ヘリコプターの操縦 ホバリング 上級編、、

 

 
 
 ヘリコプターの操縦を習う、まったく初めての訓練では、パワーコントロールを教官に預けて、前後左右方向の操縦だけに専念しても、100メートル四方の広さをのたうち回るほど、情けない結果に、この先、本当にヘリを操縦できるようになるのかと、大いに自尊心を失ったものです。
 
 今の時代では100メートル四方も、のた打ち回るほどの広い場所で、教官が手助けせずに、あばれるに負かしてもらえるような、広い訓練場所は自衛隊以外にはないかもしれません。
 
 5時間も操縦すると短時間ならほぼ50センチ以内には存在できるようにになってきて、そのときにはピッチレバーと言う、エンジンのパワーをコントロールして、機体の上下方向のコントロールも任されるようになり、そして、ホバリングでほぼ一定の場所にとどまれると、上下方向を操縦して、垂直に着陸する操作へと進みます。
 
 ここで新米パイロットはヘリコプターの操縦上の大原則、ドリフトとトルクを初めて体験し、この現象に対して、一生の間、無意識にまたあるときは大いに意識して修正操作を行いながら、正確なホバリングに勤めると言うことになります。
 
 ピッチレバーを上げるとき、エンジンからローターへ供給されるパワーの増加にしたがって、ヘリはローターのマストの軸を中心にまわされようとしますので、ラダー(方向舵)を踏み込んでテールローターのピッチ角を増し、トルクに打ち勝つだけ、テールローターの揚力を増して、機種方向を保つ操作をします。
 
 自分がホバリングして止まる高度になるように、上げたピッチレバーを当てるようにやや下げてやると、高度の上昇は止まりホバリング状態になります。
 
 当然ながら踏み込んでいた、ラダーも当て舵を擦るようにやや踏み込みを戻すことになります。
 
 これで上下方向と、ヘリの向き、ヘディングは完璧ですが、ここでさらにもうひとつ微妙な操舵がかかわって来ます。
 
 それが次に説明するドリフトと言う現象です。
 
 ヘリを上下動させる間、前後左右方向を操縦するサイクリックコントロール(操縦かん)が完全に中立なら、前後左右方向は動かないはずですが、左右方向が微妙にずれていくことに、細かい操縦が出来るようになると気がつきます。
 
 テールローターの揚力の強弱の変化が機種方向を操縦しているのですが、この揚力が曲者で、ヘリを横方向へ移動させてしまうと言うこ効果があり、これをはじめから一定量、見込んでローターの回転面を傾けてあるヘリもあり、パワーコントロールによってテールローターの揚力を変化させた分だけ、操縦かんを微妙に左右に操作してやらないと横方向へずれることになります。
 
 この微妙は操作をピッチレバー(上下の動き)の動きに合わせて、操縦かんとラダーを操作しないと、まっすぐに上下動が出来ないことになります。
 
 この一連の操作は上級の操作でもなんでもなく、これが出来ないと、ホバリングも垂直離着陸もまったく出来ないことになります。
 
 しかも修正操作は機種方向や横位置が、ずれだす前に修正舵を必要な量だけ打つ必要があり、遅れればずれが発生し、舵が多ければおつりが来て、逆方向へ打ち直しが必要で、いつまでたっても静止することはありません。この状態を一般に無駄舵と呼びます。
 
 このような修正操作は、ヘリの上下動だけではなく、普通に変化する風も影響を受けてヘリが動こうとしますので、まったく無風の場合以外は常に必要最小限の修正操舵が必要と言うことになります。
 
 もうひとつ大事な要点は、操舵する場合の着眼点で、操縦系統には必ず微妙なガタがあって、それがまた安定を保つひとつの構造となっているのですが、自分が使う舵が、使う時点と言うか常と言うか、このガタのどちらかの方向へ当たった状態にあるかを認識する必要があります。
 
 操縦系統の一定のガタのどちらに今の状態があるのかまで、常に認識していないと、ホバリングの修正の舵で使用する量が正確にわからなないといつもオーバーコントロールになって、場所は決まっているけれどもヘリはふらついて止まっていると言う状態になります。
 
 そのような操縦ではいつも操縦操作や修正舵が大きくなりがちで、操縦かんがいつも動いている状態となり、アルプスで岩にぶつけて墜落したときのように、意識の集中点がホバリングではなく他の場所、たとえば降下する隊員などに気が取られて、操縦がおろそかになったときにヘリが急に大きく動いてしまう危険があります。
 
 操縦かんのガタのどちらかに当てることを意識するような、静的なコントロールを心がけていると、他の所に気が取られて操縦が一時おろそかになったとしても、いきなり大きく動いて岩に激突と言う事態も起こりにくくなります。
 
 また逆に修正操舵が少なくてすむと言うことは他の場所への注意分配の余裕も出来、二重に安定性が増すことになります。
 
 ホバリング操縦上級編は、修正舵は動き出してから打つのではなく、動こうとする状況を読んで、しかも必要最小限だけ使用し、おつりが来て再修正するようなオーバーコントロールは極力避けると言う事に尽きると思います。
 
 でないと、救助隊員はうかうかスリングで降りていけませんし、吊り下げた荷物はどこへ行くかわかりません。
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bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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