真夏のドクターヘリ、、、、




 梅雨が明けてすでに10日ほど過ぎて、連日35度以上の真夏の気候が続いています。

 梅雨前線が北上して停滞し、東北方面ではまだ梅雨の気候のようでsyがそれ以外の地方では9月初めまで真夏の天候が続き、ドクターヘリのクルーは暑さと長時間勤務に耐える毎日となります。

 連日高温の晴天なのであまり悪天候の心配はしなくてよいのですが、炎天下での暑さとの戦いはこたえます。

 通常各地の駐機中のドクターヘリには、日光遮蔽する車用のもので、風防を覆い、電源を引いてスポットクーラーのダクトを窓から突っ込んで機内を冷やしています。

 機内の医療器材や薬品類の保護が主な目的ですが、出動要請でパイロットはヘリに乗り込む前に、外部電源を繋ぎ、スポットクーラーをはずしてから、座席に着きます。

 離陸前の3分で冷やしていた空気は外気温とほぼ同じ温度になり、エンジンスタート後に機上のエアコンを入れても、十分に冷えるまで5分程度はかかり、10キロ程度の近いランデブーポイントなら、冷える前に着いてしまいます。

 ドクターヘリにはエアコンの装備が義務化されていて、普通に飛行するには大変快適で、酷寒酷暑のなか物資輸送などばかりで飛んでいた身には大変ありがたい装備でした。

 ただし初期のヘリ装備のエアコンは振動のためか、あまり信頼性が無く、6月ころから使い出してちょうど一番の酷暑の8月前後に一度は故障して暑い目をしたことが良くありました。

 真夏に一日5回6回と出動すると大変な汗をかいて、夕食時の水分補給は進んだものでした。
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ドクターヘリ機長 1000時間経験OK、、、




 国土交通省は6月19日からドクターヘリパイロットの資格要件を機長時間1000時間以上と改正した規則を実施に移したようです。

 新基準は飛行経験の要件を「機長として1000 時間以上」に緩和するとともに、ドクターヘリの特性に着目した訓練プログラム(狭隘地や傾斜地での離着陸、離着陸時の土煙等による視界不良への対応等)の設定と実施、事業者における十分な操縦士の能力確認を求めるものである。

 2000時間以上と決めていた機長の資格要件はこれで規制緩和が決まり、実施に移されているのですが、パイロットの必要飛行経験が半減したことによって、心配されるのはやはり事故と言うことになります。

 この規制緩和を実行するに当たり、国土交通省は業界関係者などに意見聴取を行なって、安全性に対する憂慮が無いか、確認したことでしょう。

 そして上記にある特別な訓練をし、審査を十分慎重に行い事業者がパイロットの能力を十分確認することを要求していますので、業界に丸投げしたと言うことでしょう。

 さて国交省が意見聴取などを行なった時に、強い反対意見などが出なかったのではないかと思います。

 運航業界の経営責任者は1000時間に規制緩和してもらわないと、現状のドクターヘリのうち相当数が近い将来飛ばせなくなると言う危機感を持っていますので、当然業界は規制緩和を要求したことでしょう。

 パイロットの訓練や審査を担当するのは会社内のパイロットで構成する組織ですから、会社内のパイロットの責任者がどう思っているかが大変重要なのですが、たぶん社員である以上、業界や会社の考え方に反して、危険性が高いから反対だと言う意見表明は出来なかったのでしょうか。

 私はドクターヘリを経験したパイロットで、すでに引退し、業界や会社関係との利害関係が絶たれた位置にいるパイロットの10人中8人程度は反対するのではないかと想像しています。

 2000時間に足りないパイロットは何らかの方法で2000時間まで乗せれば良いのですが、民間会社はコストと時間がかかりすぎるという理由で規制緩和を求めたのは確実でしょう。

 つまりこの規制緩和の根本的な理由はコストと安全と言う相反する条件に対し、コスト増を嫌って安全を犠牲にしたと言う、最も絵に描いたような危険性拡大の規制緩和と言うことになるでしょう。

 防災へりの連続死亡事故は、運航形態が自家用運航なので機長の資格要件にまったく規制が無く、経験技量が十分でないパイロットに対し、審査や訓練や技量管理を十分にすることなく飛ばし続けたことが原因として考えられます。

 ドクターヘリは幸い、運送事業の運航形態を取っているため、運航会社に対する認可事項の運航規程によってパイロットの資格要件を決めていて、それが2000時間であったため、いかに訓練や審査などをいい加減にお手盛りでやっていたとしても、2000時間の壁が安全性をかなりの部分で保障してきたと言う実績があります。

 これが1000時間と言うことになり、2000時間当時と比較すると、ほとんど壁がなくなったのと同じような程度の経験技量レベルとなってしまった上、社内の訓練や審査にお手盛り、いい加減が入ると、規制当局はほとんど手出しが出来ない野放しとなって、安全性が一挙に連続事故を起こした防災レベルになってしまう恐れがあります。

 運航会社、社内に飼われているパイロット連中の上層部、運航関係部署の管理職連中はほとんど、会社の経営者や他部門の言いなりになっているのではないかと心配しますが、上層部は遅くとも4.5年で定年、長くても10年後には誰もいなくなりますので、後は知らないと言うことなのでしょうか。

コードブルーの今後の展開は、、、、



 2回目の放送を終えたドラマ、コードブルードクターヘリは大変好調な滑り出しで、今後の展開が期待されるところです。

 凋落著しいフジテレビの復活のきっかけになるか、あるいは小さな花火でしぼんでしまうのか、大げさに言えば社運がかかってと言ってもいいほどなのでしょうか。

 テレビのドラマに日本国中が釘付けになったのは、NHKの「雲のじゅうたん」などの朝ドラと、歴史ものの大河ドラマで、この二つとも最近はどうも落ち目と言うほか無いようです。

 ドクターヘリのドラマの展開でどのような要素を取り込むかで、視聴者の興味が大きく影響されます。

 つまりドクターヘリの絡んだ様々な切り口、救急医療、災害医療、医療もの、医者もの、そして医者や看護師などメインの出演者の恋愛もの、と色々あり、ドラマがどの部分を取り込んでどのように展開していくかによって、どのような年代層、女性男性別、若者か中年か、高齢者かと、どの層を対象にストーリーを展開するかによって、今後の視聴者の食いつきがどうなるか分かれるでしょう。

 恋愛関係や人間模様を描くのであれば、脚本家にとってはお手の物で医療関係やヘリコプター関係など他の部門では、専門家の手を煩わせる必要が強くなります。

 まあ普通なら、無理無理、半年1年程度は引っ張れるでしょうけれども、そこに医療関係やヘリ運航関係をちりばめるとなれば、監修者の力が大きく影響してくるでしょう。

 つまりはドクターヘリの活動に絡む、救急災害医療関係の展開がどの程度、恋愛や人間模様のストーリーにかぶせて描けるかがこのドラマの寿命を決めてしまいそうです。

 はっきりってドラマになじむ救急出動のエピソードがどの程度取り込めるかがドラマの寿命を決めてしまいそうです。

 ここでせっかく絵的には重要な役割を果たしているドクターヘリのシーンがあるのに、ヘリコプターの運航の状態の展開を取り込まないと、飛行服をはだけて、お守りを握り締めるだけのパイロットではあまりにももったいないような気がします。

 実物のドクターヘリの運航に存在するドラマチックな展開の主役は、救急医療はもちろんですが、次に来るものは恋愛物語や医療従事者の序列や役割関係ではなく、ドクターヘリを飛ばすパイロットや整備士、そしてCSたちの働きの中にも多いにドラマチックなものがあります。

 ドクターヘリの運航に存在する運航クルーたちのこの面白いドラマはほとんどストーリーに取り込まれることは無く、ヘリの映像と共にただの添え物として描かれていますので幾分残念です。

 これはなぜかと言うと、ドラマつくりの中には運行関係者がいないと言うことで、脚本家は飛行服をはだけたパイロットしか描けないと言うことになり、ドラマとしては1作目、2作目に続いて短期間で終わりそうな気がします。

神戸空港付近高速船がブイに衝突、、、






 一昨日の夜、神戸空港と関西空港を結ぶ高速船が神戸空港に近い場所で誘導ブイに衝突し、13人の乗客が負傷する事故が起こりました。

 船長は4月から船長は40歳で2006年からは機関長として乗っていましたが、船長としては今年の4月からなので新米と言えるでしょう。

 事故の経緯は暗い状態の海を北上して神戸空港の船着場へ向かっている時に、神戸空港の周りの数少ない誘導灯火などが、背景の神戸の市街地のぎらぎらする明かりにまぎれて見えにくいのに影響されて、自船の位置を500メートルも西に間違って進んでしまったようです。

 天候状態が良いのでレーダーなどの位置確認装置を使用しないで目視だけで走行し、夜間の灯火を誤認したか、よく確認しなかったようです。

 ブイへの衝突はすこし引っ掛けた程度のようですので、けが人が出る程度で済んだようですが、まともに当たっていたらさらに大きな被害が出たことでしょう。

 事故の原因調査は航空関係も含まれる安全運輸委員会が実施するようで、ヘリコプターの事故防止にも、参考になるような内容が含まれそうです。

 ヘリコプターの場合も同じような夜間の事故が起きる可能性があり、船長の資格や経験年数、実際の運航要領の訓練や審査、など共通の要因が事故にどのような影響を与えたかなどは、ヘリの運航にも大変参考になります。

 付近にまぶしいほどの明るい地域のそばで、暗黒のような暗い地域を飛行する場合などは目の暗順応がうまく機能せず、十分に見えないと言うことが起こり、見えない障害物に突然ぶつかると言うような事故の可能性があります。

 ヘリコプターの場合、そのようは地域であっても、普通に通過していくならあまり問題はなさそうですが、もしドクターヘリが夜間飛行するようになれば、通過するだけでは終わらず、離着陸を繰り返しますので、今回の事故のようなことが起きる可能性は大変高くなります。

ドクターヘリパイロットの昼ご飯、、


                   たまには豪華弁当の差し入れも、、、

 ドクターヘリは救急患者の救命のために、1分1秒でも早く患者さんの元へドクターナースを送り届けることが最優先します。

 消防本部などからの出動要請はいつ入るかわかりませんから、パイロットはちょっと待って!と言うわけには行きません。

 ドクターヘリが如何に早く離陸できるかは、パイロットがヘリの元へ急行し、エンジンスタートと離陸前点検を間違いなく、無駄なく行なうことで最短時間で離陸できることになります。

 出動要請から離陸のためにヘリのスキッドが地面を離れるまでの時間がほぼ3分30秒から4分くらいが全国的な平均となっているようです。

 出動要請のホットラインの電話が鳴ってから離陸までの時間のうち、パイロットがヘリに座ってから離陸まではほぼ3分はかかりますので、走ってヘリへ行く時間が30秒程度となります。

 整備士と医師、看護師は離陸まで3分程度の余裕時間がありますから、トイレに行っていても、他の業務していて、ヘリに着くことが2分程度遅れてもあまり問題は無いでしょう。

 パイロットがヘリに着く時間が何らかの事情で遅れると言うことは、取りも直さず離陸時間が遅くなると言うことなので、極力遅くならないような配慮が必要で、トイレや昼ごはんなどで遅くなることも出来るだけ避けなければなりません。

 トイレは仕方がありませんが、病院内でレストランが近い場所にあると言っても行くことは許されませんし、同じく病院内のコンビニにも買いだしにもほぼいけないと言うことになります。

 昼食は従業員用の配達弁当があるところではそれを注文して、待機室へ配達していただくような所もありました。

 ただ、お弁当はマンネリで飽きることが多いので、出前を取ることが出来る場合はそれを頼んだり、朝出勤途中でコンビニで好きな弁当を買ってきて、電子レンジで暖めて食べるようなこともやっています。

 ちょうど食べている時に出動要請がかかることも多く、パイロットは弁当などにただ蓋をするだけで飛び出していきますし、出前の麺類などはその瞬間、後ろ髪を引かれながら走っていくのですが帰ったら見事に伸びています。

 忙しい出動の合間の昼過ぎに五目そばを注文してもらい、そろそろ来るかなと思っていた時に出動が入り、そのまま連続で3件も飛び、他の病院へ患者さんを送り届けて日没間際にからで基地病院へ向けて飛んでいた時でした。

 後ろの席の準教授のフライトドクターがマイクを通して「 I さん 五目そばはどうなってるでしょうかねーー」

 あーーたべれませーーーん(泣)、、、、、

ピカピカのドクターヘリ、、、、




 せっかく国民の多くが楽しんでみているドクターヘリのドラマにケチを着けてばかりしていても楽しくないので、今回は少し視点を変えてみます。

 ドラマに登場しているMD900のドクターヘリはこれでもかと言うほどきれいにワックスがけされています。

 と言うことでハイビジョンカメラの性能にあいまって大変きれいに撮れていて好感がもてます。

 実際のヘリの場合、特に使う目的によっては大変汚れるので、いつもあのようにきれいにすることは難しく、また古い機種では塗装もお粗末なのであのようにピカピカの状態にあることは大変難しいと言えるでしょう。

 では実物のドクターヘリはどのように汚れるかを少し紹介してみます。

 まずドクターヘリには強力なジェットエンジンが2基装備されていて、大量の排気ガスがテールブームやテールローター部分に吹き付けていますので、1時間も飛べばうっすらと黒い排ガスの後がついてしまいます。

 雨の中やスモッグの中を飛びますと、胴体全体が窓ガラスの部分を含めて汚れてしまい、特に前方に向いている、着陸灯や前面の風防が汚れが激しくて毎日きれいに拭いてやる必要があります。

 またローターやテールローターは激しく気流を切るため、強くこびりつくようなのごれが着き、点検をかねて定期的な清掃が必要です。

 機体の中はあまり汚れないかと言うとこれがまた、いつどのように激しく汚れるかわからないことがあります。

 まずどろどろの状態の地面に着陸すると、ドクターナース、パイロット整備士の靴も当然どろどろになり、急ぐ運航ではいちいち泥をきれいにして乗り込むことが難しいので機内の床は当然どろどろになることが起こります。

 離着陸時の砂塵の舞い上がり防止のために、消防隊に散水していただいていることも、機内がどろどろになるひとつの原因なので、出来ればヘリの着陸する部分だけは、空けて散水していただくとよいのですが、なかなかそうは行かないようです。

 もっとも深刻な場合の機内の汚れはやはり、患者さんの嘔吐物、出血、体液が機内の床に漏れ広がることです。

 特に農薬自殺の場合は強い匂いが機内に広がったりしますが、大昔ヘリコプターで撒布していた時に匂った懐かしい香りが鼻に吐いて、逆に懐かしく感じたこともありました。

 血液、体液の床への漏れは少し深刻で、感染症の恐れもあり、後の清掃消毒が大変で整備士と看護師が協力してやっていたようなことがありました。

 ヘリの床に大量に流れだした液体は、ドレインの配管があり、胴体後部下方に機外へ放出する穴があり、飛行中に機外に出るようになっていて、そこから大量の血液が飛んで、胴体後部が真っ赤になったようなこともありました。

 血液体液は機体構造のアルミ合金を腐食させると言う報告がアメリカなどからありましたが、現実には大整備でバラス時に点検するしかなさそうです。

 コードブルーのきれいな機体を見ると何かうらやましいものを感じたしだいです。

コードブルーを見て、、、、




 毎週「ドラマ コードブルードクターヘリ」を見て感想を書くことにしました。

 別にフジテレビに恨みも利害関係もありませんし、若いころはフジテレビの報道ヘリに乗っていた時期もありますのでどちらかと言えば、ある意味身内なのですが、ドラマによって一般の方がドクターヘリのことなどに誤解を植えつけることはまずいのでその都度感想を書くことにしました。

 MD900や902は一般的に振動の少ないヘリで、機内で注射もできる、乗り物酔いがすくないと言う宣伝文句が一部で言われていますが、実は他の機種とほとんど変わることはありません。

 私は逆に特有の味噌擂り振動というような他のヘリに見られない周期的な揺れがあり、どちらかと言えば酔いやすいというような印象を持っていました。

 理由はテールローターがなく、直接テールローターブレードのどちらかと言えば直接的な空力的の力で制御するのではなく、メインローターの吹き降ろしの不安定な空力的なものでコントロールするため、テールローターの効きが悪く、初心者パイロットがうまく制御できないため尻尾の揺れにあわせて機体がゆれてしまうためだと思っています。

 日本にMDが導入された時、乗せてもらう機会があり、その切れ間のない揺れに遭遇し、後輩の機長に止められないのかと言ったことがありました。

 次の話題は乗り物酔いです。

 フライトドクターやフライトナースはヘリの乗り物酔いに悩む人が多く、待期室の机の引き出しには酔い止めの薬が常に入っていて、朝のブリーフィングが終わると1錠飲む人が多くいました。

 ある程度経験で慣れる方と、まったく改善しない方と二通りあり、極端な例では1分で酔いますというベテランドクターもおられましたが、皆さんプロでほとんど顔には出さず、あげることも無くがんばっておられました。

 飛行中、患者さんの処置をしたり、書類を書いたりするためにうつむいて作業するとてきめんに酔うと言う方がいますが、遠くを見たりすると酔わないとも言いますが飛行中は遠くの景色を見る時間はほとんど無いのが実情です。

 乗り物酔いや高所恐怖症のためにフライトドクターやフライトナースを断念した例は私の勤務中一回も無かったように記憶しています。

ドクターヘリと海の事故






 

ドクターヘリで勤務した2006年から2011年の、海にかかわる事故に関して出動した経験がありますので、読者の方の質問、海は海上保安庁ですかといわれたことに少し答えてみます。

 海上保安庁は海難事故などの警察権と救助を受け持っていますが、医師がいないと言うことで救命医療は必ずしもできないようです。

 そこでやはり、海上保安庁からドクターヘリに救命のため出動要請が入る時がありました。

 と言ってもドクターヘリが船舶へ直接着陸は出来ないのが普通で、実際に海上保安庁事案でも、港のある場所の警察や漁協などから出動要請が入っていたようです。

 どのような事例かと言うと、ジェットスキーがブイに激突して重症だとか、漁船で操業中に網を巻き上げるウインチに巻き込まれたと言うような事例でした。

 このような事例ではやはり港など急行し、対象の船舶を探して並走してへ港に着陸して、すぐに処置をすると言うことになります。

 このほか外洋を航行中の外国船で心筋梗塞の患者が発生したので、ドクターヘリのドクターナースを送り込んでホイストで降下させたいと言う要請がありましたが、我が病院の屋上へリポートに海上保安庁のヘリが着陸できず、結局は夜になって患者を病院へ救急車で送ってきたことがありました。

 いずれにしても海洋へのドクターヘリ出動件数はごく少ないので、各地のドクターヘリが海上保安庁と共同訓練をしたり、出動の協定を交わしているような話はあまり聞いたことがありません。

 海岸近くはドクターヘリが来ると思いますが洋上ではドクターヘリは助けに来ないと思っていたほうが良いでしょう。


発足から17年 ドクターヘリはどう変わってきているか、、、、




 ドクターヘリが導入されて約17年、始まった時と今現在では色々と変わってきていると思いますが、重要なことは何が変わってきているかと言うことについて今日は少し触れてみます。

 ヨーロッパやアメリカを見習って導入したので、現地へ視察や調査に出向いた人がかなりいるのですが、運航の基準や法的な面などヘリが実際にどのように飛んでいるかを見聞きし、日本で同じように出来るかどうかをぜひとも検討を加えて欲しかったことがおざなりにされました。

 ヘリコプターを用いた救急医療は何がともあれ、初療までにかかる時間を如何に短縮するかと言うことは、心肺停止、大出血などの事例を取り上げて報告されていました。

 その目的を達成するには、一にも二にもヘリが救急患者に一番近いところへ着陸すると言うことになりますが、私の想像では欧米でヘリがどこへ着陸するかの制限は無く、パイロットがその都度判断しているような印象を持っていました。

 特にドイツのアウトバーンやロンドンの市街地に着陸する事例は報告されていましたので、よもや日本が法的に着陸場所の制限が強すぎて,ランデブーポイントなるいかさまではじめるとは思いもよりませんでした。

 いずれにしてもランデブーポイントなるものを指定し、ヘリはそこへ着陸し、救急車が患者を運んでくるなどと言うような悠長な救急ヘリなど何の役にも立たないと思っていたのですが、法規制を突破できず、さらには新米パイロットを使うためにはそのような危険なとこは出来ないと言うで事業が始まってしまいました。

 私がドクターヘリに乗り出した2006年末ころには、ランデブーポイント以外の場所へ着陸しないように会社から強く言い渡されていて、しばらくはおとなしく飛んでいましたが、あるとき、病院から5分で着く場所へ出動した時に事件が起こりました。

 ランデブーポイント上空へ着くと誰もいない状態で、様子を見るため事故現場をさがすと、軽トラックが電柱に突っ込んで、大破していましたが、そこにも救急車も救急隊員も誰もいないで静まり返っていました。

 どうやら一人を搬送して行ったらしいのですが、運転していたおばあちゃんが運転席ではさまれてぐったりしていましたので、すぐそばの休耕田に着陸し、医師看護師はすぐに処置を始めました。

 そうこうしていると、救急車が着き、救助工作車が着いて、救命処置をしながら油圧ジャッキで運転席を広げて救出出来ました。

 結果的には心タンポナーゼという心臓が破れた症状で、手当てが遅れたら死ぬところでしたが、5分で病院へ搬送し、一月後にはおばあちゃんは退院して行ったそうです。

 会社がランデブーポイント以外の場所へ着陸するなと言っていたのはルールがそうなっていると言うこともありますが、他のパイロットがランデブーポイント以外の場所へ着陸するに十分な経験技量がなかったからで、一人だけ余計なことをするなと言うことだったようです。

 このようなことはドクターヘリ業界すべてで同じように行なわれていたようで、今になってもそれしか出来ない会社もあるようですが、その後、航空法が改正され、パイロットの判断で任意の場所へ着陸できるようになっていますが、パイロットの技術や訓練が追いつかず、さらに1000時間のパイロットも飛ぶようになりますから、ますます世界標準から遅れると言う結果になりそうです。

 経験の少ないパイロットに法改正されたからどこへでも着陸しろと言うことは、大変危険性の高いことなのですがさりとて、17年前のように絶対ランデブーポイント以外には着陸するなと言うことも現実離れのドクターヘリとなりそうで情けない限りです。

 将来を見れば世界標準の救急ヘリとなるべきで、ロンドンは電線が無いからどこへでも着陸できますなどと、馬鹿げた屁理屈を言ってないで、日本のパイロットもどこへでも着陸できるように訓練し、審査し、経験を積まして、助かる命はどんどん助けるべきでしょう。

 絶対にランデブーポイント以外の場所へ着陸するなと厳命されていましたが、目の前に死にそうな患者がいたらやはり着陸するでしょう。

 自分にその技量と経験があって、十分安全に着陸できるなら、、、、

 このような一番重要な運航上の検討事項をほとんど見向きもしないで、ただひたすらランデブーポイントだけで救急ヘリが成り立つとでも思ったのでしょうか、厚労省と航空行政当局と病院医療がわと、運航会社は一体、何を相談したのでしょう。

 何回も外国へ視察や研修に行っていたようですが、遊びにでも行っていたのでしょうか。

 

日本のドクターヘリの歴史、、、、




 1970年代にドイツなどで始まったヘリコプターを救急医療に使うことは日本にも伝わり、岡山の某医科大学のO先生が確か1982年であったと記憶していますが、204Bを使って実験したのが初めだったと思います。

 ドイツがアウトバーンの交通事故を対象にヘリの運航を始めたことに習って、中国地方の医療過疎地域を通る、中国縦貫道の交通事故の救急にヘリを飛ばせるかどうか実験したようですが、ヘリ会社内でもほとんど話題にすらならなかったように記憶しています。

 基本的にドイツはヘリがどこに着陸しても良い運航ですから、アウトバーンの交通事故に、ヘリは大変な威力ですが、日本ではあらかじめ航空当局に離着陸の許可を取る必要があり、ヘリは事故現場には着陸できず、ほとんど威力を発揮することなく終わったと思います。

 その後1995年に起こった阪神大震災で、様々なヘリが数百機も飛びまわりましたが、救急など医療目的で飛んだヘリはほぼゼロで、その反省から医療用ヘリを飛ばすべきだと言う意見が強くなりました。

 阪神大震災でヘリの運航で大きな成果というか意識の改革が起こったのは、ヘリはあらかじめ着陸する場所の許可申請が必要であると言う規制が、一時的にしろ、運航者の責任でどこへ着陸しても良いことになり、事後申請を認めたということが起こりました。

 つまり、ヘリは許可のあるなしにかかわらずどこにでも必要な場所へはすぐに着陸しないと、急な大災害などではほとんど役に立たないと言うことが、行政も運航側も共通の認識を持ったと言うことが大きな変換点となりました。

 その10年後の2005年には100人以上の犠牲者が出るJR尼崎事故が起こり、阪神の反省から、消防ヘリなど公的ヘリが事故現場近くの学校などに着陸して、けが人を搬送する態勢が曲がりなりにも取られ、すでに2000年ころに岡山で始まっていたドクターヘリ事業に弾みが着いたことになりました。

 2001年に正式に始まったドクターヘリ事業は、ランデブー方式と言って、救急車が患者を収容して、あらかじめ決めてあるランデブーポイントでドクターヘリと落ち合うと言う方式で、救急車搬送に30分以上かかるような、医療過疎地域では有効なのですが、1分1秒を争うような心肺停止症例などには有効性が低いと言う致命的な欠陥がありました。

 これを劇的に改善したのが兵庫県の豊岡ドクターヘリで、救急入電時の患者の症例にあらかじめ指定したキーワードがあると、ヘリは自動的に離陸し、ほぼ救急車とヘリが同時に患者の元へ向かい、ヘリのほうが早く着くと言う事態も起こるようになりました。

 ちょうどこれに見合って航空法改正があり、救助ヘリはパイロットの判断で任意の場所へ許可無く着陸できるようになり、救急車よりヘリが先に着いた場合など、近隣の敵地を選んで着陸し、患者の元へ駆けつけて救命医療が出来るようになり、多くの劇的救命が起こるようになりました。

 ドクターヘリが始まった当時はランデブーポイントと言うあらかじめ決めた場所にしか着陸できなかったため、患者を収容した救急車がランデブーポイントへ着くまでは救命処置が出来なかったと言う事態が、救急車の動きに関係なく、直接患者の元へ着陸すると言う事例も多く出てきています。

 これでやっと欧米並みですが、この運航方法に対応するためには、パイロットが任意の場所へ安全に着陸するだけの、相当高度な経験技量が必要で、この運航方式を拡大しかつ安全に行なうには、ドクターヘリが始まった当初のパイロットの技術的な要求度から格段に高度なものとなってきています。
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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