ヘリパイロット 経験と素質 どちらが大切?


 
 ドクターヘリのパイロットの最低条件、飛行経験2000時間と言うものがあります。
 
 2000時間の飛行経験がないとドクターヘリに乗れないと言うことが、厚生労働省の補助金事業としてのドクターヘリの備えるべき多くの条件の中で決められています。
 
 この取り決めと言うか具備するべき条件と言うのですが、ドクターヘリが含まれる航空法上の回転翼航空機の運送事業という一つの飛行の形態で、パイロットの備えるべき飛行経験時間は確か500時間でしたので、その4倍もの経験を要求しています。
 
 何らかの取り決めで、法的規定の4倍もの、2000時間の飛行経験を要求する飛行形態はほかに見当たらないのですが、いわゆる仲間内と言うか、業界のおきてまでは行かないですが、ほぼ合意事項として、たとえば防災ヘリは、3000時間とか5000時間に加えて、胴体下に物を吊って飛ぶ物資輸送の経験が少なくともかなりないと従事させないと言うような暗黙の了解事項があったようです。
 
 これはホイストと言う人を吊り上げる道具を使うことは民間にはなく、それと殆ど同じようなものが物資輸送のつり下げだったからで、しかも物資輸送は何トンもの重いものを吊り下げるので、200キロ程度の人を吊るよりかなり難しいと思われたからです。
 
 防災ヘリの数が増えるにしたがって、適度な経験を十分積んだパイロットはどこにもいなくなって、もともと強制的な条件でなかったパイロットの経験値はどんどんデフレに陥り、最終的には2000時間以下、物を吊った経験がまったくないものまで、防災ヘリパイロットとして採用されるにいたったようです。
 
 
 そして何が起こったかというと、技術的、技量的に人を吊れないパイロットが、飛ぶようになり、十分ホバリングを安定させて、安全に救助できないと言う非常に困った事例があちこちで出てきたようです。
 
 訓練すればいいではないかと言う、ごもっともな意見が出るのですが現実的には、素質や能力の問題でいくら訓練しても出来ないものは出来ないと言う大変困ったことが起こりえます。
 
 そうなったときどうするかと言えば、止めさせるか、だましだまし使うかの二つに一つしかありません。
 
 話をドクターヘリに戻すと、このような防災ヘリのパイロットの必要な操縦技量より、おおむね2段階くらいレベルが下にあるドクターヘリのパイロットの技術的可否の判断は離着陸の技術にかかっているといえるでしょう。
 
 どの県にも最低数百箇所あるドクターヘリの離着陸場は、新米パイロットにとっては大変大きなハードルで、各離着陸場の地形や障害物、そして、毎回変わる風の様子や、一番安全効率的な接地場所の選定、離陸方法を見越した着陸場所の選定など、非常に多くの条件を短時間に判定して、スムースに着陸能力を求められることになります。
 
 さらに、ドクターヘリは緊急等、条件によってはランデブーポイントに指定されていない場所にも着陸を求められることも多く、まずは安全確実に着陸する方法を考える前に、そこに着陸したら墜落するかもしれないと言う危険があるかどうか判定し、ゴーノーを決める必要があります。
 
 このような条件を考えると、2000時間の経験が、、何チャラ言うよりもまず、ヘリパイロットのスタートは広い飛行場か、安全確実なヘリポートの離着陸から始って、いろいろな経験を積むチャンスを十分に生かしてこのような、何があるかわからない場所への離着陸の経験をどの程度つみ、その中でこの能力をどの程度身に着けてきたということが最重要と成ります。
 
 ここで一番の障害は日本のヘリを取り巻く航空法などの規定では、原則的にヘリは安全を保障された十分の広さがあり、すべての条件が安全確実で事前に確認された場所で申請の上許可された場所にしか着陸してはならないということになっていて、パイロットが着陸の安全など心配しなくても絶対大丈夫と言う制度になっていると言うことです。
 
 と言うことは安全性を判断して狭いところに着陸するという能力技量が、航空法上は邪道で、そんなことはするなと言うことになっています。
 
 そんなところに着陸することはまかりならんということになっています。 お前らは外国のヘリパイロットに比べたら格段に下手だから、、、、余計なことはするな、、、
 
 しかし規定でこのような能力を判定するのに、飛行時間を指定して御当人の能力を推定するしかなく、足りなければ訓練すればよいと言うものですが、残念なことに訓練する場所はほぼ皆無と言う現実を見るとき、将来のドクターヘリパイロットが、吊り上げ出来ない防災ヘリパイロットと同じように、ランデブーポイントに着陸できないパイロットとして繁殖してきそうです。
 
 現実に今飛んでいるパイロットで着陸するとき、2周以上回るパイロットや、ヘリポートの真ん中に着陸できないパイロットは少し要注意と言うことになるかもしれません。
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bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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