離陸できないところへ着陸するな、、、、




  離陸できないとこへ絶対に着陸してはならない、、、、という言葉はヘリのパイロットとして駆け出しで、ちょうど事業用操縦士の資格を取って、今から農薬散布の訓練を受けるようなころに言われたように思います。

 この言葉の意味はまずヘリは性能的に離陸できないような狭い、極端に障害物などで囲まれているところにも安全に着陸が可能であるということを言っています。

 もう一つ深読みすれば、空気密度が低くなる上空に行けば行くほど、ローターが支えることが出来る重さはどんどん低下し、エンジンの出力も落ちてきますので、標高が高いところへ着陸するときには、マニュアルによる性能確認と、確実な着陸操作を行えるだけの十分な技量というものが必要となります。

 さらには離陸に際しては着陸よりもさらに出力が必要ですから、障害物を超えるために必要なホバリング上昇性能を確認しておく必要があります。

 これは着陸と離陸にさいしてパイロットが十分な技量を持っていて、性能が十分と確認されていたとしても、風向風速がマニュアルの性能データを取ったものと違って、背ヘリに対しての風や、テールロータの性能上不利な方向の横風成分があるときの割引分をどの程度見積もるかということも重要なこととなります。

 さらに風の突風成分がどの程度影響するかということにも配慮が必要となるでしょう。

 私たちは非力な小型のピストンエンジンのヘリで、地を這って飛んでいましたので、離陸できない状況にもかなり出くわしていますし、そのような馬力不足でも十分安全に着陸するような配慮を常に行ってきましたので、着陸の危険性についても認識度は高いと思います。

 ということで離陸してきた場所と同じ標高の着陸場所が少々狭くても、風が少し変わっていようと、着陸に失敗するようならとても言い訳がましいことは言えないものだという認識はあるでしょう。

 台風の影響で風が悪かったとか、高温でエンジンの出力が落ちていたとかいうことなら、より出力のいる離陸はとてもできないことでしょうし、神奈川県内のより標高の高い着陸場所へは、離陸できないものとして着陸を拒否する事態が出てくることでしょう。

 風が悪かったとか、高温で出力が落ちていたというような認識があるなら、ヘリはほぼ常に飛べないことになります。

 早朝5時から農薬を散布し、全部終わって機体を川の土手で機体を洗浄し、基地ヘリポートへ飛んで移動しようと、所帯道具を積み込んで整備士も乗っていざ離陸しようと、エンジンのpowerを最大限の24.5インチまで上げてみると、ヘリは一センチも浮きません。

 整備士と目を合わせて笑ってしまいました。早朝は気温が25度、今離陸しようとした9時ころは35度になっています。

 整備士も心得たもので、広い滑走路のようなあぜ道まで車で送ってもらって待ってます。と、、

 70キロ軽くなったヘリは何とか、よたよた、川面に向かってダイブして離陸し、あぜ道で整備士を乗せて今度は、スキッドをこすりながらスピードを着けて何とか離陸し、基地ヘリポートまで飛んでいくことが出来ました。

 このようなことはごく普通の出来事だったので、どのタイプのヘリに乗っても、必要性がないのに50メートルも100メートルも垂直に離陸したり、50メートル上空から垂直に着陸しようなどというバカげたことは自然としないようになっています。

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bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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