一年の終わりに、、、、


 今年もいよいよ後一日になりました。1年とびでの勤務で年越しとなります。

 老いぼれパイロットには残された時間があまりありませんので、最終章に向けて貴重な時間をすごせるというものでしょうか。

 おおむね安全に大きな失敗もなく一年の勤務を終えることが出来そうです。

 この一年 ドクターヘリにとっても様々なニュースがありながらも、ほぼ順調に推移して運航機数も増えて20機に届いたようです。

 ではドクターヘリ今年の10大ニュースを拾って今年最後の記事とします。

1、北海道で帯広と釧路に2機新たに配備され3機体制となる。

2、千葉県にも2機目が配置される。

3、青森県ドクターヘリが八戸で運航開始。

4、群馬県ドクターヘリが群馬日赤で運航開始

5、静岡県のドクターヘリ出動中に鳥と衝突。

6、ドクターヘリ総出動回数1万回突破する。

7、他府県との共同乗り入れや共同運航が始まる。

8、沖縄県ドクターヘリエンジントラブルのためシングルエンジンで那覇空港へ不時着

9、ホンダ航空が栃木県ドクターヘリを受注し新規参入が決まる。

10、次年度以降の運航計画の具体化する 栃木、兵庫、三重、山口、島根 岩手 高知、鹿児島、宮崎など多数の県が続出する。


 順調は配備機数の増加が進む反面、事故に近いインシデントやトラブルの発生が見られるので、いよいよ本格的なドクターヘリ運航体制が国内にも整備されてきたということでしょうか。

 ドクターヘリの運航は、着陸場所の選定や、機体の整備体制や施設面での整備 そして一番大事な運行要員の育成、訓練の充実などいよいよ本格的に問題点に立ち向かう体制の確立が求められる時代に入ったということでしょう。

 安全運航を守っていきたいものです。

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 やはり普及しないか 自家用機、、、


 定期便の減便や廃止の逆風にさらされる地方空港ですが、ただの広っぱになるよりは何でもいいから軽飛行機やヘリコプターでもどんどん飛んできてほしいと空港関係者は思うことでしょう。

 バブルの一時期、高級な自家用ヘリや小型ジョット機など自家用機が増えた時期がありました。

 しかし不景気の風と共に多くのものはなくなってしまい、優良な中古機として世界中に売られていったようです。

 自家用機が飛ぶ条件で飛行場など着陸場所があると言うことが一番の条件なのですが、それがあると飛べるかというとそうは簡単には行かないということが多々あります。

 そもそもその前に、個人使用や法人使用の航空機の自家用運航の存在を認めるのかどうかという大前提があります。

 日本の航空行政は表向きにはあからさまにはしていませんが、このような運航をほぼ認めないという一貫した態度で航空行政を行ってきた実績があります。

 日本国内には100箇所近くの空港があるのですが、その中で自家用機の乗り入れを歓迎する空港はほぼ皆無でしたし、そもそも東京や大阪など大都市圏での自家用機の運航がある程度自由に出来ないことにはいかに地方空港がそれを奨励しても、自家用機は飛ぶことは出来ないでしょう。

 地方で飛べてもそれはただの趣味で空を飛ぶということを満たすだけで、自家用機が持つ実用性とか効率性などはまったく生きることはありません。

 そして地方空港などはほとんど100%レシプロエンジン用のガソリンを給油できるところはありません。需要がないから置かない、置かないから飛んでこないという悪循環にあるようです。

 このような空港の状態から日本の自家用航空機は世界に例を見ないほどの確率でヘリコプターの自家用機ばかり普及した時期があります。

 少し経済的に余裕のある方たちは、固定翼機に見切りをつけて、自己所有のちょっとした広い土地を臨時離着陸場に申請許可を取って、格納庫まで作って自家用機として飛ばしました。

 しかしこれとても、飛んでいく相手先はほぼ空港を使用しますので、行った先での燃料に苦労し、着陸の許可を取ることに苦労したようです。

 つまりは企業なども高価な航空機を自家用機として導入してもその存在を脅かす、非効率性、非実用性がその普及を阻んできたことは確かでしょう。

 今後、自家用航空機に対して、どのような行政がなされるかはわかりませんが、地方空港100箇所には自家用機が飛ぶ条件はありそうなのですが、いかんせん 大都市部にこれを受け入れる条件を設定しない限り、その発展はないように思います。

 さてどうなるのでしょうか。

韓国と日本の航空界、、、


 朝鮮は1910年 日韓併合によって建前上は日本となり、朝鮮の方は日本人となったので、過去の大統領には日本の士官学校を出たかたもおられたり、今の 李 明博 大統領は大阪の平野区に生まれ3歳まで育ったそうです。

 そして、在日の方は朝鮮半島出身者で日本に在住したかたと、日本で生まれた数を入れて100万人近くにも達するそうです。

 このようなことは様々な不幸な政治問題や人権問題等に発展して、日韓の間に刺さったとげのような状態があることは非常に不幸なことですが、今日はこのような事象の不幸なことを取り上げることではありません。

 私は23歳でAヘリコプターに入社して数ヶ月後、韓国人の退役大尉のパイロットの方40代半ばではなかったかと思いますが、訓練に来られました。

 当時Aヘリコプターはインドネシアに子会社を作り、パイロット整備士を派遣するのに希望者が少なくて困っていたようです。

 そこで韓国人のパイロット整備士に目をつけ、ベル206Bの訓練を施して、インドネシアに派遣することと決め日本に呼んだようでした。

 同じ訓練生の気安さから、親しく話す機会があって、初めはつたない英語で話しかけたのですが、返ってきた言葉はなんと流暢な日本語でした。

 それもそのはず、高校までは日本にいたとの事、そういえばわが母校の隣にも朝鮮高校がありました。

 高校まで日本で育ちその後祖国へ帰って士官学校を出てパイロットの道へ進んだそうでした。

 その後はうわさによると、2年ほどのインドネシアでの勤務の後は、Aヘリが飛ばす日韓大陸棚の石油資源探査のフライトのコーディネイトをした後は大韓航空の定期便のパイロットとして日本への路線も飛んでいるという話でした。

 今は国際ハブ空港競争で成田や関西は韓国のインチョン空港にはるか負けてしまっている状態らしいですから、韓国の航空社会は大韓航空やアシアナ航空が飛ばす航空機や拠点空港 そして運航要員始め人的資源の充足などをうまく成し遂げて日本以上に発展したということなのでしょう。

このような要員の中には士官学校出身者で当時Aヘリへ来ておられた方を初め、日本に在住した方たちが数多くおられることは間違いないでしょう。

 その当時日本人も数多くアメリカへ自費訓練に留学し、定期会社やヘリ会社にパイロットとして採用された方も数多いのですが、在日で同じようにライセンスを取って韓国へ帰ってパイロットの道へ進んだ方もかなりおられるようです。

 日本各地へ飛んで来る韓国の定期便のパイロットのうち2.3割の方は流暢な日本語を話すのではないかと思います。

 また在日の方のうち、日本国籍を取った方たちは、まったく日本人として民間会社はもろより、公務員パイロットとして自衛隊始め警察、保安庁などのパイロットとして、もともとの日本人以上の活躍をされているかも知れません。

 プサンの射撃場で大やけどを負った重症患者の方が病院からプサン空港へ搬送され、定期便に乗り換えて福岡空港へ着き、そして長崎ドクターヘリに乗り換えて、大村の長崎医療センターまで飛んだそうですが、ドクターヘリで直接搬送すれば1時間20分で搬送できたのですが、日韓のこのような密接な関係の中、ドクターヘリくらい直接飛ばせないものなのでしょうか。

 もういい加減止めたら?ドクターヘリパイロット経験2000時間以上、、、、、




 上の写真の確認証は公的資金によって飛行時間30時間の農薬散布の低空飛行や狭いところへの離着陸の訓練を受け審査の合格した証です。



 ドクターヘリが飛び出しておおむね10年が過ぎて全国で20機飛んでいます。そして近い将来には50機程度で全国をカバーすることになるでしょう。

 いまもドクターヘリのパイロットは新規に参入するに当たって、ヘリコプターの総飛行時間が2000時間以上、そして当該機種の飛行時間が50時間以上と決められています。

 これはもちろん法的な縛りではなく、厚生省が補助金事業として飛ばすドクターヘリのパイロットの基準として業界と取り決めたものだと思います。

 ドクターヘリのパイロットとして飛ぶにあたって、ヘリコプターを動かす基本的な技量と、山間部等を含む、一般的な飛行経験、そして様々な知識や航空の常識的なことが、この程度の飛行時間経験があればほぼ満たしているであろうということで業界代表者と厚生省担当者が取り決めたものなのでしょう。

 事業が始まって10年経過して、飛行実績も1万回ははるかに超え、そして担当するパイロットの数も50人程度には増えていることでしょう。

 このように実績が上がってくるに従って、ドクターヘリが飛び出した当初のこのようなパイロットに求めた経験経歴というものも実態に合わせて、変えるべき時期に来ていることと思います。

 そもそもドクターヘリが飛び出した当初はどの程度の技量や知識、経験が必要であるか、またどのような訓練をして望むべきかなどははっきりとはわからない状態であったでしょう。

 いまこのように20機も飛ぶようになると、ドクターヘリのパイロットはどうあるべきかはかなりのことはわかってきています。

 いままでの1万回以上の実績の中で、一番確実に求められる技術は、山間部の狭い、また障害物で囲まれた場所での離着陸、また学校など4方向が校舎などで囲まれた場所への確実な離着陸でしょう。

 またこのような場所への安全な離着陸には、安全な低空飛行による進入離脱が必須です。

 また校庭などは砂塵が舞い上がる中での離着陸となるでしょうし、今後は寒冷地方での運航も多く始まりそうですので同じように雪中での離着陸も習熟する必要がありそうです。

 このようにドクターヘリが飛ぶに際して必要なパイロットとしても経験技術は、総飛行時間2000時間や当該機種50時間とはまったく関係のないような内容が求められていいるといえるでしょう。

 5000時間のパイロットでもまったくこのような経験がない者や、1500時間でも結構経験がある者がいるでしょう。

 では2000時間と50時間の縛りはなくすとしても何らかそれに変わるものは必要でしょうか。

 その答えはやはり、なんと言っても確実な訓練でしょう。

 たとえば自分の担当する地域の20箇所以上のランデブーポイントへの離着陸訓練と20時間の担当の地域の飛行経験を義務づけること、雪中と砂塵中の離着陸訓練を義務付けることなど、しかるべき運航開始前の履修項目の訓練の実施と報告をすることと決めてはいかがでしょうか。

 このような訓練を確実に実施することによって必ずしも2000時間や50時間の縛りにこだわることは必要ではなくなるでしょうし、訓練自体の効果というものが直接に生きるというものです。

 さらに言えばこのような訓練に対して、航空医療学会がドクターヘリに搭乗する医療関係者の訓練に補助金を出す制度もあるようですので、運航要員への補助もぜひ検討していただきたいものです。

 あるいはさらに進んで厚生省がこのような飛行訓練に積極的に支援して、要員の育成と安全性向上、また経験 技量の標準化に動いてほしいものです。

 このような訓練をするには今の場外離着陸許認可制度では国土交通省は許可を出せない法制度になっていますのでこの点の改正も必要でしょう。

 もうひとつすすんでこのような準備訓練を行ったパイロットの審査は自社の審査ではなく、業界横断的な組織の審査制度ということも必要でしょう。農薬散布事業ではこのような審査制度があってその検定を通らないと農薬散布飛行は出来ないようになっています。

 航空医療学会が実施するドクターヘリ講習会はこの農薬散布事業の研修制度に習ったものなのですが、肝心のパイロットの技術的な面で訓練は踏襲がなされていません。

 ドクターヘリが安全に飛ぶためのパイロットが担うべき基本的な訓練制度はほとんどゼロでただ2000時間だ50時間だとだけ唱えています。

 空はそれほど甘いものではないでしょう。

 ヘリコプターの速度、、、


 ドクターヘリに使われているヘリはおおむね時速120ノットくらいです。ですからキロメートルでは時速200キロ強で30分で飛んでいけるところは約100キロ圏内となります。

 救命のためには発症から15分以内の救命処置開始が極めて有効といわれていますので、出動まで5分として10分で飛べる範囲が理想なのですがそうなると20マイル40キロ以内が1機あたりのカバーとなります。こうなるとやはり1県には2機くらいが必要になってそのまま配置すると1機あたりの出動回数が半分となって経費対効果が半分になってしまいとても経済的には配置できないということとなるでしょう。

 今後ヘリコプターの性能が上がって速度が向上するかといえばなかなかそうは行かないというほうが可能性が高いのではないかと思います。

 ヘリコプターは速度を上げようとすると、回転するローターの前進側と後ろ側への対空気速度の差が大きくなりすぎて揚力がアンバランスとなることと、前進側の先端速度が音速に近づいて効率が極端に落ちるという特性上、どうしてもヘリコプターの前進速度が限られてしまうという2重の束縛があります。

 通常のヘリコプターでは170ノット程度がほぼ限界ではないでしょうか。170ノットにしても120ノットの5割も早くなりませんので極端に速度性能のみを目標に設計することもあまり意味がないのでしょう。

 足を引き込み式にして、超流線形に設計し、ホバリングの性能をある程度犠牲にしても、民間機ではS76やAB109の150ノットくらいが限度のようです。

 その昔AS350で 東京大阪2時間方2時間15分程度で飛んでいたころ、AB109が導入されて同じ距離を1時間半で飛んだと話題になったものでした。

 1時間半なら、上昇降下の経路に時間のかかる定期便が小一時間かかっていましたので、アグスタはほとんど引けをとらない時間で東京大阪を行き来していました。7時前に出るとお昼過ぎまでには2往復したという話もあったほどです。

 その速度を好む病院ではアグスタを導入しましたが、やはりその流線型が原因の狭いキャビンに根を上げたのか長続きはしなかったようです。

 速度とホバリング性能を両立するために、巡航中のローターの回転を落として、前進翼と後進翼の揚力アンバランスを少なくし、前進翼の効率を高めることが出来るということははるか昔から、マニュアルコントロールのベル47や206 204 などではわかっていて、長距離巡航ではローター回転数を5%落とせば速度が5%速くなり、燃費が5%程度良くなりこのような飛び方をするベテランも多くいました。

 最近になってEC135や三菱MH2000などが巡航中にローター回転を下げたり、ホバリング中にローター回転をあげるような装置を装備するようになっています。

 このような装置は飛行中の騒音値を下げる効果もあるようです。

 いまのシステムでは通常のヘリは120から130ノット程度でそれ以上は望むことは出来ないでしょう。ですから新たに出てきたベル429も速度が従来より速いですよというような売り込みはあまり聞かないようです。

 25万ヒットありがとうございます、、、、、


 ブログをはじめて約2年半、25万ヒットを1昨日記録したようです。これも多くの読者の皆さんがつたない文章、誤字脱字をものともせず愛読いただいたおかげです。

 ドクターヘリで飛び出して半年ほどして、少し余裕が出てきた時期に、自分史をかねてドクターヘリを取り巻く問題や、ヘリコプターの世界を意味もなく書く綴っているうちに、多くの皆さんが読んでいただけることにある意味、快感を見出してはや2年半以上過ぎてしまいました。

 この間 自身のドクターヘリ出動回数も570回を超え、様々な救急現場出動して多くの患者さんたちや消防の救急隊の皆さんたち、また同乗していただく多くの医師、看護師の皆さんと一緒に仕事をさせていただいています。

 救命がどうとか、早期治療の後遺症低減効果や 総医療費の低減などドクターヘリの効果ということが公式に流されていますが、現場へ飛んでいつも思うことは、急病、事故で瀕死の状態にある患者やご家族、そして搬送する救急隊の皆さんが、ドクターヘリの到着でどれほどの安心感を持つかということが、毎回実に感じるということです。

 読者の方の書き込みでドクターヘリがローター音を響かせて飛んで聞く姿を見ると、頼もしく感じるというとことを書いていただいたことがありますが、要請で、現場へいち早くドクターナースの方たちを送り届けるとき、本当にやりがいを感じながら飛べるというものです。

 全国で20機も飛ぶようになり、さらに近い将来には50機程度までは増えそうなドクターヘリですが、数が増えるにしたがって問題点もあぶりだされてきているような感じもあり、現場からの提言もますます必要になるかもしれません。

 今しばらくは拙いブログは続きそうです。今後ともよろしくお願いします。

 

 パイロットからの見え方、、、、、


 民間の飛行機、ヘリはサイドバイサイドといって車と同じように、運転手と助手席が横並びになっています。

 つまりパイロットや運転手は機体車体のセンターに座っていませんので、滑走路やヘリポートのセンターにあわせて飛んだり地上滑走するとき、自分をセンターに合わせると機体は少しずれることになります。

 ヘリも車も大型になるほどパイロット運転手はセンターからずれる距離が大きいので、その分修正しないと機体車体はセンターあいません。

 またヘリはローターの中心が機体の中心となりますので、ヘリポートの真ん中にローターの中心 マストの位置が来るように降りると正確に真ん中に着陸したということになります。

 スリングで荷物を吊るときやホイストで人員を吊るときも、パイロット自身が直上ではなくヘリのセンターがその基準位置となります。

 しかし 進入 アプローチのときはパイロット自身 自分自身がまっすぐにその中心点を狙うのですが、50メートル程度からホバリングに入る時期くらいから今度はヘリコプターの中心が所望の点へ行くように、自分自身がそのずれた分だけ目標をずらして位置を決めて狙っていくことになります。

 タンデムの自衛隊の機体やベル47KH4などは自分の位置がセンターにあるのでこのような最後の修正はいらないでしょう。

 大型の旅客機は操縦したことはありませんがパイロットは機体のセンターから50センチか1メートルずれていますので自分が正確にセンターになるように離着陸したりエプロンにランプインするとノーズギアーはその分センターラインからずれてしまいます。

 もうひとつ少し気を着けないといけないのは、車のセンターメーターというのが最近はやっていますがこのような車で運転していると知らず知らずのうちの運転手はまっすぐ前を見て運転しないでどうしても計器のある方向に曲がった姿勢になりがちです。

 このセンターメーターという形は視認性の向上よりも、海外輸出向けの車もおなじ位置に計器がつけられるということで大幅コストダウンを狙ったのではないかと思います。

 ヘリではAS350やAS355はノーズを流線型にするために細くなっていて、ラダーが機体の進行方向に対してまっすぐでなく、中央へ変位して着いているのでそれを知らないパイロットは気がつかないうちに左方向を向いて飛んでしまうことが多くあります。

 基本的にはタンデムであろうとサイドバイサイドであろうとまっすぐ正しく進行方向へ向いて座り、直上に位置するときだけ着座位置が機体のセンターよりずれた分だけ修正するということでしょう。

 凍結気象状態での飛行、、、、


 民間ヘリコプターはAS332の一部に防氷装置がついているなど一部で、ほとんどの機種は凍結気象状態での飛行は禁止されています。

 ですから通常は凍結気象状態で飛行することはないはずなのですが、天候の急変などでやむを得ず避けれないことあります。

 長いヘリパイロット生活の中で何回か凍結気象状態の中を飛ぶことがありましたが、今ここでブログを書いているということは、何とか無事に乗り切ったということなのでしょう。

 まず初めてこのような体験をしたのはベル47で裏日本地方で送電線パトロールを終えて基地の空港への空輸中でした。

 いま思い返せばこのときが最大の凍結によるピンチだったように思います。強い冬型の緩み始めの天候で周期的にスノーシャワーが通り過ぎる天候で、晴れ間をみて一日の送電線パトロールのノルマを完了しました。

 ここで基地へ帰る空輸だけのときゴーホームデシジョンで誤ったのでしょう。裏日本側から表のほうへの40分のエンルートのうち10分と飛んだところで猛吹雪になってしまい、国道を通る車がすべてライトをつけて走るほどの暗さの猛吹雪でした。

 広い空き地に不時着し、雲の動きを見ていると少しだけ晴れ間が見え、その隙間を縫って上昇して雲の上に出て表日本側へ出ようと試みました。その間猛吹雪の合間を縫って上昇し、風防は前が十分見えないほど凍結してしまいました。

 何とか雲の上に出て、雪雲をとおりすぎて晴れた空域に届きましたので、風防の前方に凍結した雪を落とすために、その地域のパトロールで着陸する場所へ着陸しました。

 エンジンを回したまま、整備士と二人で外へ出て風防の雪を落とし、機体を一巡りしてアット驚きでした。

 機体のそこらじゅうに分厚い透明な氷がへばりついていて、レッグや47特有のテールブームのトラス構造部分には飛行方向前方へ氷の刃のようにとがったものがついていました。

 もう少し長く吹雪の中を飛行していたら、着いた氷の重量で墜落になっていたかもしれませんでした。

 機体全体が雪だるまではなく氷の彫刻のような状態でした。

 この体験がヘリパイロット人生最大の凍結気象状態下でのピンチでした。

 その後も何回かは短時間の凍結を体験しましたが、それはほとんどが軽い凍結で飛行に致命的なものではありませんでした。それにしても簡単に凍結気象状態での飛行は禁止とマニュアルにはごく当然のように書いてありますが、長いパイロット人生なかなかすべて避けて通れないということもあります。

 琵琶湖では豪雪取材中の206Bが機体に着いた雪をエンジンに吸い込んで、フレームアウトし、うまくオートローテーションで不時着水し、うまく脱出したものの岸へ向かって泳ぐうち3名とも溺れて亡くなっています。

 たまたま運が良くて生きながらえていますので、このまま無事に終わりたいものです。

 訓練できないドクターヘリパイロット、、、


 昨日はドクターヘリパイロットとして必要な経験などについて書きました。

 さてこのような要件を満たしたパイロットが新たに始める県へ赴任して、ドクターヘリのパイロットとして業務を始めるにあたって、一般的に考えればあらかじめその地域に出かけていって、実際に着陸場所への離着陸を訓練すると思われるでしょう。

 飛行経験が1万時間以上あるベテランパイロットでもいくらなんでもいきなりぶっつけ本番で飛ぶとは思わないのが普通でしょう。

 まして基準の2000時間ぎりぎりだったり、山間部の飛行経験の少ないパイロットなら全部の着陸地は無理としても相当数の着陸地や狭くて技術的に難易度の高いところはあらかじめ経験しておくことが必要でしょう。

 またその地域を飛んだ経験の少ないパイロットには地域地形に慣熟する訓練を施すべきでしょう。

 このような訓練の制度は運航する各社が責任を持って、操縦士の飛行技術を一定のレベルにして業務に当てることが当然であって、またそれは普通に実施していることが当然であると考えることが普通でしょう。

 ところがこのような訓練は本番を前にしてほとんど実施されていないことが実態であるといえば、皆さんびっくり仰天されるのではないでしょうか。

 それには二つの理由があるのですが、実態はやりたくても出来ないということが一番でしょう。

 ドクターヘリが着陸する場所が各県によっても多少の差はありますが、通常は数百箇所あり、そのうち航空法に元づいて離着陸の許可申請をしても、狭いとか、障害物があって空域が十分取れないため許可が下りないような場所が少なくとも半分以上、県によっては70%以上になるかもしれません。

 ではそのようなところはなぜ着陸することが出来るのかというと、航空機事故や海難時の人命救助などの場合許可を取らなくても良いという航空法の項目が追加になったのです。

 この項目にドクターヘリを含めるという解釈がなされたのですが、ただしこれは救難救助の本番のときだけで、訓練は含まれていません。

 本当に訓練が必要な条件の悪いところへの離着陸訓練は出来ないということが続いています。

 もうひとつの理由は運航会社間の競争です。大手のヘリ会社は農薬散布飛行や物資輸送、そして送電線パトロールなど、狭い場所への離着陸や安全な低空飛行を毎日のように多くのパイロットが飛ばしていますので、ドクターヘリの離着陸や低空飛行程度の技術はわざわざ訓練をする必要はないと認識していますので、このような訓練が出来なくても一向に差支えがないと思っています。

 下手に訓練の許可を与えろと言い出せば、中小のヘリ会社がドクターヘリに参入する素地を与えてしまうのではないかと思っているようです。

 農薬散布飛行や物資輸送 そして送電線パトロール飛行はいずれも公共性の高い内容のフライトで、旧運輸省は農水省や電力会社などに遠慮して許認可の基準を厳正に守ることなく許認可を乱発していますので、過去50年にも渉って、考えられないような狭いところに着陸したり、低空飛行をしたりしてヘリコプターの能力を最大限に利用して社会に貢献してきたといえるでしょう。

 その中で育ったパイロットがドクターヘリを飛ばしているうちは良かったのですが、いよいよ世代交代の時期が到来し、近い将来、このような過酷なフライトを経験していない若いパイロットがドクターヘリに乗るようになって来るでしょう。

 大手ヘリ会社は農薬散布の訓練飛行は空訓練と実務訓練を含めると100時間も教官同乗で飛び1年のうちの一シーズン、4ヶ月も5ヶ月もかけることは普通ですし、物資輸送は3000時間5000時間クラスのパイロットが50時間70時間程度もかけて同乗飛行をやります。そして訓練をやった中から必ず不適合なパイロットがあぶりだされて、永久にそのフライトには従事させないような処置も取っています。

 ドクターヘリのフライトの難易度はそこまでは厳しいものではないとは思いますが、それにしても新人がうまく育っていくような訓練は必ず必要となるでしょう。

 ドクターヘリパイロットの訓練なんか必要ないよと高を括っていられるのも今しばらくの間でしょう。

 ドクターヘリパイロット 必要最小経験時間、、、


 厚生省がドクターヘリに補助金をつけることになって、この事業はいわゆる公的なものになって、一定の安全性を維持することが求められています。

 そこでこの運航を行う事業者や従事者に求められる最低限の要件を定めています。

 ヘリコプターにも双発機であることなどを決めていますが、飛行安全の要となるのはやはりパイロットがどのような経験や技術、知識を持っているかということが一番でしょう。

 飛行に際して十分は準備に時間の取れない、要請から5分で離陸して、未知の着陸場へ確実に飛行でき、着陸場は許可に十分でない狭い、障害物に囲まれた、山間部の場所にも安全確実に離着陸できる技術が必要となります。

 あまりに高い経験を求めるとほとんど誰も飛べません。また航空法や各事業会社の定める運航規定ではおおむね500時間の総飛行経験と当該機種30時間の経験があって審査に合格すると運送事業の機長発令を受けることは出来ますが、ドクターヘリを飛ばすにはかなりのリスクがありそうです。

 そこでこの事業を始めるにあたって、厚生省と運航者が相談して総飛行事件2000時間と当該機種50時間以上の経験者からドクターヘリのパイロットを選定することと決めたようです。

 そしてその規定が今も生きていますので、今後新人がドクターヘリに乗るためにはこれをクリアーすることが必須条件となっていますので、各社はたぶん四苦八苦することとなるでしょう。

 必要最低条件を満たすことにまず苦労するのですが、それでは2000時間を満たしているヘリパイロットがドクターヘリの運航条件下で安全確実なフライトを必ずこなせるかというと、これがまた難しい問題となるでしょう。

 基本的にドクターヘリは山間部の飛行を前提とした、狭い場所への離着陸と、その狭い場所への離着陸のための安全な低空飛行能力が基本となりますので、たとえ総飛行時間が5000時間10000時間あったとしても、空港での離着陸や洋上のフライトを主にしていた経験者は、かなりの訓練が必要となるでしょう。

 このような飛行技術はヘリコプターの機種が変わったとしても、基本的に変わるものではなく、このような山岳部での飛行技術を身につけているパイロットには当該機種の飛行時間は50時間も必要ではなく機長発令時間の30時間もあれば多すぎるくらいです。

 ですから今後ベル429が新たにドクターヘリとして導入されるに当たって、最初から担当するパイロットが無駄に50時間も飛んで経験を着けるなどはまったくの無駄なことです。

 飛行時間の規定もさることながら、一定の地域の全域に渡って日常的にあっちへこっちへ少々の天候の悪いことものともせず、送電線や障害物を越えて山間部を縦横無尽に飛行するためにはその地域にどの程度慣熟しているかどうかが、飛行の安全性や確実性に大きな要素となるでしょう。

 飛行時間は3000時間で山岳地の経験も十分ですが、このたびお世話になる県を飛んだ経験はほとんどありませんといわれるとかなりの不安でしょう。

 パイロットとして飛んだ経験はありませんが、実は地元出身で20歳までいましたということになると、地理 地名 そして地域地形 道路や鉄道などの知識は豊富でしょうからいざヘリで飛ぶ場合は大きな武器になりそうです。

 このようなパイロットが持つ個人的な要件が運航会社にとっては大きな商品力ともなり安全性に対する裏づけともいえるでしょう。

 そしてこのような要素は運航受託契約金額の1000万円2000万円に匹敵する重大な安全価値として評価するべきことなのですが、このようなことが実際に評価の対象や契約の検討事項となっていることは無いようですが実は重大な事柄なのです。

プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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