恐怖心の克服 ヘリパイロット、、、、



 高所恐怖症はパイロットになれませんか?と言うような質問は時々聞かれたことがあります。

 どんなことでも程度問題で、絶対になれますとも言えないのですが、過度のものでなければ、どんなことでも人間はほぼ克服できると思います。

 フェンスの無い50メートルの屋上へリポートの淵へ腰掛けて、足を外へ投げ出して、夕涼みするドクターがいてたまげました。

 15000時間以上ヘリに乗って飛んでいた私はそれほど高所恐怖症ではなかったのですが、同じことは出来ませんし、ヘリポートのふちから1メートル以上はなれていないと、心が落ち着きませんでした。

 もともと生まれ着いて、それほど高所恐怖症ではなく、中高は体操部で鉄棒の高さが2.5メートルで正宙返りなど降り技では4メートル以上から降りますのでずいぶんと慣れたようです。

 落下さん降下訓練で、90メートルの降下塔は緊張で恐怖を感じる暇はありませんでしたが、11メートルの飛び出し塔は相当な恐怖心を感じ,ビビリましたが、飛び出すときの態度から同期生50人中、ちょうど真ん中程度の怖がり方だったようです。

 訓練で飛行機やヘリに乗り出してからは、科目や手順に忙しすぎて恐怖を感じる暇が無く、2,3度あった緊急事態にも恐怖を感じる暇は無かったように思います。

 もと体操選手でしたので、アクロバットも楽しいくらいで恐怖心はなかったのですが、唯一本能的な恐怖心で体がこわばることを数十時間飛行するまで感じることがありました。

 それはマイナスGで地上で暮らしている場合には絶対にありえない感覚で、体操でどんなに激しい動きをしても、プラスG1.5くらいから0Gまでで、マイナスGがかかることは理論上ありません。

 飛行中に乱気流やアクロバット中の誤操作でマイナスGかかると瞬間的に体がこわばってなんともいえない恐怖を感じたものです。

 それも20時間ほど飛ぶうちに慣れてしまい、まったく恐怖心を感じないどころか、逆に体全身のマッサージになるようなえも言えぬ快感にまでなったものでした。

 自分自身の体験ではないのですが、同僚で長く柔道をやっていた者がいて、組み手で右襟、左袖の形ばかりだったとのことで、左旋回には普通なのに、右に旋回すると体に力が入ってしまって困ったと言っていたものがいました。

 ヘリの場合の恐怖心の克服では超低空飛行、悪天候、オートローテーションなどの急激な対地接近、機体の故障、振動など段階を追って色々な課題が出てきて、ルンルンと飛行するばかりではすまない状況が出てくることでしょう。

 私自身も35年の経験であーこれで死んだーーと言うようなことが5,6回はあったように記憶していますが、一人操縦のヘリでは自分しか助けてくれるものはいないと言うことで生き抜いてきたように思います。
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bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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