ヘリコプターの着陸と離陸、、、





 ドクターヘリが着陸事故を起こし、医療関係者の方たちや着陸場所を提供していただいている方、またその周囲の住民の方たちに大きな不安を与えていることでしょう。

 事故機の直接運航する関係者はもとより、航空当局、さらにはドクターヘリの運行を発注している病院や県、そして厚生労働省関係者の至るまで、多くの関係者は真摯に原因の究明と再発防止に努める必要があります。

 このような事故の原因を考える上でヘリコプターはきわめて安全容易に垂直に離陸し、また垂直に降下して着陸できるものだという誤った認識があり、この考え方は全くの素人の一般人から、航空行政関係者、運航を発注する人たちから、これはプロのヘリパイロットまで蔓延しています。

 ヘリコプターの操縦訓練や資格試験において、離陸や着陸はどんな場合でも飛行機と同じように一定の角度で糸を引くように飛んで行います。

 垂直に離着陸するのは小型機で1.5メートル大型機で3メートル程度だけで、10メートルも20メートルも垂直離着陸するような離着陸方法はいかにパワーが十分な機種でも危険極まりなく、誰も教えませんし、試験でもそのようなことは一切しません。

 ドクターヘリの離着陸を見ていると10人中8人から9人は50メートルも100メートルも垂直に上がり、ほとんど垂直に下りてくるような飛び方をするパイロットばかりです。

 基本的な離陸は1.5メートルのホバリング高度を維持したまま、速度をつけて転移揚力が付けば上昇パワーで速度は最大上昇速度で上がっていきます。

 着陸は自分が決めたパス角度 8度とか12度、障害物があればそれをクリアーできる角度を保ってホバリング高度まで、速度を一定の減速率で着陸します。

 防災ヘリやドクターヘリがこのような原則的な離着陸をしなくなった理由は、一番は防災用ヘリポートの規制緩和で10メートル上空の仮想着陸対を認めたことが一つの原因となっています。

 もう一つ重要な原因はピストンエンジンの力のない、垂直に離着陸が物理的にできなかったヘリから、ジェットエンジンの強力なパワーを持ったヘリに代わり、一見簡単に垂直離着陸ができるようになったという背景があります。

 最近ではドクターヘリの離着陸、特に離陸を見ればそれが一目瞭然で、全く意味のない高度100メートルまで最大powerでホバリング上昇していく馬鹿なパイロットが多く見受けられます。

 ヘリがなぜ一定のパス角度を進入上昇していくのか、その基本中の基本を忘れ、安易に垂直離着陸を繰り返してきた報いが出たようなものです。

 まったく意味もない、不安全な離着陸にいつもいつも最大powerを振り絞って飛ぶことを強制されるヘリコプターもかわいそうなもので、そりゃたまには横風も食らってテールロータは悲鳴を上げるし、落とされたりしてオーバーパワーを使えば回されるは、落下は止まらないはと、危険この上ない状態にもなるでしょう。

 少々powerがあるなどと侮っていると落とされたときは同じ石だと気が付いても間に合いません。

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コメントの投稿

Secre

No title

ニュース番組でドクヘリの特集を見ていた時に学校のグランドへ着陸シーンでしたが、かなりの高さから垂直着陸していました。見ながらなんで普通に進入しないんだろ?って思ってましたがそんな理由もあったのですね。

No title

騒音のために民家の上を低空で飛びたくない、電線を避ける、という理由ではないでしょうか。

No title

ドクターヘリが、一分一秒を争う運航を求められていることと、パイロットがより安全な手順を選択して飛行することを切り離して考えた場合、
屋上ヘリパッド等の狭所においての離着陸では、いずれも離着陸地点直近でOEIになった時に困らないように、
パフォーマンスや環境条件が許せば規程に基づいた決心高を設け、辛うじてヘリパッドが足元に見える程度のバーティカルに近い離着陸を行うことは、手法として理にかなっていると思いますが、いかがなものでしょうか?

No title

OEI(片発停止)はTA級運航のことで一番不利な時に片方のエンジンが止まってしまった場合で、おおむね着陸場所を変えないという前提になっています。現在使用中のドクターヘリの機種では重量の制限を受け燃料や搭載人数を減らす必要があるので不可能となっています。つまり今の重量で垂直にやっているとエンジンが二つとも回っていても今回のようなことになります。OEIになったときにゴーアラウンドし違った場所の広い場所へ向かって着陸するためにも普通の離着陸をするべきでしょう。> くーさん

No title

騒音被害の申し立ては騒音の大きさ×時間で苦情が来るようです。垂直に上がって50メートル離れても1分も2分も最大の音をまき散らすより少ないパワーでいち早く現場を離れるほうが良いのではないでしょうか。ただし垂直に離着陸するよりパス角維持の離着陸はより速度コントロールが難しくなりますが> dia**ao_x*nxiさん

No title

もう一つは障害物からの距離の判定を正確にできないパイロットが多くとにかく離れたいという潜在意識があるようです。パス角進入離陸では障害物上空を何メートルで通るかということが決め手なのですがその決定ができないのでやみくもに離れたがるということですね。> dia**ao_x*nxiさん

No title

障害物上空10メートルで通せばダウンウオッシュが強烈に当たって被害が出るという思い込みもあるのですが、一定の速度があればパワーはごく少なくて済み、ほとんどダウンウオッシュも当たらないということも知らないようです。> dia**ao_x*nxiさん

No title

https://m.youtube.com/watch?v=bV-HOy5Cndg

FLIの指示トルクにも余裕があり、そこそこ良い風も貰っているようですが、この状況下ではこれが最も安全な着陸方法かと思います。

管理者様のおっしゃる「普通の離着陸」がそうであるとは思いませんが、一見スマートな離着陸に固執するあまり、フレアアウト時や前進操作開始直後のOEIを考慮せず、
常に一定のパスやホバリング高度を維持する飛行方法にはちょっと感心できません…

No title

ソラシドエア副社長転落死、自室に妻?女性遺体 これから増えますね。

No title

横進での着陸の場合は、どうなんでしょう?

No title

横進は普通あり得ない方法ですね> ゆうさん

No title

私はこのような着陸は絶対にしなかったですね。こんなに深いアプローチをする理由がわかりませんね、時間を余分に開けて危険な高度でのホバリング状態が長すぎますね。TAオーバーの重量なら最悪です。> くーさん

No title

重量オーバーは論外ですね…(苦笑)

ヘリパッドへのTA級着陸で承認された経路を飛行する際、HV線図は消滅しているはずです。
重量や密度高度の制限は、その代償ととらえるべきでしょう。

もちろん、性能と操作は別々の問題で、定められた手順を守らずに降下率の管理を怠ったり、風の変化や気流のじょう乱等、諸要素への配慮を欠いたりすると極めて危険な角度ではありますが…。

ともあれヘタレPの私が考えるCAT-A運用の有り難みは、「パイロットが特別な操縦技術や注意力、反応時間を要しないこと」を前提とした上で、定められた条件の下、定められた手順を実践すれば、どのタイミングでOEIになろうとも安全な離着陸および復行性能が保障されていることに他ならず、それこそ百戦錬磨の管理者様から見れば、無用の長物と映ることは致し方無いことかと存じる次第です(笑)、、、
> bel**14b*989さん

No title

この人自家用飛行機だな!> くーさん

No title

EC135など小型TAは重量制限が厳しくて通常の運行ではかなり軽い状態となり実用性がないと言えるでしょう。TAは特別な操縦や手順がいらないとは言えOEIのエンジンコントロールはかなり難しいので訓練もエンジン制限を超えないようにさらに軽い状態で実施します。思ったほど簡単でなありません。> くーさん

No title

定められた条件、定められた手順を実践すれば、墜落することもあります> くーさん

No title

その通り。保障されているのは性能だけなので、、あなたがやったら墜落するでしょう(笑)> 自分でやってみさん

No title

あなた自家用代行でしょ> くーさん

No title

みんなで墜落して下さい > くーさん

No title

その通り。保障されているのは性能だけなので、、命の保障はありません。> くーさん
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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