぶりだしているかどうかの評価は分かれるところでしょう。

 事故調査の担当者のみならず、運航を直接行政指導する航空行政部門が、ヘリコプターの運航関係者、特にパイロットの質や能力が他の種類の航空機のパイロットに比較して劣っているのではないか、あるいは運航会社や運航主体、組織にも欠陥があるのではないかと言うような思い込み、危惧を抱いているのではないのかとも思えてきます。

 しかし、同じ航空分野であってもヘリコプターの運航環境はかなり厳しい過酷な面があり、事故も多いという事は世界的な常識で、航空先進国でも、ヘリ製造会社、行政、運航会社などが一丸となって安全効率的な運航を目指し、無事故を追求しています。

 さて振り返って日本はどうなのかと言う面で振り返る時、バブル以降の民間ヘリ運航の減少に伴って、パイロット初め運航関係者の能力の低下、要員育成力の弱体化などが起きているのではないかと言う恐れが表面化しています。

 今回の事故調査などの公表で、それ以上に深刻な病巣出ていないかと危惧するのは、ヘリコプター関係の行政組織の能力や実務に当って以前にも増す常識はずれ、能力不足があるのではないでしょうか。

 その一番の例が、ヘリ事故の死亡者が多すぎると言う提言を出しながら、安全運輸委員会そのもの自体のヘリ事故の調査能力に疑問がないのかと言うような事は検討すらした事がないでしょう。

 ヘリコプター事故の調査をする要員にヘリパイロットは半分以上いてもまったくおかしい事はないと思いますが、さて足元を見て寂しい思いはしないのでしょうか。

 山に激突した原因が1週間前に海外旅行から帰った時差ぼけで寝ていたと言うことなら、もちろんそんな事はないと言う反論が出る事は当然でしょう。

 要員の枯渇で今後10年程度の間に起こりうるヘリコプターの死亡事故の見込みの半分程度に減らす事が出来るような、直接有効な再発防止策は打ち出せないと、事故調査の有効性は疑われることでしょう。

 パイロットがアホだからとか、居眠りしていたからなどというような報告なら何度でも墜落して多くの犠牲者が出ることでしょう。
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Secre

No title

正確には、ヘリの死亡者数は55人で全体の56%と書いてあるね。
とゆう事は、飛行機の死亡者数は44%って事? 事故調やマスゴミは、いかにもヘリの事故が多いように煽ってるけど、ヘリも飛行機も、ほぼ半々ぢゃん?
ここで500人乗りの旅客機が墜落したら、ヘリの死亡者数は全体の10分1になっちゃうよ??
てか、こう考えると国内じゃ、オスプレーは誰も死んでないし安全だよね。

No title

事故調査委員会の中にどれだけヘリ操縦経験の豊富な人がいるのでしょうね?
マイクロスリープは日本から米国航空留学後3日目くらいまでは発生しましたけど?

No title

にわかに信じられない長野の調査報告ですが、消去法でこのような結論になったのでしょう。
ヘリの仕事は防災であれ、物輸、薬散などは、あえてある程度の危険な状態を許容した上で商売が成り立っていると思います。
国はなんの対策をしてきてないとの管理人さんのご意見に同意しますが、ここで国が安全のための旗印のもと規制をかけてきたら商売にならない。そんなジレンマを感じます。

No title

何事も個人の落度のせいにしてしまえば確かに管理やマネージメントする側は楽ですね。
ヘリの操縦可能者を二人体制にするとかの案も有るようですが、それでは操縦していない方の人が、操縦している方のパイロットが居眠りしていないかを横からジロジロずっと見ているのでしょうか。
何せISOとか安全衛生ナントカでは「1秒たりとも管理、監視の空白があってはならない、指差呼称で声を出して確認」と言う事でしかもそれを文書化して残さなければならないとかの話らしいですから。
非の打ち所のないタテマエを武器にして現場でリスクを負って苦労している人達を囲い込み、何か事故やトラブルが有れば現場の個人のせいにする。
役人がそれをやるなら人数も少ないのでまだマシとは思いますが企業の管理職とやらまでが役人レベルの自己保身をしている現状では現場は大変でしょうね。
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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