航空機と傾斜地、、、
最近 ドクターヘリは傾斜地に着陸しないという書き込みをいただきましたので今日は航空機と傾斜地という題で少し書いてみます。
まずはじめに一般の航空機が使う滑走路は普通でも2000メートル 長いのになると4000メートル近くもあって、そもそも真平らに作ることは地盤を固める作業などから中々困難で、あちこちの滑走路はかすかに傾斜しているのが実情で、航空路図誌という情報誌に傾斜の度合いが表示されています。
場合によっては進入中に傾斜がわかるほどのところもあって、計器進入のパス角に乗っていると、滑走路が傾斜しているのではなく自分のパス角が間違っているのかと思うほど傾いているところもありますが、接地してしまえばまったく平らに感じてしまうので、人間の感覚ほど当てにならないものはありません。
また小さな傾斜であっても真ん中が低く、滑走路の両端が高くなっているようなところは傾斜が良くわかるということはあるようです。
福岡県の芦屋基地の滑走路は、実際の高低差は忘れましたが相当に山側が高く海側が低くはなっています。
ほぼまっすぐに傾斜していて、傾いていると知らなければ見た目ではわからないほどまっすぐに見えますが、着陸距離には確か影響があるデータがあったように思います。
着陸進入中や離陸時に良く見れば、微妙な傾斜がわかるということはありますが、少し上空から見下ろした場合はまったくわかりません。
このように上空からの見え方がヘリの場合の傾斜地での着陸には非常に厄介なことで、通常5度程度下手をすると10度くらいも傾いていても、周りの地形地物の影響などでまったくわからないことが普通に起こります。
着陸寸前にホバリングしてみて おー傾いてるぞ、、というようなこともしばしばあります。
そしてヘリには傾斜の限度の規制があって、左右前後でその制限値が2度か3度違い、EC135のようなローターが左回りのヘリの場合は左上がり、前上がりが普通、より強いといえます。
限度ぎりぎりの傾斜の場合、出来れば、風向を無視して傾斜に強い方向へホバリングターンをして着陸することになります。
ただし 規定上は前後左右それぞれ何度までと制限角度は決まってはいますが、残念ながら自分が今着陸しようとしている傾斜地が何度の角度があるかなどの情報はまずないことが普通です。
そうなると傾斜地には着陸しないという取り決めで運航することも安全サイドには非常に有効といえることはいえますが、そもそも平らであるかどうかなども計測すらしたことはないでしょうし、現場へ直接着陸するという場面ではパイロット自身が傾斜の具合や場合によっては地盤の強さなども判断する能力が必要となります。
このような状況で実際にはヘリが横転したり、大きく傾いてしまったりした事故例はかなり発生していますし、現場に着陸しない傾斜地には着陸しないという、強力な運航規制を実行するならとにかく、ヘリコプターが飛行場以外で離着陸する場合は避けて通れないリスクであることはいえるでしょう。
飛行機でさえ、芦屋基地では無風の状態で滑走路30へ傾斜地を下る場合は中々止まりつらくて、オフランウエーした同期生が複数いました。
ましてヘリが真平らな着陸帯しか降りないというようなことは机上の空論でしょう。
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春 爛漫 桜満開、、
今日はこの3月の最後の週末で気の早い桜も自宅付近の奈良で満開となっています。
この時期は人生の節目で若い人はには卒業あり入学あり、社会人には入社 転勤 そして高齢者には定年退職とそれぞれの節目を迎えておられることでしょう。
私が勤務していたドクターヘリの拠点病院でも2名のドクターが新天地へ向けて転進されるようです。
いずれも2,3年ドクターヘリに乗って厳しい現場へ飛んで、多くの症例に接してフライトドクターとしての経験を見事に身に付けての転進で、今後の大活躍を期待します。
人が入れ替わるこの時期にヘリコプターパイロットの育成、養成に新しい試みが大手、朝日航洋で始まるという情報をいただきました。
この試みは自社要請のパイロットを育成する目的で、新規に飛行学校の学生から選抜した者を審査して訓練費用の80%を負担して、一人前になったら8年間の勤務で返済義務を帳消しにするという制度だそうです。
制度としては自社に必要な出来のいいパイロットの卵を囲い込んで育て上げて有利な業務展開をしようとする目的ですが、果たしてうまくいくかどうかかなりの不安要素もありそうです。
お金を入れ込んでライセンスを取らしたけれども使い物にならなかった場合返済義務はどうするか、その場合他社や県警、消防が使うといった場合はどうするかなど、難しい面もありますが、試みとしては初めてで画期的なものとなりそうです。
戦後民間のヘリのパイロットは農薬散布ヘリのパイロットとして公的費用で養成し各会社に送り込んでいました。最終時は航空大学校で別科としてヘリパイロットを養成しましたが、行政改革でなくなってしまいました。
そのため今はアメリカの飛行学校で自家用ライセンスを取り日本の飛行学校で事業用操縦士の資格をすべて自己負担で取る制度になってしまい、門戸が大きく広がってしまい、養成されたパイロットは厳しい一貫教育を受けないので、初心者ライセンサーはピンきりという状態になってしまっているようです。
ですからこの制度は入り口から審査を繰り返し、ライセンスを取るまでの間、適宜に篩にかけてレベルを保とうとする試みでしょうか。
ただこの程度の制度では日本のヘリパイロットの需要には遠く及ばない状態です。
何しろ日本の民間の航空局の免許で飛ぶヘリのパイロットは、おおむねですが警察70機消防50機、防災50機ドクターヘリ40機 合計200機としてもパイロットはこの2,5倍の500人、そのほかに純民間の報道、物輸、電力、その他500機程度はあります。このパイロットは機数の1.5倍で700人程度 そうすると1000人から1200人従事していますので、一人当たり20代から定年まで30年勤務するとして、毎年、定年者が40人程度出ます。
そうすると新人の育成は損耗を見て60人程度は養成する必要があるでしょう。 10人程度は自衛隊OBが応援で途中入社してくれたとしても、毎年50人は育てる必要がありそうです。
これは最低必要な民間の事業飛行、報道関係や電力関係のフライトなども含めてほぼ公的な目的で飛ぶへりのパイロットはこの程度の数は公的な機関を作って厳しく育成して、社会の要請に十分こたえることが必要でしょう。
ヘリコプターのパイロットはその育成過程において定期航空のような副操縦士業務がないため、いきなり機長として飛ぶ 厳しさがあります。
そのような育成環境のなか、どのような経験を積んできたかわからないパイロットが、私は2000時間の経験がありますからドクターヘリに乗る資格がありますと飛び出すと、ドクターナースがいっせいに乗務を拒否するという最悪の事態が待っているような気がするのですがいかがでしょうか。
春の移動の季節、皆さんがうまく次の段階へ移行できるように、祈っています。
孫たちと春休みの行楽 USJ、、、
関西人でありながら、東京ディズニーランドは何回も行っているのに恥ずかしながらはじめてユニバーサルスタジオジャパンへ、春休みの行楽で 孫たちに誘われて行ってきました。
春休み真っ盛りで平日とはいいながら結構な人出で、長時間の待ち時間でしたが4つのアトラクションを見ることができました。
人出は多く、見た目は日本人と変わらなくても、外国語が飛び交う雰囲気で国際化を実感してきました。
アトラクションは名の通り完全なアメリカ文化で、それぞれ良く出来たものでまったく飽きることなく見ることが出来ましたが、帰り道で思うに、われわれが支払った入場料その他、年間数十億円以上のお金がアメリカのユニバーサルスタジオの著作権料として持っていかれるのだろうと思いました。
いわゆるテレビやパソコンや自動車と違い、映画の文化そのものが外貨を稼ぐ手段として、日本はディズニーとUSJに多額の金額を支払いながら、先の見れない某新聞や、民主党は、麻生元総理が言い出した、日本が世界に誇るアニメ文化の発展をつぶした先見性のなさが悔やまれました。
いまや世界中でドラえもんや巨人星、北斗の拳などが大人気だそうですので、自動車の外貨獲得額を超える可能性もまったくないとは言い切れなかったことでしょうが、新聞や日本の知識人は漫画なんかという態度で一向に評価しなかったのに世界は評価をしたということでしょう。
また日本は中東や東南アジアオーストラリアなどの資源を土下座しながら高い値段で譲っていただいているという態度ですが、実はいずれの資源も世界最先端の日本の重機や掘削技術がなければまったく生産できないというような体制になってきているそうです。
中国や韓国とつまらない紛争の相手をするようなことにはまったく意に介するようなことはせず、日本は世界を相手に勝負するべき場面がいっぱいあるというものです。
USJのアメリカ文化に接して、不味い、七面鳥のモモ肉をかじりながらそんなことを考えていました。
すばらしいヘリポート 松戸西総合病院、、
千葉県の松戸市にある松戸西総合病院の屋上へリポートは今までにない、最高の屋上へリポートが整備されました。
この屋上のヘリポート自体は普通の屋上ヘリポートですが、隣接して設備された、いわゆる空港の管制塔のような、監視棟というか待機室は今までの屋上へリポートにはまったくない設備で、このヘリポートを待機場所としてドクターヘリの運航を行うには、クルーのすばらしい待機場所となります。
私が以前のブログで何回も取り上げていましたように、5分以内に離陸するドクターヘリのパイロットは離陸前に最終的に目視によって周りの雲や風の様子を判断して離陸の最終決断をします。
そのような重要な付近の天候の様子を確認する必要があるのに、窓のない穴倉のようなところにいては、いきなり屋上に上がってさあお天気はどうだ などとのんびり見ているわけには行きません。
そしてCS(運航管理者)も 雲や視程 風の様子を直接観察しながら離着陸するパイロットにアドバイスをすることができるというものです。
もちろんコンピューターによる各地域の気象情報や消防などから入る情報も重要ではありますが、一番重要な自分の周りの直接見て得る気象情報が、穴倉の部屋にいては常時手に入りませんし、かといって飛行要請が入って、いきなり屋上に上がってゆっくり見回してということも許されません。
この松戸西総合病院の屋上へリポートはドクターヘリパイロットにとっては感動物のすばらしいできなのですが、ドクターヘリが始まって以来10年も過ぎたというのにやっとまともなヘリポートができたということは、喜ぶべきことなのか、情けないというべきなのでしょうか。
ドクターヘリの事業そのものに、運航するものの意見、パイロットの要望などがまったく取り入れられていなかったということの証明でもあるのですが、まあ 今後に期待したいものです。
ただただ 残念なことにはこの松戸西総合病院はドクターヘリ拠点病院ではなく、ドクターヘリのクルーが待機しませんし、急な要請で離陸していくわけでもありません。
またCS(運航管理者)もいないのでこのような管制塔のような待機室もほとんど有効に利用されることもなく、室内は埃にまみれることでしょう。
なんというミスマッチ ほんとうに喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、、、、、
1票格差 違憲判決 ドクターヘリは、、、
裁判所が次々と違憲判決を出し始めた1票の格差問題、果たして前回の選挙が無効となるのでしょうか。
1票格差の問題は地方の票が都会地の票の2,5倍もの重みがあって、、田舎の議員は都会の議員の半分以下の票で、同じひとつの議席を取ってしまうので、平等ではないという考え方です。
地方議員が相対的に多くなるので、政策が都会地と地方のどちらを優先するかという問題になったとき、いつも地方が優先されるということが起きていることが予想され、この判決どおりの区割りで選挙をしなおすと、地方の衰退はさらに進むということが考えられます。
都会地域の議員が自分の選挙区や選挙民だけの利益にとらわれず、大きな視野から全国的にさまざまな課題に取り組むなら問題はありませんが、今の与党野党の勢力分布や、国の課題に取り組む姿勢などを見ているとそううまくことが運ぶとはとても思えません。
もちろん1票の重みが平等で、しかも国のさまざまな課題が都会地方をうまく調和して発展していくのならそれも良いでしょうが、どうやら地方が切り捨てられていくことがさらに進みそうです。
そのような都会地優先の政策と、1票の重みはまったく別の問題でそのようなことは裁判所として考慮する必要はまったくないということで、同じような違憲判決が続出しそうな事態となっています。
裁判所は法律さえ守っていれば良く、国がどうなろうと知ったことではないということでしょうか。
ドクターヘリが地方に配置されてこれから過疎医療に立ち向かうべく努力された多くの方たちの思いもむなしく、都会議員の無駄な政策は切れという意見で廃止されていく運命にあるのでしょうか。
ドクターヘリの問題はごく小さな例ですが、いずれ地方は高齢者が姥捨て山のように捨てられた寂しい地域となってしまうのでしょうか。
1票格差違憲判決問題でふと考えました。
鳥取県警 新型AW109導入へ、、、
読者の方から書き込みで情報をいただいたように、鳥取県警はAW109の最新型を導入したようです。
警視庁は全国の県警などに旧式のベル206や206Lの更新としてアグスタ109をすでに20機導入していて、今回新型のAW109SPグランドニューを鳥取県警と佐賀県警に配備するそうです。
もともと警察関係のヘリはベル社のものばかりで、ベル206 ベル206B 204B ベル222 ベル412と続いていましたが、これらの旧式のヘリを更新する時期になって、まともなヘリはベル社は作れなくなっていました。
それは今沖縄で問題になっていオスプレイの開発に手こずって技術者を取られすぎたため、本業のヘリの開発に手が回らず気がついたらヨーロッパ勢にシアーをほとんど奪われてしまう結果になってしまいました。
最近になってドクターヘリに投入されたベル429というヘリを開発しましたが時すでに遅く、EC135やBK117に市場をおさえられてしまっていました。
このような中でAW109がまさか警察が20機以上も導入していたとは意外でした。
というのは警察の任務に向いたヘリは、無骨で頑丈で、ある程度のキャビンスペースがあり整備性が良く、さらには操縦に癖がなく、不整地にも安心して着陸できるというような条件を優先するものと思っていました。
高速性能や、オートパイロットや計器飛行性能などとは無縁な存在であると思っていましたがなぜか警察はアグスタを選んでいました。
おおむね高速性能とホバリング性能は相反するもので、どちらも良いということはほぼありえないといえるでしょう。
とはいっても性能が良いに越したことはありませんが、いらない装備に金をかけることはあまりほめられたことではありません。
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前にブログに書きましたが、八尾空港で飛ぶテレビ取材のヘリにILS 計器着陸装置が装備されて導入され、それをわざわざ取り下ろすことを願い出たことがありました。
たぶんILSは300万円か500万円でしょうが、20年間の耐用年数の間、伊丹と関空への着陸は許可されないでしょうから実戦で使う機会はまったくありません。
それなのに毎年の耐空検査とデータ取りのテストフライトで岡山空港往復2回5時間 20年ですから合計100時間 まったく使わないもののために飛ぶ必要がありました。
ヘリはその目的のための性能は高い必要はありますが、いらない装備は重くなるだけではなく無駄な経費がかかることは常識です。
もうひとつ気になるのはAW109が車輪タイプではないかということです。
車輪タイプのヘリは通常、傾斜のある着陸地帯、でこぼこ、ぬかるみなどには相当気を使って離着陸する必要があり、下手をすると大変な事故に直結する恐れがあります。
109にはスキッドタイプもあるようですが、車輪タイプはスタイルが良くて抵抗も少なく速度も出てビジネス機やVIP 自家用機には向いていますが、不正地で使う、野戦向きではありません。
もちろんドクターヘリには不向きであるといえるでしょう。
いずれにしても今後20年は使う機体ですから、私の指摘が取り越し苦労で、余計なお世話でしたで済むように願いたいものです。
US2 インドへ輸出か、、、、
時代が変われば、やることも変わるもので、海上自衛隊が装備運航している救難飛行艇、US2がインドへ輸出されることになりそうです。
これは1昨年 武器輸出三原則が緩和され、平和貢献 国際協力に合致するものであれば武器であっても輸出認めるという項目に会うことで実現することとなったようです。
これは海洋に進出してきている中国に対する牽制という面もあるようです。
飛行艇の技術は日本が持つ世界唯一の技術で、新明和工業と海上自衛隊が延々と育てて維持発展させてきた技術で、世界に誇るものです。
世界では他にロシアとカナダが作ってはいますが日本の技術がダントツという状態です。
新明和の工場は大阪湾の神戸市の深江付近にあって、近くをヘリで通過するときには大阪湾でテストフライトをする姿をよく見かけましたが、何しろ生産機数が少ないので最近はずいぶんと見かけなくなっていました。
日本の武器輸出三原則はまったく独りよがりの変な制度で、最新科学技術の結晶である武器の生産輸出を大きく制限することが世界平和に貢献するなど荒唐無稽の話で、実は世界の最新技術からどんどん日本は遅れをとるということでしかありえません。
トヨタのランクルもニッッサンジーゼルもそのまま武器といえば武器で、日清食品のカップめんも低開発国の軍隊が戦争するには必需品であるかもしれません。
朝日航洋が30年ちかくも前、手持ちの富士ベル204 10機すべて処分し、安全な双発機ベル212に入れ替えようと、東南アジアへ売り込むを計画したところ、当時の通産省から待ったがかかりました。
いわくベル204は兵器であって、銃座をつければすぐに武器になるので輸出は認めないということで、仕方なく飛ばし続けて現在も飛んでいます。
片や212は整備性の悪さや搭載能力、維持管理に費用がかかり、さらに発展型の412はブレードの特性で振動が多すぎて、物資輸送に使えないなどの理由で先に引退してしまいました。
戦争で使う道具は鉛筆からカップめん、自動車から戦車、セスナから戦闘機、爆撃機、すべてがなくてはならない武器で、銃弾が出るものだけ輸出を止めてもまったく意味はありません。
武器輸出三原則はまったくお花畑精神の絵空ごとの自己満足でしかありません。
この機の及んで新明和のUS2が友好国へ輸出され、世界平和に貢献するとは遅まきながら喜んでいいのやら遅いと嘆いたらいいのか日本は本当に困った国家です。
民間ヘリ会社 公的ヘリを支え続けることができるか?、、
バブル経済とともに整備されてきた、公的なヘリコプター、防災ヘリ、警察ヘリ、消防ヘリ、そして最後はドクターヘリと続きました。
このヘリを動かす整備士 パイロットの多くは民間のヘリ会社出身者が担っています。
運航自体を民間運航会社が担っているとともに、県警 消防などのように公的機関が自家用機として飛ばすヘリにも、民間へり会社からの転進者が多く占めています。
なぜこのような事になったかというと、昭和30年代に始まった、水田の農薬散布ヘリは最盛期250機にもなり、この要員を国が農林航空協会という外郭団体を作って、ほとんどすべて公費で養成しました。
そしてこの要員がいたからこそ、そのあとに続く全国の高圧送電線網の建設工事にヘリが100機近くも投入され、国家的大事業を成し遂げ、さらには全国150機にもなる報道取材用のヘリを飛ばす要員の増加にも対応できたのです。
その後バブルがはじけ、時代が変わり、農薬散布飛行はほとんどラジコンヘリに市場を奪われて消滅し、高圧送電網は50年後の電気需要にも耐えられるほど過剰設備となり、仕事はなくなってヘリはまったくといっていいほど飛ばなくなってしまいました。
この時期の大量のヘリパイロット、整備士の、過剰が生じ、大手農薬散布会社は廃業するなど人員の余剰時代が到来しましたが、このピンチを救ったのが、公的ヘリの増加でした。
防災ヘリとドクターヘリだけで100機、さらには警察ヘリのパイロット整備士の定年などによる人の入れ替え時期が重なり、余った飛行経験、実務経験が十分なパイロット、整備士がそれを担うことになりました。
このようなヘリ技術者の雇用のミスマッチが公的なヘリの導入運航をスムースにできた大きな要因であることは疑いありませんし、民間運航会社はこれによって新たな仕事が入り、過去の職域からうまく転換できたといえるでしょう。
それは何にもまして飛べる人、飛ばせる人がいたからにほかなりません。
今後はどうなるかということは火を見るよりも明らかで、民間会社が請け負う公的ヘリの運航を担う人材はもはや過去のように、自然と沸いてくることはないでしょう。
するとどうなるかというと、十分な飛行経験や実務経験のある人材は自社の運航を優先することは当然のことでしょうし、そもそも仕事がないのに運航経験が増えることはありませんし、何千時間もそれこそ、自社の費用で訓練ばかりするようなことはありえないでしょう。
今の公的ヘリの運航を支えているのは農薬散布などを実務として飛んでいた要員がその経験の名残を生かして飛んでいるということで、今後はそのようなことはありえません。
そうなると何らかの養成システムを構築するか、自衛隊OBを再訓練して使うか、なにかしら早急に手を打たないことには、どこからか沸いてくる来るパイロット整備士を期待しても無意味でしょう。
民間ヘリ会社があまった人材を使って、あたらしい市場 防災ヘリ、ドクターヘリを開発したことは国家のためには大いに役に立ったのですが、この後十分に技術者を供給できないことは目に見えています。
さあ、これからどうしますか、、、、
神奈川県ドクターヘリ運航中止、、
神奈川県のドクターヘリが運航を停止しているという報道がありました。
昨年度の一度停止しているので神奈川県はこれで2度目ということになり、他の県ではこのような話は聞いたことはありませんので、少し問題が出そうです。
2つの報道は少しニュアンスが違っていますが、両方を総合すると、専用として使っていた機体が整備に入れてみたら尾翼に亀裂が見つかったということでしょう。
そして代替機として使う機体はエンジンが不調ということでしょうか。
報道では詳しいことはわかりませんが、この専用機と代替機が同じ機種であるなら、点検に入った、尾翼の割れた機体から、エンジンを取り下ろして、不調のエンジンを積んだ代替機に載せかえれば1日で飛べるように整備できます。
その代替機を必要なだけ長く使っている間に、予備のエンジンを調達し、さらには割れた尾翼を海外のメーカーに作らして取り付ければ飛行可能となるでしょう。
これが出来ないという事は、機体がMD900と902でお互いにエンジンや尾翼の互換性がないということなのでしょうか。
市場に数が出ていないヘリを使うということはこのようなリスクが高いということで、いずれ近いうちに淘汰されていくこととなるでしょう。
前日の記事のコメント欄に書き込みをしましたが、事故といいトラブルといい、機種選定が如何に大切であるかという教訓が如実に出ています。
これは結果論ですので、選んだときには誰も予想できないことなので、それを攻めることはできませんが、このような結果にどのように対応するかはまた次の結果を生むという一連の連鎖がありますので不具合には誠心誠意対応することしかないでしょう。