パイロット 操縦桿は卵を握るように!!、??

 

 
 

 
 
 操縦桿は卵を握るようにと操縦教育の初期の段階でよく言われます。
 
 緊張して操縦かんを硬く握りしめていると、細かい微妙な舵を使えなくて、操作が遅れて大きくなるという致命的な不具合が出るということだと納得したものでした。
 
 ところが長く飛んでいるとさらに深い意味があるということに気が付きました。
 
 卵を握っているときに、不意に誰かが肩に強く当たったとします。卵を握るようにとやわらかく握っただけの状態だと、卵は指をすり抜けて床に落ちて割れてしまえばやわらかく握っている意味がありません。
 
 そして不意に指の間からすり抜けて堕ちそうになったからといって、急激に強く握り締めてグシャと割ってしまっても意味がないということです。
 
 つまり握る強さはそのときの状況に応じてうまく強さを加減して、確実に必要な舵を遅れることなく、必要な量だけ使えるような握り方をしなさいという意味です。
 
 とくにヘリのパイロットは固定翼機にない、ホバリングという微妙な操作があり、この操作は特別に細かくて適時適切に、しかも最小限でという縛りがあります。
 
 長い吊り下げやホイストを使用してのホバリングはヘリが1メートル移動すると、救助者や荷物はその釣ワイヤーの長さ荷比例して5メートルも10メートルも揺れ動いてしまいますので、1センチの移動もなくホバリングする必要があります。
 
 といえばそんなことは出来るはずはないという激しい、反論が来るでしょうが、答えはその通りで1センチも動かないホバリングなどはありえません。
 
 ならばどうするか、簡単なことです。これが出来ればの話ですが、、、、
 
 ヘリが進入してゆっくり減速して、ホバリングする。 如何にゆっくりスムースに減速しても、ヘリが止まっても、荷物はヘリの前を進んでいきますので、ヘリが止まった瞬間は荷物 吊り荷は必ずヘリより前、ワイヤーの長さによって数メートル 場合によっては50センチ程度前でヘリにやや遅れて止まります。
 
 次に何が起こるかというと、前に振っている吊り荷は振り子の原理でヘリの真下を通り越して後ろに振れようとします。
 
 ヘリが止まっていればの話ですが。
 
 ヘリと吊り荷がほぼ同時に止まった瞬間、どちらかというとヘリがほんのコンマ数秒先に止まりますが、それに続いて吊り荷が止まったら、卵を握ったような操縦かんを前に出して、ヘリを吊り荷の真上に 場合によって動かす距離は違いますがような吊り荷の真上に 通常50センチほど前に移動させてやります。
 
 このヘリを前に移動させるタイミングは、早くても遅くても振り子現象を大きくさせ、揺れ方を激しくするおそれもあり、操舵量とともにまことに微妙な操作で、いかにも卵のように握っていないと難しいということになります。
 
 これでヘリの操縦桿は卵のように握らないとうまく操縦できないということで話は終わります、、、、.とは行きません。
 
 実は強風や乱気流の中で、体が操縦席から跳ね飛ばされるまで行かなくても、がたがたと揺れ動くことは普通にありますから、機体のゆれとパイロットのゆれが必ずしも一致しているわけではありませんから、卵を握るようにゆったりと握った操縦桿はヘリのゆれの動きとパイロットの動きはランダムになり、まったくパイロットの意図しない操縦舵となってヘリをあらぬ方向へと動かしてしまいます。
 
 パイロットは適切な力でがっしりと操縦かんを握って、ヘリのゆれに誤魔化されないような、適切な操縦舵を打つ必要があります。自分がどのように揺られようと、、、
 
 ゆれる吊り荷とヘリの位置を正確に把握しながら、、
 
 この動きを常に繰り返して初めて、あたかもヘリと吊り荷が止まっているようなホバリングとなります。
 
 同じようなことはいつ何処で起こるかわかりませんがいつでも対応できるように握っている必要があります。
 
 乱気流の屋上へリポート着陸でも、建物の直近でこのような乱気流は多く発生しますので、いつでも卵は落とさないように握りつぶさないように、備えるべきでしょう。
 
 話はまったく飛びますが、日本で起こった世界最大級の民間航空機の事故は復数回ありますが、この事故の悲惨な墜落現場で、操縦かんをしっかり握ったパイロットの手が残っていたという話を聞いたことがあります。
 
 もちろん手だけが残っていたそうですが、この操縦かんをしっかり握った手は今書き綴ったようなプロとしての現れなのでしょうか、操縦性が失われたただの取っ手の操縦かんに恐怖のあまりしがみついただけなのか、それにしてもパイロットの仕事は厳しいものです。
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Secre

No title

卵を握るように…ピアノの練習でも同様の事を言われましたねぇ。

No title

卵を握るように・・・は、ピアノを習っていた時に、私も言われました。力を適度に抜いている状態が、指が開きやすく、少し離れた鍵盤にも、届くためだと思います。
柔軟性を保つための基本姿勢は、物が変わっても一緒なんですね!!

No title

ピアノも同じなんですねー

No title

クレーンで荷を吊って旋回するときも、荷が最大に振れたところに、クレーンアームを旋回させて、荷の振れを止めますが、同じことですね。
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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