埼玉県 山岳救助ヘリ 有料化(2)、、、





  ニュースによると昨日27日埼玉県議会で山岳救助ヘリ有料化条例が可決されたかどうか結果が出ていますので、今さら何を書いても仕方がありませんがもう一度取り上げます。

 条例の趣旨は受益者負担の原則と、無謀登山の抑止と言うことだそうです。

 はっきり言って埼玉県は山岳救助には防災ヘリを飛ばしたくないという意思が見え隠れしています。

 それは2010年7月25日に起こった、5人も殉職すると言う悲惨な山岳救助中の墜落事故が尾を引いていると言うことでしょう。

 いろいろなことが言われていますが、あの事故は120%運航技術の未熟が原因の事故で、ちょっとでもヘリで物をぶら下げて飛んだ人間なら誰でもわかるほど単純な原因で墜落しています。

 辛らつな意見ですが、今回の有料化も含めてすべてのストーリーが始まっていますので、いい加減にしたらというのが私の思いです。

 奈良防災機、岐阜防災機、埼玉防災機 3機ともすべて防災ヘリを飛ばしてはいけないほどの未熟なパイロットが起こした事故です。

 なぜそのようなパイロットが防災ヘリを飛ばしていたかは明らかな理由があって、飛ばせるほどの技術を持ったパイロットが日本国中にいくら探してもいなかったので、そのような未熟なパイロットが飛んでいたということ言うしかありません。

 今もそのようなパイロットが防災ヘリを飛ばしている県があるかどうかは良く知りませんが、もしいたら山岳救助は飛ばしたくないと管理者は思うでしょう。

 万一墜落すれば管理者は責任を問われることは確実なので、なんとしても危険なフライトは出来るだけしないように仕向けることでしょう。

 国が主導して、県知事以下県民まで、防災ヘリを導入し、救助事案や防災任務、夜間のドクターヘリ的運航などと、県民にはあたかも防災ヘリが万能であると思わせながら、実はパイロットの技量不足で、事故と背中合わせなどと公表は出来ないでしょうし、一応飛べるという体裁は保つ必要があるでしょう。

 夜間のドクターヘリ的運航は運航要員を多数抱えて、ほとんど飛ばない大きな無駄使いと同時に、経験の少ないパイロットに月に一回程度の夜間飛行を強いる大変危険でほとんど飛ばない、大きな無駄遣いです。

 そして昼間の山岳救助は有料化して、出来るだけ飛ばないでいいように仕向ける極端な後ろ向きの施策となることでしょう。

 有料化を実行するに当たり、他府県との兼ね合い、特に他府県からの登山遭難者から料金を徴収し、埼玉県の登山者が他府県の山で救助された場合との兼ね合い、県警ヘリなど他のヘリで救助された場合の取り扱い、遭難者が救助が間に合わなくて死亡した場合の取り扱いなど多数の懸案事項が出てくることでしょう。

 富士山で遭難者を落とした事例は裁判になっていますが、有料なら救助失敗はすべて裁判となるでしょう。

 もうひとつは運航関係者として言っておきますが、救助事案が減ることによって埼玉県の防災ヘリはますます下手糞になっていくことでしょう。

 なぜなら鼻歌交じりの訓練と命が掛かった実働は雲泥の差があるということです。

 まあ それ以前に金とるだけの技量があるかどうか誰かチェックしてみたらいかがでしょう、何しろ自家用運航なのですから、、、

 今回の条例が出るような県なら鼻から防災ヘリなど止めたほうが県民のためでしょう。

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救命医療に命をかけた女、、、、







 昨日夜、テレビ東京系列で「救命医療に命をかけた女」という勇ましい題で放送されていました。

 知らない人は映像を見るまでどんな勇ましい女性かと思っていたかもしれませんが、本人はごく普通の少し小柄で少しやせた女性で私の娘より年下です。

 当時からどのような厳しい現場に遭遇しても弱音を吐かずにもくもくと処置をしている姿を思い起こします。

 同僚の男性医師に遅れを取ることなどは一切なく、どちらかといえばリードするような積極的なお医者さんでした。

 それにして次々入る重症患者の出動要請を見ると、私がいた当時より出動回数が増えていて、重複要請が次々と続き、3件4件重なるときもあるようですが、うまくドクターカーとヘリ、そして医師2名搭乗をうまく使い分けて対応している様子が良くわかります。

 もうひとつの特徴は救急患者さんの緊急手術をほとんど救急科で対応する様子は当時よりさらに進んでいますので、医師看護師の要員がずいぶんと増えたようです。

 現場へ出向いて患者さんに対応し、自らの病院へ搬送して手術をし、退院まで通して責任を持って対応する姿勢が、地域に信頼されているからこそ、多くの患者さんが救われるという好循環になっている理由でしょう。

 ヘリやドクターカーが医療資源のひとつとして、最高に使っている様子が良くわかります。

 理由は良くわからないのですが、他府県のドクターヘリが必ずしも豊岡と同じように使われていないのが残念な気持ちがします。

厚労省 給料調査 パイロット149万円 ドクターヘリは、、、 




 厚労省の調査によるとフルタイムで働く労働者の昨年6月の平均給与のランキングでパイロットが149万円とダントツの金額だったそうです。

 2位が医者で86万円弱だったそうですから、パイロットの待遇は破格なのですが、同じパイロットでもドクターヘリなどヘリコプターパイロットの給料の実態を見るとき涙が出る思いです。

 公的機関が、まともな調査すらしたことはないと思いますが、ドクターヘリのパイロットに限れば、たぶん平均すると50万円から60万円程度ではないかと想像しますし、団塊の世代が引退してしまえば、10万円程度は下がることでしょう。

 この待遇の実態を知れば、まともな人間は民間のヘリパイロットになろうとするものはよほど、学力実力がない者で、家に金があって、金さえ出せばライセンスが取れると言いくるめられた者しかありえないでしょう。

 もちろんヘリのパイロットは自衛隊や海上保安庁などまともな公務員パイロットという職種があり、最新鋭の機種に搭乗して有意義な任務を行い、まともな処遇を受けることが出来ますので、当然優秀な者はそちらへと靡くでしょう。

 さら空を飛ぶことで一生、天職としてやるなら、きわめて安全でなおかつ一番の給料を取れるパイロットという職業、実は民間定期便のパイロットを目指すことでしょう。

 諸外国、欧米や東南アジアでもヘリのパイロットと定期便のパイロットの給料の差は日本ほど醜いことになっている国はほとんどありません。

 私の飛んだインドネシアなどでは、国営のガルーダ航空では機長でさえ普通の公務員の給料に毛が生えた程度で、家電製品などの運び屋やでもしないとお小遣いにも不自由するほどだったようです。

 民営の定期便のパイロットはその3倍程度と高かったのですが、危険な洋上やジャングルを飛び、特殊な技術が必要なヘリパイロットは民営定期便のパイロットと同等かそれ以上であったようです。

 なぜそのような処遇をするかと言うと、ヘリパイロットの給料を下げれば、優秀な者は皆定期便へ移ってしまい、結果的にヘリパイロットのレベルが下がってしまってヘリが十分飛べなくなるからです。

 アメリカなどでもベテランの大型機のヘリパイロットと定期便のパイロットはほとんど同等の給料だそうです。

 日本は一時期ヘリパイの給料が定期便のパイロットに接近していた時期があり副操縦士程度の給料を貰っていた時期がありました。

 その当時はどんどん飛び回る仕事があり、技術的にも大変困難で危険性の高い仕事をこなしていましたので、それなりの処遇と、技術的優位性がある程度一致していました。

 その体制を崩して技術的な低下と処遇の低下を比例して加速させたのは、ヘリ運航の技術的な評価をできないまま、金の計算しか出来なかった、レベルの低い経営陣が業界に入ってきたことが一番の原因でしょう。

 また運航会社の技術部門以外の部門の管理職者がそのような経営者と一緒になって技術部門を低く評価し、処遇をカットし始めたことが、新規参入してくる技術者のレベルの低下を加速したことでしょう。

 いったん下向きの方向へ加速しだしたヘリ運航の技術は、新規参入者のレベル低下と、処遇の低下はいまや最低線にあり、有能な新人は来ないと見るしかないでしょう。

 今回の給料調査をした厚労省の部門はドクターヘリの部門とは関係ない部門ですが、ドクターヘリのパイロットの給料調査でもしてみたら、愕然とすることでしょう。

奈良県ドクターヘリ 3月21日運航開始、、、





   旅行から帰ると、産経新聞奈良版にドクターヘリの運航が来月21日に始まるとの記事が出ていました。

 ドクターヘリの導入はすでに40県を越えていて、今導入しているような県はほとんど後発組で、お世辞にも積極的といえない程度なのですが、その原因は奈良県政自体の消極的な姿勢が一番の理由と言えないのは、各県共通しています。

 ドクターヘリの導入の推進力は県政や知事の意識ではなく、救急医療に携わる医療関係者の中で強力なリーダー的医師がいるかどうかでした。

 もともと奈良県は大阪にあまりにも近く、医療そのものが大阪に依存している面が多く、他の面でも奈良府民と言われるほどの県民が多くが、大阪に勤めるサラリーマンで奈良へ寝に帰るだけと言われるほどでした。

 その医療体制の典型的な例が今回基地病院となる南奈良医療センターの程近い、大淀町の妊婦が救急搬送されて、はるか遠くの大阪府高槻市まで搬送されて亡くなるような事例が起きています。

 最近、奈良県の消防組織が全県一本化されて、他県のような市町村バラバラの体制が改善され統一されましたので、その点ドクターヘリの運航に良い影響が出ると良いなと期待します。

 奈良県は橋下元大阪府知事が旗振りをした、関西広域連合には大変消極的で、独自のヘリが飛ぶまでは大阪和歌山三重の3県のドクターヘリを1件当たり60万円で借用していましたので、年間10件も飛ばなかったように思います。

 飛ばなかった理由は、60万円の手続きがドクターヘリ要請の正当性の経緯が書類として残るためどうしてもためらうのではと思っていましたのでこれが改善されると南部山間部への出動が増えるかどうかが、ある意味でこの理由付けが正しかったかどうかわかります。

 ドクターヘリが出動する回数の傾向というものは、当該地域が過疎地であるか、また高齢者が多いかどうかということもないではありませんが、実は背景人口がどの程度かということが一番大きな要素となります。

 つまり奈良県の南部山間部は過疎地で高齢者は多いのですが、絶対的に人口が少ないのでそれほど出動回数が急増するようには思えません。

 奈良県のドクターヘリが有効に活用されるかどうかは、実は、北部市街地方面で、3次救急病院までの救急搬送時間が30分程度の場面でドクターヘリを使った救命医療がどの程度できるかにかかって来るように思います。

 奈良県の救急医療関係者と消防関係者が、ドクターヘリは南部山間部だと思っているようでは週に2回程度しか飛ばない、隣の大阪とおなじようになりかねません。

 和歌山県のドクターヘリが5分、10分程度の地域へのフライトをどの程度こなしていて、どのような救急処置をしているかは大変参考になると思います。


淡路島、、、




   昨日からちょっとした旅行で淡路島へ来ています。
 
 淡路島は鳴門海峡を渡ればすぐ徳島県で、北の日本海側の豊岡や香住からヘリでも小一時間かかるほど広い県域ですが、大阪府や和歌山県から海を渡れば10分強で届きますのでドクターヘリの範囲としては遠いようです。

 それでも和歌山県と大阪府のドクターヘリの勤務中、大阪から患者さんを搬送してきたことがただ1件あっただけなので、ドクターヘリ空白地といえるかもしれません。

 明石海峡大橋と鳴門海峡大橋が完成するまでは、送電線パトロールや松くい虫散布で随分と飛んだのですが、ドクターヘリではただの一件と寂しい限りでした。

 橋ができると神戸の大病院への救急搬送の所要時間が画期的に短縮されたと思われるでしょうが、高速道路専用の橋を通過して搬送すると結構、橋の乗り降りと高速インターの出入りで時間がかかり、ドクターへりの有効性は高いように感じます。

 送電線パトロールで得た知識によると、四国と関西圏の電力の需給のやり取りは、当初鳴門海峡を渡る送電線が淡路島を縦断し、その任務を負っていましたが、瀬戸大橋の一部分に作りつけられた本四連携線と阿南から海南へ海底を渡る最新技術の直流送電線が伊方原発の電気を送るためにそれにとって変わっていました。

 しかし6年前の東北震災で原発の発電はほとんどゼロになって、各地の巨大な送電線網は全く役に立っていない状況が続いて、もし日本が原子力と言うものに手を出さなければ今の電気代は半額で済んでいたかもしれません。

 私が淡路島を飛び始めた40年近く前から多くの肉牛や乳牛が飼われていて騒音被害に翻弄されて飛んでいたのですが、その後の日米の酪農摩擦で島内の牛は一時期ほぼゼロとなっていました。

 昨日のドライブではあちこちに牛小屋が復活し、おかげでホテルでは大変おいしい牛肉が出ました。

 今日は、懐かしい淡路島から徳島へ渡って観光し帰る予定です。

崩れたか、民間運航会社の優位性、、、、



 パイロットのヘリコプター運航技術は職人技と言うか、腕と言うか、かなり特殊性があると思われます。

 ひとつには自動化されにくい運航形態や、ナビシステムや管制システムによっての運航支援を十分受けられない環境があります。

 これは旅客機などのような運航がその真逆であることを見ればよくわかり、自動化が進むほど特殊な職人技や職人芸、などとは無縁になることによって安全性を向上されるようです。

 自動化が進む旅客機などの分野を尻目にヘリコプターの運航はいまだに職人芸が生きる遅れた分野といえると同時にパイロットが技を生かせる部分が色濃く残っています。

 そのような運航環境の中で民間運航会社が優位性を保ってこれたのはひとつに圧倒的な飛行時間の多さを持っていたことです。

 特に大手の運航会社の団塊の世代には1万時間経験の猛者がごろごろしていました。

 自衛隊や海保では数人出るかどうかでしたので、その差は歴然としていました。

 その上、飛行内容が多岐多彩に渡り、飛行内容も、飛行時間とともにより飛行技術がより高い内容を必要とする業務へと階段を上がって行きましたので、自衛隊など官庁のパイロットより恵まれた環境にあったといえるでしょう。

 その状態がピークに達したころ、ヘリ業界のバブルがはじけて、農薬散布がなくなり、物資輸送が半減し、その他撮影や企業自家用機の分野なども経済減速に従って一挙にしぼんでしまいました。

 ちょうどその時期に防災ヘリや、ドクターヘリ、消防ヘリなどが導入されたのはある意味ヘリ運航会社と機体販売の商社が組んで新たな需要を目指して、余剰の要員を有効に使うための企業防衛だったのかもしれません。

 ベテランのパイロットがごろごろしていましたので、防災ヘリなどを飛ばす程度のことは簡単なことだと、大きな顔で運航を請け負ったのですが、いいことは長続きしないもので、民間のヘリパイロットが技量を上げるほど飛べる仕事は壊滅的になくなり、世代交代になった今は誰もいない状態となってしまったようです。

 民間のヘリパイロットは飛行経験を増やすことに四苦八苦している間に、自衛隊のヘリパイロットは景気動向に関係なく年度予算で確実に飛行を続けていましたので、相対的に経験技量は逆転してしまったことでしょう。

 公明党がドクターヘリなどには自衛隊定年者を使うことを主張していることは、今の状況からかなりまともな主張で、他にいなければ仕方がないというしかないでしょう。

 民間運航会社が自前のヘリにパイロット、整備士を着けて、有利にドクターヘリの運航を全国的に請け負ったことは営業的には大変な成功であって、防災ヘリのようにヘリの所有が自治体なら、運航要員の派遣だけで多くの利益を得ることは難しくなり、運航要員の確保を自衛隊などと連携して確保するめどがついた段階で民間運航会社は大変不利な状況となるでしょう。

 ドクターヘリの場合、運航技術が防災ヘリほど高くなくても可能なので、もし厚労省と航空局が自家用運航を認めれば、一挙に病院独自の自家用運航になり、自衛隊OBが乗るようになるでしょう。

 民間運航会社が大きな顔を出来たのは、経験豊富なパイロットを数多く抱えていたからで、それが見込めなくなったら民間運航会社の出番は一挙になくなるかもしれません。

 ドクターヘリの運航会社の契約状況を見るとき、ほとんど運航実績のない会社が10年ほどで業界の4分の一、10機も飛ばしている急成長の実績を見るとき、いかに運航実績の評価が落ちたか、あるいは大手の評価が落ちているかということを実感します。

 さて今後、公的ヘリの運航形態はどのように変化していくのでしょうか。

 大手や運航実績を誇った老舗の会社が退場していくのでしょうか。


 
 

鳥と衝突、ヘリコプター





 昨日は猛禽類が餌と間違ってドローンを襲う動画を紹介していただきました。

 すごい時代になったもので、飛行機がこのように登場してほとんど鳥に襲われるようなことはなかったと思いますが、まさかドローンが襲われるとは、捕まえた鳥も驚いたことでしょう。

 飛行機が出来て以来、鳥に襲われることはほとんどなくても、ぶつかることは数限りなくおきています。

 特にヘリコプターは低空飛行をすることが多く、ずいぶんと気をつけて飛んでいましたが、自分自身の経験では2回ぶつかったことがありました。

 早めに見つけてこちらから避けるようにしていましたので、あまり危険な目にあっていないのですが、1回は夜間飛行で島根県の壱岐へ亘る海の上で1500フィートで飛んでいる時、暗闇の中でチンバブルにドンという音がして、着陸したら血痕と鳥の羽が着いていました。

 結局ぶつかった鳥は目に見えず、まさか夜間に500メートルもの上空を渡り鳥らしきものが飛んでいるとは夢に思わない出来事でしたがバブルは無事に割れずに済みました。

 もう1件は八尾空港でエプロンに接地と同時にハトの群れが直近を通過し、編隊の端っこにいたハトが、着陸したばかりの204Bのローターの回転面に入り、一瞬にして血しぶきが風防についたと思ったら首のない死体がエプロンに叩きつけられました。

 これもローターの先端の硬い部分にあたりローターは傷つくことなく住みました。

 静岡ではドクターヘリのコパイ側のチンバブルにとんびのような鳥がぶつかって、バブルをぶち破って機体の中へ飛び込んだ例がありましたし、206Bでも昔、同じように飛び込んだ例があります。

 また204などでも猛禽類が飛行中のローターにまともに当たって、硬いくちばしでローターに穴があいたような例があります。

 春先には営巣するため、下手に近寄るとまったく、逃げないどころかヘリに向かってきて威嚇するような例も多く、油断がなりません。

 豊岡では悠々と飛ぶコウノトリに良く出くわしましたが相手は保護鳥なのでなるべく近づかないように遠くから眺めながら飛んだものです。

危険な強風、、春一番、、、






 昨日は関東地方を中心に春一番が吹き荒れて、千葉県を中心に砂漠の砂嵐のように土ぼこりが吹き荒れていました。

 瞬間最大風速が30メートルを超えたところもあり、いつものニュースのように成田空港へ着陸する定期便が大きく揺れてゴーアラウンドする様子が写しだされていました。

 定期便のパイロットが一番冷汗をかく瞬間で、落とされたときに地面があれば機体は滑走路に叩きつけられて、ハードランディングし、下手をすればフェデックス機のようになりかねません。

 航空機に与える強風の影響はこのような危険を招きかねないのですがそれは、風が10メートルを超えると地上付近の地形の影響を受け、障害物にぶつかったところで渦となって、おおむね平均風速の半分程度の加速と減速する強弱が起きることが原因しています。

 つまり、平均風速20メートルの風の中を120ノットで進入してくる航空機は平均20メートルの半分のプラスマイナス、つまり30メートルの風が急に10メートルになる対気速度の中で飛んでいます。

 正対風、風速30メートルなら150ノットの対気速度が一瞬にして90ノットになってしまうのですから、通常、ジェット機の失速速度90ノット程度を一瞬にして切ってしまって墜落となりかねません。

 このような場合にグラリと翼が大きく傾くのは、主翼の一部分が失速している可能性があり、かなり危険な状態と言えます。

 このような場合の進入の場合、通常の進入速度に最大風速と最小風速の差の2分の一を速度を加えた進入速度で着陸するなど、機首によってマニュアルで決まっているようです。

 ヘリコプターも同じように進入中に対気速度が大きく変わるので、落とされたり、持ち上げられたりすることは、一般の固定翼機とほぼ同じなのですが、違うことは、ヘリコプターの離着陸する場所が屋上であったり、山間部であったり、建物の影であったり、余計に風の乱れに影響される可能性が強いということになります。

 また固定翼機は障害物から遠く離れた高い高度を巡航しますが、ヘリコプターの場合が離陸から巡航、そして着陸までほとんど強い風が起こす乱気流の中を飛ぶことが普通で、特に強い降下流の中は地面に叩きつけられるほどの影響があり、ドクターヘリの運航では20メートル吹けばほぼ飛べない状態となります。

 ただし春一番に限らず、全般的に風が大変強い気圧配置の状態にあっても、地形などの影響で大きく差があり、一部穏やかな地域もあるのですが情報が確実に入ることも難しいので判断が難しいといえるでしょう。

夜間でも視界がよければ飛べるか?、、、、



 現実に埼玉県と京都府は消防防災ヘリを使って夜間のドクターヘリ的な運航をしていますので、夜間でも有視界飛行方式で飛べるということになります。

 ただ ドクターヘリが飛ぶ場合、タダ飛び回るだけでなく、患者さんを2地点間輸送することが任務となります。

 航空法では出発前に運航に必要な気象データを確認することが義務着けられてられていますので、何らかの方法で離着陸地と飛行経路の気象が有視界飛行の条件を満たしていることを確認する必要があります。

 確か、夜間の場合は離着陸 ルートともに5キロ以上の視程が必要なので、5キロならOKで4,9キロでは飛べないことになります。

 他に雲の条件もありますが、ここでは話を簡単にするために視程だけを中心に話を進めます。

 普通 飛行場で飛ぶ場合、主として定期便向けになのですが、毎時の定期観測と、有視界条件を切った場合などに、公式の情報を発していますので視程は正確に観測されて、公表されますのでそれに従って、パイロットは運航の可否を自動的に決定できることになります。

 ドクターヘリが駐在する基地病院などのヘリポートでは、このような定時観測をしていませんし、観測機器もなく、さらにひどい場合にはパイロットが穴蔵のような場所で、閉じ込められているような酷い場合もあり、私はことあるごとに、ドクターへリのパイロットには少なくとも2方向程度は見える場所で待機できるようにしてくれと言い回った事があります。

 さらに、特別な観測機器はなくても、素人目でも空港と同じように1時間ごとくらいは観測して、基地の記録としてとともに、記録として残しておくべきだと思いますが、航空行政はあまりこのようなことに興味がないようです。

 もちろんドクターヘリは2地点間を患者さんの搬送を行いますので、パイロットには目的地ヘリポートの気象条件が有視界飛行状態であるかどうか程度の情報を何らかの方法で与えるべきでしょうけれども、現実はほぼ何も出来ていないということが言えるでしょう。

 昼間の場合は比較的遠くまで見えますのである程度は飛行中に目的地方向の気象を判断できますが、夜間になると見えないということになります。

 夜間ドクターヘリを飛ばすには、このように、目的地の気象状況を比較的正確に、少なくとも有視界飛行状態かそれ以下か程度は、離陸前のパイロットに知らせることが必要でしょう。

 航空法において、昼間の運航においてもまったく同じなのですが、数百あるランデブーポイントの気象を正確に観測し、離陸前にパイロットに通知することは、当然のことなのですが、観測機器、要員、連絡方法の制度システムがなく、パイロットは経験などから想定しながら飛んでいることが実情でしょう。

 夜間の運航は今の制度上では簡易の夜間照明さえ現地へリポートに設置すれば可能になり、現地の天候が良いか悪いか、パイロットが嘘でも確認したといえば飛べることになります。

 埼玉と京都の夜間飛行の場合、現地の視程が4,9キロなのか5キロなのかどのようにして確認しているのか大変気になりますが、ルート上の天候の確認はほぼ出来ないのではないでしょうか。

 悪そうなら飛ばなければ良いといえばそれまでですが、、、、

ドクターヘリはなぜ有視界飛行条件しか飛ばないの?




 ヤフー質問箱に今日のテーマの質問が寄せられていましたが、まともな答えはなかったようですので今日はその答えを少し整理して記事とします。

 質問は有視界飛行条件でないとと言うことなので、計器飛行条件とは実は有視界飛行条件以下の気象状態となっていて、一般には空域によって視程が1,5キロ、5キロ、これも空域によって雲の高さが300メートル以下、あるいは雲からの垂直方向の距離が150メートル 300メートル 水平距離1500メートルなど細かく決められています。

 視程や雲からの距離が決められているのは、有視界飛行による目視で外を見ながら飛ぶ場合、地上の障害物や他の航空機にぶつからないようにとの余裕を見てあるからです。

 一方 計器気象状態で飛行する場合はまったく外が見えなくても、障害物や他の計器飛行の航空機に絶対にぶつからないことを保障しなくてなりません。

 つまり航空無線標識などを使って飛行位置を正確に維持できる装置があり、正確に規定された飛行経路を計器飛行方式として定め、レーダーでなど正確に誘導される場合を除いてその経路を正確に飛行する必要があります。

 そして複数機が接近して飛行する場合には、一定の間隔を規定し、それを守るということになります。

 装備やパイロットの免許の関係で有視界飛行方式しか出来ない航空機は、天候が良くない場合には有視界気象状態の空域しか飛行できないことになっていますので、雲の中などを計器飛行方式で飛行する航空機とぶつかったりニアミスすることは起こらないことになっています。

 ここまで説明すると、ドクターヘリがなぜ有視界飛行方式でしか飛ばないのかだいたいはわかってくると思います。

 まずドクターヘリが離着陸する数百のランデブーポイントに航空無線標識などを設置し、計器飛行での離着陸から基地病院へのルート上すべての空域で障害物やからの安全性を保障したルートを設定する必要があります。

 さらに他の航空機との衝突防止のための運航管理には、常に管制機関が飛行許可を発出し、位置報告の送受信をするとともに、レーダなどによる監視支援をする必要がありますが、ひと山超えると無線はとどかなくなります。

 そうなると最新の機材でGPSと衛星通信となりますが、飛行承認と運航監視の時間的余裕がドクターヘリの場合、5分と待てないという条件と、運航管制の要員を航空局が割けるかということも問題となるでしょう。

 またひとつの県で数百もあるランデブーポイントにそれぞれ計器飛行ルートの設定が障害物との関係や、着陸地点のバラバラの諸元の関係などや設定に掛かる調査測量、人件費など実現可能かどうかも疑わしいことになります。

 そこで先進諸外国では、基地病院のみに計器飛行方式による離着陸を、きわめて高額に掛かる航空無線標識でなく、今流行のGPSによって設定し実用化しているようです。

 ただし、これは普通、数百以上ある離着陸場所のタダの一箇所だけなので、効果がどの程度あるかかなり疑問でしょう。

 これによって計器飛行で離陸してもそれに引き続く飛行が有視界飛行できるかどうか大問題で、そのまま墜落となりかねません。

 日本国中で100箇所程度の空港が計器飛行方式によって結ばれて、定期便など悪い天候でもそれなりの就航率で飛んでいますが、ドクターヘリはタダの1県だけで数百箇所のもなり、どのようにするか五里夢中もいいところです。

 つまり、日本ではあまりにハードルが高いこともあって、お遊びの計器飛行もどきでお茶を濁しているだけで、ほとんどなすすべがないという状態がこの先50年は続くでしょう。
プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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