山岳救助中の落石死亡、原因は山梨県警ヘリの風









   最近航空関係のニュースが数多く入っています。

 ロンドンのJAL副操縦士の飲酒裁判は禁固刑の判決が出て、日本での処分と大きく開きがあって、衝撃的でした。

 このような処分は酔っ払いパイロットへの大きな警告となり、検査がどうの前の日は飲むななどと言うような生ぬるい日本での小田原評定を嘲笑うかのようです。

 実行が怪しい、生ぬるい対策を山ほど並べるより、ばれたら実刑を喰らうとなると、アル中パイロットも身を引き締めることでしょう。

 昨年5月の山梨県警ヘリの救助事案でヘリのダウンウオッシュで落石が起こって被救助者が死亡し、隊員が怪我をした事例の事故調査報告書が出て、それに基づいてパイロットは業務上過失致死で書類送検されるようです。

 富士山で静岡消防ヘリ被非救助者を落とした事例が事故調査もされることなく、警察の捜査もされなかったことを考えると厳しい報告内容ですが、事実を正しく解き明かして、過失その他はしかるべき当局に判断を委ねるという姿勢は正しいでしょう。

 さて山梨県警ヘリの救助事案でダウンウオッシュが原因とされる落石事故は技術的に防ぎえるかどうかが、過失の度合いを判定する大きな要因となります。

 ヘリコプターのホイストを使って救助する場合、どの高さ程度ので行うかがダウンウオッシュの強さを決定します。

 一般にホバリング時のダウンウオッシュの強さは、ヘリの重量が重いほど強く、軽いほど弱くなり、高度がローターの直径程度、ベル412の場合は13メートル程度が一番強く、高度が上がるにしたがって弱くなりますが、通常のホイスト高度20メートルから30メートルではそれほど弱くならないで、おおむね20メートル程度の風速と考えられます。

 外界の風向風速やヘリの姿勢の変化によって、大きく変化する事が多く、一番強い、ヘリの真下であっても無風から30メートル程度の急激な変化があり、いきなり強風が吹きつける事があります。

 ホバリング高度が50メートルを超えると、真下に強烈な風邪が当る事が比較的少なくなり、拡散したり、後方へ流れる事が多くなります。

 パイロットはホバリングで救助に入るときには、ダウンウオッシュの影響で立木が折れたり、急斜面で救助の隊員の動きに不具合を与えるほどなら、ホバリング高度を高くする配慮が必要でしょう。

 また救助隊員を降下させる位置を斜面の等高線方向などへ20メートル程度離して、降下させるなどダウンウオッシュの影響を考えて、長く直上でのホバリングを避けるような配慮も必要でしょう。

 ダウンウオッシュの風速と地上風の風速が加算される状況になると思わぬ強い風が隊員被救助者に当ることも考慮し、機械的に通常の訓練どおりの高度で入る事は避けるべきでしょう。

 またいきなり直上に水平移動ではいることは避け、45度程度の降下角度でダウンウオッシュの強さや移動を見極めながら入り、長時間のホバリングは成るべく避けるような配慮も必要となります。

 いずれにしても数多くやっている、ホイスト訓練の飛行パターンにとらわれることなく、高度、進入角度、進入速度、ホバリング位置、ホバリング時間など、その場の地形、風向風速、地上の状況、隊員の降下位置と、要救助者吊り上げの位置など、適切に調整する事が必要となり、、訓練と同じように機械的に行わない事が重要でしょう。
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JAC24時間前から飲酒禁止に





 ニュースによると、 飲酒による遅延が発生したJACの社長が当面の間、パイロットの飲酒を搭乗24時間前まで禁止すると発表しました。

 この発言は我が社は守れない泥縄の規定を作って、パイロットいじめを実施しますと、マスコミ受けを狙ったその場限りの取り繕いをしたようにとれます。

 社員であるパイロットが処罰がある、強制力で規制される取り決めは、従業員が守るべき、就業規則と有資格者のパイロットなどが業務に着く場合に守るべき運航規程ですが、社長がこうしますと言うだけでは規定変更は出来ません。

 就業規則でパイロットのみに飲酒制限をかけるのは不平等規定で、届出に際して指導があるか、組合から拒否される可能性があります。

 航空機の運航に当って守るべき規定は運航規程で、国土交通省の許認可事項ですので、変更の届けをして認可を受ける必要があり、明日から変えるという事は殿様でないので出来ないでしょう。

 また社長は当分の間と言っていますので、本気で変える気持ちはなさそうです。

 そして発言内容ですが、搭乗24時間前以内の飲酒を禁止するそうですから、パイロットは2日連続の休日が取れない場合は、晩酌は出来ないことになり、パイロットにのみ、人間的な食生活を停められることになり、この規則が有名無実のただの法螺話になりそうな気がしますが、どのように遵守状況の点検をするのでしょうか。

 現在の規定は12時間前になっていますので、これでもやや、守られにくい厳しい規定であると思います。

 要は搭乗時のアルコール検査をしっかりとし、万一、決められた濃度を超える不届き者がいたら、予備のパイロットが変わって飛ぶ体制をしっかりと作って維持すれば良いだけの話です。

 人繰りの関係で、一部でも予備のパイロットが配置できない場合は、当人に明日はスタンバイがいないから、酒は控えてくれと細かく指示連絡をするしかないでしょう。

 マスコミや航空局に良い顔をしたいから、権限を超えて、パイロットの人権蹂躙の規定を作って実行しますなどと気安く言うようでは、恥の上塗りをしているようなものです。

県防災ヘリ事故の調査報告受け県が隊員の健康管理体制を強化へ




 長野県は防災ヘリ事故の航空事故調査報告を受けて、隊員全員の健康診断結果の共有を図ることとしたそうです。

 事故調査の結果、機長の覚醒水準が低下した状態となっていたことにより危険な状況を認識できなかったことによる可能性が考えられるが、実際にそのような状態に陥っていたかどうかは明らかにすることができなかった。

 事故調査の結果があいまいな結論ですので、そのあいまいな結論で対策を取るとなると殆どあさっての方向へ舵を切っていませんかと、ちゃちゃを入れられそうです。

 普通、どんな会社でも労働安全衛生法か何かで全社員の健康診断をい年に一回するようになっていたと思いますが、隊員はそのような事はしていなかったのでしょうか。

 またパイロットは一年に一回は航空身体検査を受検して合格する必要があるので、当然、適切に管理していると思っていましたが、県は何もしていなかったのでしょうか。

 事故調査委員会はパイロットの日常的な受診記録から何かを掴んでいたのでしょうか、このような事故に繋がる何らかの情報を得ていた可能性も否定できないでしょう。

 過去に整備士が睡眠時無呼吸性症候群で十分な睡眠を取れない事が続き、206Bでパイロットの横に乗って飛んでいた時に、不意に深い居眠りに入って、ピッチレバーを押し下げてあわやと言う事があったと聞いています。

 またローターが単調なリズムで視界を切るために、パイロットなどがマイクロスリープと言う一瞬気を失うような現象もあるそうで、何回かは経験がありますが、通常低空飛行や離着陸時には、ぼやっと前ばかり見ていないので、居眠りはありえないと思われます。


 それに、10分15分で離着陸を行うような状態で、居眠りに入る事はあまりなく、自分の経験では延々と送電線に沿って飛ぶ、送電線パトロールが一番の眠気との戦いで、1日5時間程度は飛びますので、昼食後のフライトが一番眠くなります。

 低空飛行や離着陸時はボヤット前だけを見ている状態はありえず、目が忙しく動きますので、居眠りに入る可能性はかなり低くなります。

 健康診断の結果を共有すると言う程度の対策が、ことさらニュースになるようでは、殆ど効果的な事故防止対策はなく、事故調査としてはあまり良い点が着けられないでしょうから、やはり自家用機のパイロットにおんぶに抱っこの安全依存が続きそうです。

 酔っ払いパイロットの問題は立ち入り検査が入り、基準を厳しくするという方向で再発防止を図るようですが、、地上スタッフが立ち会うそうですが自社の仲間内の検査医制度では根絶は難しいでしょう。

 根絶するには、お役所得意の3セク、酒気帯び操縦防止協会を作って、警察と航空局から天下りをして、厳正に検査をすれば良く、イギリスに倣って即逮捕拘留裁判とすれば、皆恐れをなして、酔っ払いで飛ぼうとしなくなるでしょう。

 中途半端な事故防止策は問題の先送りで、効果があるなどと安心していたら、大ケガをしかねません。
 


飲酒不祥事で航空各社立ち入りへ





 パイロットの飲酒不祥事を巡り、国土交通省は航空各社へ立ち入り検査を行うことを明らかにしました。

 航空局の航空会社への立ち入り検査は、事故や重なる不安全のときに行う臨時検査と数年おきに定期的に行う検査と二通りあります。

 今回は臨時検査ですが、立ち入る日にちと場所を通知していますので、まだある程度、お怒りは中程度で、ある意味友好的と言え、対世間的、対マスコミ的な態度と見え、あまり危機感は持っていないようです。

 立ち入り検査を受検する各社は、運航管理部門は準備で徹夜続きでしょう。

 何をするかと言えば、書類の準備が殆どで、運航規程に基づいて行ったことの記録が抜けていないかと言うことが中心で、抜けていれば改竄、取り繕いをする事が主な準備でしょう。

 私自身は地方の所長をやっていた時に、定期検査の立ち入りを受け、これも十分に準備できるように日程を通知してくれます。

 これに引き換え事故のときの、業務上過失致死などの疑いで、警察の踏み込みを受ける場合は突然に来て、書類関係は手当たり次第に押収されるため、改竄、取り繕いは出来ないのでより厳しいと言えます。

 今回の立ち入りでは、酔っ払い容疑ですから、搭乗前のアルコール検査の記録と、検出した場合の対応の記録などが中心に調べられることでしょうから、予定搭乗割の記録と実際に搭乗したパイロットが違う場合を割り出して、それがアルコールによる場合かどうかなど詳しく書類を当ることでしょう。

 このような検査は事業として飛ぶ航空会社のみを対象としていて、防災ヘリや消防警察などは自家用運航となっているので、このような航空法上の管理面はすべてライセンスを持って飛ぶパイロット自身がすべてを自己管理することになっています。

 一応、運航を管理するような体制を取っているように、組織つくりをしていますが、航空法上はまったく責任がなく、立ち入り検査を受けることもありません。

 事故の場合は事故調査委員会と警察が調査しますが、すべて任意聴取で、パイロット以外は法的責任を問われることも、管理責任を問われる事はありません。

 運航会社は航空法に基づく、運航規程や運航業務実施規程に従って、正しく運用しているかを検査され、会社とライセンスによって仕事をしている個人は行政処分の対象になる可能性があります。

 今回の立ち入りで、結果的にはかなり厳しい業務改善勧告が出て、後に改善状況を報告すると言うことで一件落着となるでしょう。
 

パイロット やはり飛べないときもある、、、




 パイロットも普通の人間ですから、風邪も引けば下痢もしますので体調から飛べないときもあれば、精神的に正常でないこともありえますから、自己申告で飛べないと言うことを的確に意思表示する必要があります。

 JAL ANAの酔っ払いパイロットたちは自分の酔っ払った状態でも十分安全確実に操縦出来ると判断していたから、検査をすり抜けて飛ぼうとしたのですから、かなりの実績があってそう判断していた可能性が高く、周りの社員関係者を含めてかなり悪質であろうと思います。

 また精神的なもの体調的なもので操縦できないと自分自身で判断する場合に、そこに交代可能な予備の要員がいるかどうかと言うことも大変大きな判断材料となります。

 そこで会社としては、担当するパイロットの体調不良や遅刻などで欠員が出た場合にすぐに欠航するなどの処置を取れる体制を組んでいないと、パイロットが無理をして飛ぶという不安全が実行されることになります。

 パイロットが飛べないと言う理由は酔っ払いであったり遅刻であったり、下痢発熱であったり何が原因であっても、会社が取る処置に変わりはありませんので、酔っ払いのみに焦点を当てるのはあまり感心しません。

 パイロットを1000人以上抱える大手の定期会社でも、突然の交代は難しい面がありますが、弱小ヘリ会社ではほとんど代替が効かないほどしかパイロットがいませんので、普通は無理をして飛ぶという事が常習的に行われている可能性が高いでしょう。

 防災ヘリ、ドクターヘリ、県警、消防など交代要員がほぼいないような運航体制は危険を孕んでいると言えるでしょうし、何回も起きた防災ヘリなどはこのような面から調査する必要もあるでしょう。

 体調で飛べないと言う事は比較的明瞭に現れ、発熱、下痢、アルコール、捻挫や骨折などの怪我などは判断が比較的簡単というか正直な申告さえあれば対処が比較的可能です。

 難しいのは、精神的な不適合と言うか、ダメージなどで飛行に絶えられないと言う状況もあり、自分自身でも2,3回はありました。

 一回は3歳に満たない娘が手術を受ける日に、農薬散布の予定を外してもらえなかった事がありました。

 もう一回はF86の課程に入った当初にありました。実家のおじさんから部隊に父親が倒れて緊急入院したので、至急返してやって欲しいと電話があったそうです。

 急遽 T33で航法訓練という名目で名古屋まで送るからすぐに用意しろと言うことで、離陸しました。

 前席の教官から、航法訓練なのでユーハブと言われたのですが、ちょっと無理なのですみませんと断った事がありました。

 体調や精神を常に良好な状態に維持して、安全に飛び続けるということも、良いパイロット人生を全うするには大変重要なのですが、やはり人間ですから、うまく行かない時もありえるでしょう。

 精神的に操縦できない以外にはやはり、極端な寝不足、深い悩み事、欝、など長い人生には様々な山あり谷ありですので、パイロット人生は平坦ではありません。

 

ヘリパイロット、経験技量の成長、、、、




 1968年、18歳で空自のパイロットの候補生、航空学生としてパイロットの人生をスタートし63歳、ドクターヘリのパイロットとして45年間のパイロット人生を生きて終えることができました。

 先日、元の会社のOB会を催していただいて、参加させてもらって、楽しいお酒をいただいてきました。

 当時20代の若い整備士を次から次へととっかえひっかえ乗せて、物資輸送に飛び回った懐かしい話で出てくるのは、墜落しそうになった話ばかりでした。

 自分自身のパイロット人生を振り返るとき、やはり一番に思い返すことは、初ソロのひよこの当時からの経験と技量の成長と、40代でピークを打って衰え始めてから、引退するまでの変化でした。

 元々、体操選手で体に自信はあったのですが、パイロット訓練生の時は出来があまりよくなく、T1のソロチェックアウトでエルミネート候補の3人の中に入り、その時、首になっていたらジャンボの機長で終えた同僚と同じ道を歩んでいたと思います。

 T33の最終段階で業務計画のエルミネートの候補の2人に入り、班長に呼ばれてどちらか民間に出ないかと打診され、2人とも断ったら、すぐに雫石事故で業務計画に欠員が出て2人ともウイングマークをもらうこととなりました。

 パイロットの資格を得る程度までのころは低空飛行で何とか乗り切れた程度で、その後ヘリに乗るようになってからは、順調に推移していると自覚していました。

 30歳の時にスマトラでジャンプ台から共振で転落事故を起こし、自信過剰の鼻をへし折られてどん底へ落ちました。

 それから3,4年してから204Bに乗るようになり、物資輸送を始めた当時から45歳くらいのピークまでは、自分の技量が一番急激に伸びた時期で、30歳の事故経験がかえって大変良い教訓となったようです。

 42歳で10000時間を超えたころが自分のパイロット人生の花の時期で、その後は徐々に技量は低下に入り、47歳ころ夕方遅く物輸からの帰りに薄暗いコクピットの計器盤を見て、焦点が合わず老眼を自覚したときはすでに下り坂、顕著だったようです。

 あとは63歳で引退を決めた時まで徐々に能力は落ちて行っていて、最終的に降りると決めたのは、事故には至りませんでしたが、やはりある失敗が引き金となりました。

 60歳を過ぎても、比較的簡単な運航内容の仕事を選べば、安全に飛び続けることができそうですが、自身の飛行経歴や会社の組織人としてはそうも言えないので、どこかでけりをつけることが重要でしょう。

 ヘリパイロットはすべて機長として飛ぶ運命であったので、自分の技量がどのように推移したかかなりわかりやすかったと言えるでしょう。

 元もと、訓練生の時はへたくそで、2回は確実に首になりかけましたが、パイロットの資格を与えていただいたおかげで、500時間から1000時間の時と5000時間から8000時間の時の2回、自分の技量が急激に伸びることを身をもって経験することが出来たようです。

 そして45歳から緩やかに低下し始め、60歳を超えると低下は加速されるような気がします。

 今になってこんな感想を書くことが出来ますが、当時は無我夢中で自分では自分を評価する余裕などなく、がむしゃらという状態だっとと思います。

ダブルパイロット制とは??、、、、、




 防災ヘリの墜落事故が続いたため、より安全な運航のためダブルパイロット制が必要であると言う意見が県など運航主体から出ています。

 すでに県警ヘリや、自衛隊ヘリ、消防ヘリなどでは多く実施されています。

 定期便の航空機など大型機では2名操縦が法的に要求されていて1名パイロットで飛ばす事が出来ません。

 ヘリコプターの場合多くの機種では一人操縦となっていて、一部の大型機などで、2名操縦となっている機種がありますが、これは構造的に一人のパイロットから届かない位置にスイッチやレバーがあるためであると言われています。

 航空の規則ではより安全な飛行のために複数のパイロットが搭乗する事は想定されておらず、機長以外にパイロットが乗って機長の補佐や援助をしても、公式なパイロットの業務とは認められず、公式な飛行経験時間としてはカウウントされないことになっています。

 と言うことで防災ヘリ、ドクターへり、警察消防へりなどでは、2名のパイロットを乗せる意味がなく、人件費節約のためにも整備士などが操縦可能なパイロット席に座って、機長を補助する事が一般的となっています。

 ある割合の警察消防へり、一部防災ヘリにはこのような事情に関わらず、経験の浅いパイロットを副操縦士もどきで乗せて、経験を積ませることを行っているようです。

 自衛隊の場合は一人操縦の型式のヘリにも、副操縦士として若手のパイロットを乗せ、経験を積む機会として、あるいは任務の確実な遂行のため、常に載せるようになっています。

 2名の有資格者が飛んで、確か、機長とは呼ばす、正操縦士、副操縦士と記録していたようです。

 群馬県知事がダブルパイロット制と言っているのは、2名とも有資格者が乗るということを意味していて、この有資格とはヘリの型式限定資格を持っていると言うことで、自家用運航として飛ぶ防災へりでは、制度上たった100時間未満の飛行経験でも、自家用操縦士免許と、限定資格を持っていれば法制度上は機長として飛行可能です。

 一方 ドクターヘリは国土交通省の運送事業許可で飛ぶ運航なので、パイロットが事業用操縦士と型式認定、その他には会社で発令される運送事業用機長資格が必要となり、ほぼ500時間程度以上の経験が必要となっています。

 防災ヘリの機長としての資格は法的には50時間で取れる自家用操縦士免許と、30時間程度で取れる限定型式認定があればよく、県知事が求める2名パイロット制の若手はこれをクリアーしていれば良いと思っているのでしょうか。

 防災ヘリ機長は普通少なくとも3000時間程度の飛行経験と、相当数の山岳地飛行経験が必要なのですが、はっきりとした規定はなく、各地の県の運航要領などでも決めている県はないと思います。

 群馬県知事は国に対して財政的な支援を要請しているようですが、県が求めるダブルパイロット制とはどのようなものを目指しているのか、はっきり言っていないので良くわかりませんが、実は県や知事も良くわかっていないのではないでしょうか。

 防災ヘリが始まったころは、5000時間以下のパイロットはほぼ防災へ利に乗る事はなかったのですが、大手では5000時間乗っても物資輸送に使えない2線級が防災へりに乗る配置をしたようです。

 年功序列で大型のヘリの限定資格を取らして、実際の物資輸送業務に当らせるべく、実務訓練をしても、機長としては危うい程度のレベルのベテランが結構ごろごろいて、防災ヘリの導入が彼らの新しい職場として、開拓されたような形跡も濃厚であったように思います。

 結論的に言えば、群馬県知事が発言したダブルパイロット制は、1名操縦の型式であっても、2名乗せ、1名はベテランの機長、二人目は、1000時間程度以上で型式限定資格を持ち、将来的に機長になるような人材を、副操縦士として育成していくような体制を求めているのでしょう。

 2名の機長有資格のベテランが乗る事は運航の指揮、責任体制などで不具合があり、またパイロット不足の折、国全体でのヘリパイロット需給体制を混乱させる元でしょう。

 1名操縦の型式のヘリにも自衛隊が取っている、副操縦士制を国土交通省も認めて、パイロット育成をスムースに行えるような体制を民間ヘリを含めて推奨するべきでしょう。

 私たち団塊の世代の民間ヘリパイロットはほとんど一人操縦ばかりで経過しましたので、訓練などで他のパイロットと飛ぶときはかなりの違和感を感じたものです。

 一人の時は一人の不具合があり、二人になればそれなりにストレスがあったと、色々ありますが出来るだけ早く確実にパイロットを育成するため、出来る事はすべてやるべきでしょう。

群馬県知事 ダブルパイロット制導入に意欲




  群馬県知事が防災ヘリ運航再開に向けて、ダブルパイロット制導入に意欲を表明し、国に対して更なる財政支援を求める考えを表明したようです。

 防災ヘリの運航を県単位で維持していく事は困難なので、当面、県警ヘリやドクターヘリ、自衛隊ヘリにのその任務をお願いしたいと言えない所が土壷に嵌った悲しさでしょうか。

 公的なへりの運航の課題は、ヘリや格納庫などの施設は金を出せばすぐにそろうけれども、十分な経験技量を持ったパイロットは金を出しても買えないと言う現実がやっと理解できたようです。

 経験技量が十分でないパイロットを2人乗せても3人乗せても結果は同じなのですが、現状よりは少しはましかもしれないから、見切り発車するから、その分の人件費を出してくれと言うことのようです。

 今現在日本中で飛んでいる公的ヘリの経験技量を持ったパイロットが年代と共に退職年齢となり、その補充は殆ど見込みがありません。

 群馬県のみならず、全国的にパイロットがいない県が増えそうですが、能力不足のパイロットを乗せることで乗り切る県も多数出ることでしょう。

 すでに世代交代した県では能力経験不足のパイロットが飛ばしている可能性が大変高いのですが、それをチェックして、正す方法を各県は持っていないと言うことも悲劇的です。

 根本的な方法はやはり県単位の独立運航をやめ、大きな組織でパイロットを養成しながら、地域の難易度に合わせた配置転換で技量経験をアップさせることしか、全国的なパイロット問題を解決できないでしょう。

 ダブルパイロット制はパイロット不足を大きく助長して、混乱をさらに深める恐れが大と言えるでしょう。

 

2015年7月 調布小型機墜落事故書類送検、、、





  2015年7月ですからすでに3年以上前、調布で小型機が墜落し、パイロット、地上の人を含めて3人が死亡し、5人が重軽症を負った墜落事故に関して、警察は業務上過失致死容疑で死亡したパイロットと航空機の管理会社を送検したそうです。

 パイロットはすでに死亡していますので、実質的に送検されたのは航空機の管理をしていた会社の社長だけとなります。

 事故の原因は機体の離陸重量制限を50キロ超えていたことと、離陸操作が不適切で速度が十分着いていない状態で浮き上がる操作をしたために、十分加速できなかったようです。

 さらにスロットルが十分出ていなかった可能性があって、離陸出力が出ていなかった可能性もあるようです。

 つまり1トン少しの機体の制限重量では、50キロ程度のオーバーなら失速して墜落するほどではないのですが、パイロットが経験不足で加速の状態や出力の不足を認識しないまま離陸を継続し、失速したようです。

 事故調査でも、書類送検でも述べていないのですが、墜落した航空機は自家用機で有償で乗客を運送できないのですが、どうも航空機の管理を請け負っていた、管理会社が、個人のパイロットと共同で白タクをやっていた節があり、当時たしかニュースになっていたように思います。

 警察は書類送検に際して、また事故調査でも、この白タク状態を特に取上げていませんが、航空法上では完全な違法行為で、運航の管理状態が不適切であった原因の大部分はこの事が始まりであると言えるでしょう。

 先日のヘリの横転事故も、訓練規定による管理や、空港の草地での離着陸の安全管理などが事故に大飯に影響がある可能性があり、この点の調査検討が必要でしょう。

 また、酔っ払いパイロットの問題については、パイロット個人の自覚、職業倫理等を取上げることなどは問題の本質からまったく離れた、管理官特責任を言い逃れる、規制官庁、運行会社のグルになった所業でしょう。

 中年のおっさんが二日酔いで仕事に着くことなど日常茶飯事の中、パイロットだけ聖人君子になれなどと期待するのは愚の骨頂で、管理面で酔っ払いを排除して厳罰にし、代わりのパイロットを適切に配置し、定時制を保って公共交通としての義務を果たすべきでしょう。

 事故調査も、司法捜査も直接しくじった現場のパイロットの責任を追及することにかまけて、管理面や規定の運用面などで間違いを誘発した原因を突き止めて、正しい事故原因を割り出すことを忘れてはいけないでしょう。

 安易に白タクで飛ばしたり、不十分な管理で安易に訓練を行ったり、酔っ払いが操縦できるようなザル体制を長期間に渡って改善しなかったことを取上げないなら、現場が失敗するのが当たり前で、いつまでも事故は続くことでしょう。

ヘリ事故 事故調査と犯罪捜査、、、、







 神戸空港で2017年3月に起きた、AS350の横転事故に関する、航空事故調査報告書と、県警の捜査がほぼ同時に発表されました。

 どちらもヘリのスキッドの右後方が土にめり込んだ状態での操縦操作の不適切がダイナミックロールオーバーを招いて横転したとの結論で、事故調査はパイロットの過失を、県警は過失による航空危険罪容疑で送検と、同じ結論となっています。

 航空事故には常に危険性があるということで、必ず被疑者を指定して罪を問うという姿勢にはある程度の疑問を感じますが、同じひとつの航空事故をまったく独立した別の組織が公式に調査をすると言う点は評価できると思います。

 日本は起訴事案の有罪率が99%近いという状態であっても、警察権力による犯罪捜査によって起訴されても、日本は3審制ですから、捜査結果が妥当がどうかの審議は3回も行えます。

 しかし、ヘリコプターに素人同然の航空事故調査委員会(安全運輸委員会)が下した事故調査結果がたとえ間違っていても、修正される事はありません。

 まったく目的が違っていても、ここに私は航空事故調査のある意味2審制といえる制度を評価するものです。

 ただしこれは犯罪捜査機関の警察が、航空には素人であると言う姿勢で、初めから航空事故調査組織の活動内容をカーボンコピーで調書とするような、過去にあり勝ちであった、姿勢はいただけません。

 今回の事故の原因はピッチレバーをどちらも離していたので知らないうちに上がっていたのが直接原因で、副因は管制とのやり取りで早く移動するように急かされた事や、やわらかい地面にスキッドが刺さった可能性があるようです。

 このような事故に至る様々な現象を正しく掘り出せるかどうか、あるいは掘り出したて、事故への影響を検討することなどは、2つのまったく独立している別の組織が別々に調査する事がより多くの情報や現象を結果的に正しく評価出来る事となります。

 またこのような、事情聴取や現場検証などの捜査結果や調査結果を、事故調、警察、双方が口裏あわせをしないような姿勢がより独立した調査が出来る条件となるでしょう。

 つまり同じような調査をするにしても、あくまでも独立した組織として、協力も良いかもしれませんが、あくまでも結論の口裏あわせをしない事がより切磋琢磨となるような気がします。

 過去のあまりに多い、農薬散布事故にあっては事故調の調査報告を丸写しにしたような送検書類で罰金5万円の量産をしていた例があり、パイロットは殆ど何の申し開きも出来ないで判決に服従させられていた過去があります。

 ヘリコプター事故の再発防止にはぜひとも、警察の航空事故調査能力の向上を望むものです。

 

 

 
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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