朝日航洋 332  屋久島事故 調査報告書、、

 

 
 
 
 
 
 私の後輩のパイロットが平成22年9月 鹿児島県屋久島で物資輸送中、墜落し、同乗の整備士諸共死亡した事故の調査報告書が発表されていました。
 
 原因は山頂部で荷卸中、ガスがかかってきて作業を中止してヘリポートへ向け離脱しようとしたときに、吊り荷が立ち木か山の岩に引っかかって、墜落したようです。
 
 この事故の発生した時間はちょうど、兵庫県豊岡のドクターヘリで待機中で、テレビニュースの速報で知り、安否情報を必死で見ていました。
 
 墜落の情報で山頂にガスがかかっていたようなニュースでしたので、予想したとおり、長吊りで荷物を運び込んでおろそうとホバリングして立ち木の間に荷物を垂直に降ろしていく途中にガスに囲まれて、離脱に失敗したのだろうかと思っていました。
 
 やはりほぼ想像したとおりの状況であったようです。
 
 長吊りの状態でのホバリング中、ガスに囲まれることはいちばん危険で、とくにまだ荷物を切り離しが済んでいない状態でガスに囲まれることは非常に危険な状態となります。
 
 いったん荷物を切り離すと、へりは荷物の重量が一挙にゼロとなるために非常に軽い状態となり、自由自在に動くことが出来ますので、カラで長い吊り荷用の長いロープが着いていたとしても、ほぼ垂直にあっという間に上昇できます。
 
 このような状態ならたとえ一時的にガスの中へ入ったとしても離脱はかなり容易ですが、重い荷物が着いた今回のような、吊りにが2トン700キロぐらいだとほとんど、よたよたと上がる程度しか上昇しませんので、ガスの中を垂直に一挙に上がることはほぼ不可能です。
 
 そのような状態ではやはり今回のパイロットが取ったような操作、左ホバリングターンしながら垂直に上がることがいちばんの操作方法です。
 
 物輸のパイロットは通常ホバリングでまっすぐに上昇するよりも、332などユーロ系のローターの回転方向のヘリなら、左ホバリングターンでも上昇、ベル系なら逆の方向でのテールロータが使用する馬力を最小限にして上昇率を上げる方向へのホバリング上昇を行います。
 
 ただ ガスの中ではホバリングターンをしながら垂直に上がることはそうたやすいことではありません。とくに完全にガスに囲まれてしまったら相当なあせりもあり、これを正確に出来たならば死ぬことはなかったのですが、
 
 もうひとつ影響するのが30メートルもの長くて重い吊り荷がある場合は、完全にゆれを止めることは難しく、常にいくらかは揺れていますので、そのゆれがヘリの位置を微妙に変えようとする影響を受けて、さらに位置を一定にして垂直上することが困難となります。
 
 そして微妙に動いたヘリの中心位置が、吊り荷とずれることによって、吊り荷のゆれが増幅されて、まわりの立ち木や障害物に当たることが予想されます。
 
 3トンもの吊り荷が激しく立ち木や障害物に当たると空中にある5トン程度のヘリは軽々と持っていかれてしまいますのでコントロールできない状態で、立ち木の中に引き込まれてしまったことでしょう。
 
 5メートルや10メートルの吊り荷では少々ガスに囲まれてもどうと言うことのないような技量であっても、30メートル40メートルの長い吊り荷では本当に慎重な天候判断が必要なのですが、変化の激しい高い標高、湿度の高い屋久島の気象では、やはりチャンスを見て飛ぶことをしないといつまでも仕事が終わらないというジレンマもあったことでしょう。
 
 調査報告では最低安全高度の遵守状態がよくないというような見解があるようですが、これにはかなりの誤解と言うか、無理があるような結論ではないかと思います。
 
 航空法で法を超えた低空飛行が認められているのは離着陸の場合と特別に許可をとったばあいなのですが、今回の飛行で運搬中の経路途中で違法な低空飛行があったような記述でそれがあたかも原因であるような結論付けをしてます。
 
 基地へリポートは離着陸ですから、低空飛行は違法ではありません。荷物の運搬先の山も荷おろし中には低空飛行の許可を取ってありますが、途中は低空飛行はまかりならんと仰せですが、荷物を下ろす場所への進入や離脱を低空飛行をしないでできるはずがありませんし、進入離脱する2キロや3キロは低空飛行になるのは当然のことで、墜落した場所が2キロも3キロも離れた位置であるとも思えません。
 
 ヘリポートから荷下ろし場まで7分程度と言うことですから、低空飛行の必要がないのは中間の1分程度で、今回の事故が低空飛行の法的な規制の違反が事故の原因とはとても思えませんし、そのようなことをことさら取り上げるとはやはり事故調査は素人だということでしょうか。
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Secre

No title

ヘリ業界で事故が起こるとその当事者は必ず誰かの知り合いというほど
狭い業界だと某氏が言っておられました
後輩の方だとは・・

Bellさんのブログはかなり長い間拝見させていただいてきましたが
その中でたびたび出てくる 「事故調査は素人」 についてですが
まったくの素人の私の感覚だと 何かしらの形で航空業界に携った
元プロがやっている仕事 と思っていたのですが
実際 違うんですね
まぁこれと似たようなことは建設業界にも多くあります

一昨日からなんか調子が悪く
昨日病院に行ったら A型インフルエンザとの事
横浜なんですが ヘリで豊岡まで運んでもらえませんか?(笑)

タミフル飲んで5日間寝てるしかありません

そういっても 自宅で仕事はしなくてはいけません

腰痛いです・・

No title

はじめまして。毎回楽しみに拝見させていただいております。ヘリコプター業界の話題から技術的なお話まで大変参考にさせていただいております。


その中で、実は今回の話題にもでているのですが、テクニックとして、パワーペダルではないペダルを使って上昇などにパワーを回すということがよくでてくるのですが、一旦上昇したあとは、どのように通常は回復(旋回を止める)するのでしょうか。もし、機体のパフォーマンスぎりぎりでこの操作をすると旋回が止まらないという可能性があると思います。自分が思ったのは上昇後、速度をつけることができることを前提に行うのかなと思いました。

もし、よろしければ教えてください。宜しくお願いいたします。

No title

そのとおりです 吊り荷が障害物をクリアーできる高度になったら、今度は高度を速度に変えて、つまりゆるい降下に入れながらラダーを踏み変え、利用可能なマックスパワーの範囲内で巡航に入ります。ただし風がある場合には正対風に近い方向で降下に入れるようにします。

No title

返信ありがとうございます。旋回しながら垂直に上がるのは、特に吊り荷を確認しながらだとすごく高い技術だと思います。大変参考になりました。
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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