匂いとドクターヘリ、、、
広島の土石流被害に曝され、九死に一生を得た被害住民の方たちの多くの方が、焼けるような匂いを感じたと証言されているようです。
激しい土石流が急斜面を猛スピードで駆け下りるとき、土石流の中の流木や大きな石が激しくぶつかり、こすれあって高熱を発生し、焦げ臭い匂いが広い範囲に充満するようです。
土石流が発生するときには、まず流れる水が土で大きくにごり始め、土石流が動き出すと地鳴りや大きい音がし、そして地響きや焼けるような匂いが漂うようです。
このように、さまざまな予兆や変動の中で匂いと言う要素もかなり、危険予知のひとつの方法として有効であると想像し、同じようにヘリコプターにも起こるさまざまな匂いを経験して来ましたので、今日は少し取り上げてみます。
私がヘリコプターにかかわる匂いで、九死に一生を得たのは204Bのエンジンのコンプレッサーのベアリングが壊れ、通過するエンジンオイルの冷却が間に合わなくなって、沸騰してしまって、潤滑が出来なくなったときでした。
この件は以前にもブログに取り上げたのですが、まずエンジンオイル温度計が徐々に上がりだし、2分ほどでレッドマークの限界を超えてしまい、不時着しようとエンジンパワーを最小限に絞って、神戸へリポートへ向かって最大速度で降下していきました。
一度パワーを大きく絞った降下で一旦オイル温度は制限内ぎりぎりまで下がったのですが、着陸に備えてパワーを少し足したとたん、今度は計器が振り切れてしまいました。
記憶がはっきりはしないのですが、いつのころからか、機内はオイルが焼けるような匂いが徐々に立ち込め、計器が振り切ったときには、これはオイルが燃えていると思うほどの匂いに囲まれていました。
もう少し早くからこの異常な匂いに気が着いていれば、より安全に余裕を持って不時着操作を出来たかもしれません。
ドクターヘリの場合はこのような機体のエンジンやエアコンやバッテリー、配線系統や発電機の過熱などの異臭のほか、医療用航空機であるが故の異臭もあり、このような例も何回か経験しました。
治療処置に使用する消毒薬のにおいや、患者さんの嘔吐や失禁などの匂いのほか、農薬自殺の場合の強い農薬の臭気、などを体験することとなりました。
若いころ、多くの種類の農薬野撒布飛行をずいぶんと経験していたおかげで、その匂いの懐かしく感じてしまったり、場合によっては農薬の種類を言い当てたことまでありました。
エアコンである程度、外気とは遮断されているので、機内にこもった匂いはかなり強く、このような経験はドクターヘリならではとなりました。
土石流の異常な臭気からドクターヘリの臭気まで、話はずいぶん飛びましたが、ヘリコプターのパイロットにとって臭気も重要な情報のひとつであり、さまざまなことを知っているほうがより良いような気がします。
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