ドクターヘリ秦野事故、風を知っていたか?









 東海大ドクターヘリ事故は台風の周辺地域の突風気味で方向の変わりやすい現場の風が影響したのではないかと言われています。

 運航再開の対策として「 消防機関と連携した離着陸場の風向きや風速の変化の確認強化 」をすると言っていますので、着陸の失敗が風の要因が強く、パイロットはあらかじめ風を十分に確認することなく墜落したのではないかと認識しているようです。

 消防本部によっては防災ヘリとの連携でいつも要求されているようで、ヘリに対していつも無線を通じて天候状況と風の情報を報告してくれます。

 さらにレスキュー工作車や散水車で先着していただく、消防隊員が吹き流しを携行してきて、立ててくれるところもあります。

 消防隊員の方たちには防災航空隊などで、気象状況や風向風速の報告の仕方などについて一応の教育を実施しているようですが、ヘリのプロではありませんのでパイロットが望むレポートが必ずしもあるとは限らないようです。極端な例では風向きを180度間違って報告してしまった例もあります。

 吹き流しはヘリが必要な風を指示出来る所、例えば工場なら建物の屋根の上などが望ましいのですが、一般的には他人様の土地を無償で善意に頼って借用していますのでそのようなことは不可能です。

 消防車の屋根の少し上につける程度が関の山で、吹き流しはほぼないと思ったほうが良いでしょう。

 また低いところに設置した吹き流しは正確な風の状況を指さない場合が多く、下手に信用するとえらい目にあいます。

 さらに言えばドクターヘリは救急車や先行の消防車よりさらに早く、地上支援の要員が誰もいないまま着陸する場合も多々あります。

 着陸地の安全確認から風の状況、周囲の状況などすべてをパイロットが単独で判断して着陸する場合もあり、風の状況を地上から送ってもらわないと安全に着陸できないレベルならドクターヘリは飛ばせないということになります。

 パイロットが着陸前に地上の風がどのように吹いているのかを観察して正確に知ることはかなりの経験と知識が必要で、今回のようなフェーン現象時の突風気味の乱れた風や、無風に近い穏やかで日照が強い時、瞬時に180方向が変わりやすい谷筋に直角に吹く強い風などが難しいようです。

 もう一つの着眼点は平素から天気図と現場の風の関係をいつも注意深く思いを巡らせておくと、天気図から現場の風を予想して現場に臨むと比較的正確に風をつかむことが出来ます。

 上空から木々の揺れ具合や水面の波、煙突の煙、田畑の作物の葉の流れなどを観察し、自分の予想と照らし合わすことによってより早く正確に風を知ることが出来ますが、全くの白紙で観察をはじめると時間がかかってかつ間違う可能性が出てきます。

 上層の風の流れと地形に影響されて変化する風の状況も経験と知識でかなり正確に判断できるようになります。

 飛行機のパイロットは管制塔から何度何ノットと正確に情報を受けることが出来、この情報は100時間のパイロットも1万時間のパイロットもまったく同じですが、ヘリのパイロットは風に対する熟練度はそれこそ天と地ほど差があると言っても過言ではないでしょう。

 消防との連携を強めて風の情報を密に得るということは、素人パイロットには重要でしょうが、プロのドクターヘリパイロットはそんなことしないと墜落するなら何回でも墜落することでしょう。

 

 
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bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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