台風とヘリコプター
観測史上初のコースを取っているという台風10号が東北地方へ上陸する構えです。
長いヘリ生活では台風に翻弄された経験ばかりで良い話はありません。
台風で被害を受けたヘリでは、関東地方で農薬散布のため河川敷に繋留されていた5機が増水で流されたということがありました。
屋外に繋留されていたヘリが横倒しになった例は聞いたことはありませんが、自分が青森県の蟹田でしたか、ヒヤッとした経験があります。
台風が接近してきたため早朝からの農薬散布は中止順延となり、クルーは一日自由の身となり、喜び勇んで青森まで遊びに出ていたところ、風雨で荒れていた天候が昼頃急に晴れ間が出ました。
進路が急に変わってどうも台風の目が直上を通ったらしくて、ヘリが心配になって急きょ帰ったところ、なんと止めてあったヘリが45度くらい向きが変わっていました。
強い風にあおられて動いたようでしたが、損傷はなくヒヤッとしただけで済みました。
近辺に格納庫の設備があれば野外に置かないで格納するところですが、そうもいかないのが貧乏ヘリ会社の実態でした。
物資輸送の中型大型ヘリはいったん横転してしまえば損害額が大きくなりますので、相当遠くでも避難格納したものですが、物資輸送の段取り、きりがあるので、自分勝手に避難することは出来ません。
台風の動きと仕事の段取りを考えながら飛んでいると、天候が急速に悪化し非難する時期を失っしてしまったこともたびたびあります。
ヘリが物資輸送で飛ぶ現場に重機類には事欠きませんので、ヘリの周りに杭を打っていただいて、ロープでがんじがらめに縛り付けましたし、AS330などではローターを取り下ろしてばたつかないようにしました。
台風一過さて飛ぶぞと、材木搬出の現場へ飛んでいくとき、空港はほとんどそよ風でしたが、吉野の山へ入った瞬間、台風と同じような強風が吹き荒れていて、着陸さえできずに戻ったことがありました。
同じように台風一過の快晴の空を八尾から三朝温泉まで普段は1時間半かかるところを1時間で着いてしまい、着陸しようとしたら30メートルの風が吹き荒れていて着陸できずに鳥取空港まで避難したこともありました。
中型以上のヘリは20メートルくらいの風なら何とか直陸ぐらいはできるのが普通ですが、台風の風だけは油断がなりませんでした。
日本国内のドクターヘリの現場はほぼ格納庫が整備されてきてはいますが、一部格納庫のない現場もあって台風のたびにどこかへ避難しています。
この台風避難というフライトはなかなか油断が出来ないもので、避難の時期を失してしまえば動けませんし、ぎりぎりで飛ぶかどうかの判断も迫られたりしますし、早めに実働待機をやめて避難すればよいというほど単純簡単なものではありません。
いつもいつもそううまく避難できるとは限らないということも忘れてはなりませんし、ヘリポートに隣接して格納庫があれば避難に失敗して危険なことに合うこともなく、ヘリは5分で100%安全な場所へ移動できます。
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