函館事故の突きつける問題点、、、








 函館で陸自のLR-2が計器飛行方式による進入時に山にぶつかって墜落した事故は、日本の公的なヘリの運航に大きな問題点を投げかけています。

 航空機の運航上、悪天候といわれる計器飛行状態は、いつどこで発生するかわからず、しかもその状態を正しく観測し、データとして発信できているのは空港とその周りの狭い空域に限定されていますから、救助や急患搬送などで飛行するヘリや固定翼機は、天候にかかわらず自由自在に飛行する能力を近い将来において実現することを求められています。

 悪天候のデータが常時正確に観測通報されている空港間にあって、今の時代は固定翼機に限らずほとんどのヘリコプターも計器飛行方式の飛行が可能で、かつパイロットも訓練を受けて資格を持っていますので、わざわざ陸自の非力なLR-2などのお世話にならなくても、保安庁のS76や防災消防ヘリが飛行可能でないとは言えないでしょう。

 ドクターヘリもパイロットが資格を持つことを義務化すると、ヘリの能力も性能的には十分可能ですから、近い将来において空港間などは対応するべきでしょう。

 すでに30年も前から、国土交通省航空局はヘリの運航において、急な悪天を安全に切り抜けるために、パイロットの計器飛行能力の向上を求める訓練や試験科目の変更を実施し、さらに計器飛行資格の取得を強力に推進したのですから、函館事故当時のレベルの悪天など普通に飛行する能力はヘリにもパイロットにもあるべきであったと言うことになるでしょう。

 ヘリコプターの悪天時の運航能力で、困難な状態と言えるのは、実況を正確に観測できない、飛行場以外の場所への離着陸なのであり、同時に飛行場と同じように進入離陸方向の障害物の完全な規制などが行ないえるかどうかです。

 進入 離陸時の障害物を飛行場と同じように規制したり、正確なデータをパイロットに提供できるかどうかがないと、計器飛行で安全な離着陸は出来ないのと同じように、天候が悪くなくても夜間飛行でも同じように障害物は見えない状態である野で危険だということが言えるでしょう。

 今の計器飛行資格のヘリパイロットのほとんどが、悪天候では飛べませんなどと言っていますが、それは飛行場以外の場所への離着陸に限ると言うことを知っていながら、飛ぶことをしないようにしているのでしょう。

 ヘリコプターに取って夜間飛行は計器飛行と同じ領域で、障害物からの安全性を保障することなく飛行は出来ませんが、逆に昼間の離着陸の障害物からの安全性は、人命救助の名の下にまったく省みられることがなくなってしまって、今後の計器飛行や夜間飛行時の安全性との兼ね合いが大変複雑なことになってしまっています。

 阪神大震災時、大阪伊丹空港長が西宮グランドへ夜間、飛べと命令した時、私は夜間で阪神地域は停電していて、グランドの周りの電線は見えないと思うのだけど、線に引っかかって墜落して死ねと言うことですかと言ったことがありました。

 函館から札幌医科大病院へ飛ぶヘリは計器飛行方式で離陸さえすればLR2が墜落したあたりから札幌までは十分に有視界で飛べたはずなのですがなぜか飛行を拒否しています。

 有視界に移行できなければ丘珠へGCAで十分着陸できたことでしょう。

 わざわざ陸自のLR-2を呼びつけることなどしないでも済んだことでしょう。

 ヘリコプターの計器飛行が導入されて早30年、ヘリにはジャンボに負けないほどのフル装備になっているのに、いつになったら計器飛行や夜間飛行するのでしょう。
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Secre

No title

ヘリコプターの計器飛行について国交省の取組に疑問を感じます。我国の計器飛行ルートは基本的に固定翼機を対象としたもので、一部の民用ヘリを除くと中小型機には厳しいものがあります。ヘリコプターの運行条件に見あった計器飛行ルートも整備せず、計器飛行能力の向上を求めても片手落ちではないでしょうか。
低高度での計器飛行能力を維持する事は定期運行の旅客機以上に種々の問題があるかと思います。真剣な検討が必要では無いでしょうか。

No title

予備燃料の問題もありますよね。
へりは長い時間飛べないし・・・

No title

30年以上、真剣な検討がなされていないですね> crockyさん

No title

ヘリの計器飛行が導入される30年前の事業用試験科目には、BIFの科目はなかったので当時の免許取得者は不運にも雲に囲まれたら機体性能からしてもレベル飛行は容易でなくなり操縦不能に陥ると思う。S-76なら計器で飛べるAoutPやGPSの装備があって丘珠がVMCなら函館はSVFRで飛べないくらい視程が悪かったのでしょうか? 低気圧や前線通過中なら無理かもしれません。

ヘリは自立安定性が無いのでヘリの計器証明を取っても無駄ではないけど飛行機は国際的な需要と経済的な利害関係があるけど、ヘリの計器飛行整備は経済効果など無くお荷物扱いないのでは? 札幌までは十分に有視界で飛べたとしたらなぜ飛行を拒否したのか各関係者に理由をお聞きしたいです。さもなければ、今回の事故で残されたご家族も可哀想です。 当時、フライトレコーダーを外した理由も説明されず、ボイスレコーダーの解析が気になります。

No title

函館APPのチャートの記載誤表示だったか、管制指示ミスだか忘れたけど山肌に衝突寸前で回避され幸い事故に至らなかったが重大インシデントが過去にあった。 対地接近 警報装置GPWS(Ground Proximity Warning Systemが装備されていれば、警告音で回避できたかも知れない。

No title

ロメオの対地接近警報のアラートはATCから訓練中漏れ聞こえるので正常に作動していればなっていたと考えられます。

No title

> クロネコさん
道警もAW139を2機も配備していますが、こういった時にはりようしません。
丘珠のLR-2、最新のグラスコクピット仕様でしたが、この機種にVNAV-PATHやVNAV-GPがあったのかは存じていませんし、DFDRも外されていたなら、本当に音声のみがたよりですね。
HACは通常に運行していはいましたが、何らかの機材トラブルなのか、気象的な急変も可能性はあり....

No title

場外離着陸が多いヘリの場合、肝心な離着陸がIFRで出来ないと、あまり普及しないでしょうね。エンルートだけIFRでも意味がありません。
数万箇所もある場外にIFRアプローチ経路を設定するなど非現実的だし、ドクヘリでは絶対無理でしょうね。
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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