ヘリコプターのフロート、、、

和歌山ドクターヘリ1 (168)

 上の写真はEC135の定期点検で緊急用のフロートを開いた珍しい写真です。

 ヘリコプターには不時着水に備えて緊急用のフロートを装備しているものと、通常水上に着水するために常時膨らんでいるのと2通りあります。

 大昔 ベル47に装備した例があり、南極の捕鯨船で使われていた例もあるそうです。

 大先輩が面白いエピソードを話してくれたことがあり、それによると水上に停泊していてエンジンをかけてローターが回りだすとトルクが作用しだして機体が回りだすそうです。

 地上だとスキッドやフロートが地面に接している抵抗で回されないのですが、水上では接地抵抗がないためテールロータが一定の回転数以上にならないと反トルクが効かないで、くるくる回されてしまうそうです。

 そのため船のようにロープで係留して、エンジンをかけ回転が上がるとロープを切り離して離陸するそうです。

 もう一つ面白いのは、固定翼の水上機は滑走して離陸しますが、フロートのヘリは水上で滑走するとたちまち前のめりになって転覆してしまうそうです。

 緊急用のフロートが緊急着水した場合に有効かどうかの点ですが、新潟でフロートのないベル206Bで緊急着水した時の例では、着水後すぐに機体が沈みだしてしまい、パイロットはいち早く脱出したものの、後席のカメラマンが出てこないので、潜水してパイロットが助け出したということがありました。

 写真のような機体の状態で着水した場合、相当うまく軟着水した場合でも、ちょっとした波でも機体は転覆してしまいそうです。

 ただし、転覆してもフロートの浮力で半分は水上に出た状態で浮いていられそうですので、何とか脱出する時間はありそうですので、うまくライフジャケットを開くことができれば助かりそうです。

 またフロートを装備しているヘリには普通、救命ボートが装備されていますのでそれを取り出して展張し、乗り移ることができればより助かる確率は上がりそうです。

 洋上保命訓練で長時間漂流する体験を数回しましたが、ボートへ乗ればかなり安心です。ライフジャケットでも漂流は大きな魚など海の生き物の出現が大変気になったことを覚えています。

 ヘリに毎日のように乗っていると緊急事態に対する緊張感が薄れて、緊急装備品や緊急手順、脱出手順などを忘れがちですので、曜日を決めて復讐するなり、機内の注意事項の表示を読むなりしているといざと言う時に役に立ちます。

 
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bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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