右旋回か左旋回か、、、、、
昨日 読者の方から左旋回しているヘリがあったという書き込みで、右旋回のほうが良く見えるのではという、なかなか目の付け所が鋭いご意見をいただきました。
言われるとおり、殆どのヘリコプターは機長席が右側にありますので、右上下前方一番良く見えますので、右側に操縦席があるヘリは、パイロットから一番良く見える方向へ常に移動していくことが一番安全であると言えます。
校庭や広場、あるいはもっと狭いところにも常にも着陸する必要のあるドクターヘリが、一番に着陸の安全を優先するには、地形の如何にかかわらず、直線進入の距離はなるべく短く取って、パイロットが着陸地帯の安全性を自らの目で十分確かめるには、視野、視角を出来るだけ変化させながら、全般の様子を良く見る必要があります。
長い直線進入がなぜいけないかというと、視野 視角の変化が少なくて、線状の障害物などを見落とす可能性があるからです。
さらに左旋回で入ると、左前方、特に下方の視界が計器版や機体のノーズ、隣に座った整備士などによって大きく制限を受け、どうしても直線進入を長く取る必要があり、時間がかかる上、安全性の確認にも手間取ると言うことになりがちです。
右旋回が有利なのは視界の関係だけではなく、米国方式や最近ではEC135などのように、ヨーロッパ製のヘリも最近はローター回転が反時計回りになっていて、ローターのトルクを打ち消すためテールローターに必要な馬力は右旋回がホバリングから上昇降下でも2%から5%有利となっています。
右旋回なら馬力が常に少なくてすみ、生コンなど重量物を吊って上昇するときには常に右旋回しながら、なおかつ稜線の上昇風を掴んで上がっていくような方法でやります。
2%や5%の差など誤差の範囲だと軽く受け止める向きもありますが、1日100回1年続ければ数万回、機体は常に無理をせず、馬力制限に余裕を持って作業の効率を維持しながら、安全性も大きく取れ、なおかつ操縦操作の限界点を会得すると言う、プロならではの世界があります。
目撃された左旋回のパイロットが何を意図して左旋回をしていたのか、よくわかりませんが、私自身の経験では10回に1回程度しか左旋回はしなかったように意識して飛んでいました。
離陸のホバリングは足が地面を切ったら、ごく緩やかな右ホバリングターンで上昇し、加速は直線ですが転移揚力を獲得したら、則、ごく緩やかな右旋回に入れることにしていました。
また着陸は必ず右旋回で着陸地点の偵察をしながら、最終直線進入は成るべく短くし、そうすることによって進入時の接近率も判定しやすくなり、長時間の低速進入による危険性や騒音被害も低下せせることが出来ます。
最終進入の最後の段階で右旋回しながら、右下前方に着陸移転を見ながら入ってくることが、着陸地帯の周りの電線など障害物や、地上の砂塵の予想、救急車その他車両の配置状況、隊員その他、人の動きや待機状況など必要な情報が一番取りやすく、直線進入が長いと死角になる部分が最後まで見えなかったりしますし、左旋回で入ると、なおさらによく見えないということになります。
ヘリが線を切ったり、障害物にローターをぶつけたり多くの事故を起こしていますが、その第一原因は安全性が十分出来ない方向へ飛ぶ、動くと言うことが原因で、それを防ぐには常にヘリを自分が一番よく見やすい方向へと動かすことであると言えるでしょう、
さらに良いことにはその方向へ動かせば、必要な馬力はより少なくてすむと言う特性があるのに、左旋回をするパイロットの気持ちがわかりません。
もちろん基本操縦訓練ではこのようなことはまったく教えることはありません。
スポンサーサイト