緊急着陸は無料です(最終版)、、、、、、
全日空機が松山を離陸し、潮岬上空でキャビンプレッシャーが抜けて緊急事態を宣言し、最終目的地羽田まで飛行したことは妥当であったのかということの延長で緊急着陸は無料扱いになるという話を取り上げました。
予想外に定期会社の方からの書き込みをいただき、結構盛り上がりましたので今日はその最終版とします。
あまり詳しいことはわかりませんが、少し自衛隊でキャビンプレッシャーのある機体を飛ばした少ない経験しかないのですが、キャビンプレッシャーのトラブルも様々で、巡航中いきなり急減圧し一面が霧に包まれる本当に重大な緊急事態から、巡航中コーションライトが点灯することを伴って徐々に抜ける場合、そして上昇に伴って与圧が効いてくるべきところが外気圧と同じに気圧が下がってしまう場合などが典型的な例でしょう。
今回の場合は松山から離陸し串本上空付近で発生とニュースでは言っていましたので、上昇中からトラブルがあったのか、あるいは徐々に抜けたのかどちらかではないかと想像します。
急減圧したのなら、機内は一瞬で霧に包まれて、乗客は一挙にパニック状態になってパイロットもまさか羽田まで飛ぼうなどとは思いもしないでしょうから、関空か中部に下りたことでしょう。
25000フィートくらいを飛んでいたでしょうから、急減圧のばあいは直ちに酸素を吸わないと、約1分以内にほとんどの人が意識を失ってしまいます。
これこそ本当にクリチカルエマージンシーで緊急急降下しないと大変なことになります。
どうやら報道によるとこのようなパニックはなかったようですので、どうやら離陸上昇から与圧がうまく働かなかったか、巡航中にコーションライトが着いて比較的徐々に抜けたようです。
このような状態はコーションライトの点灯とたぶん装備されていると思いますが、機内高度計(キャビンアルト)の値と通常の高度計の値を比較することによっても与圧装置が正常かどうかは判定できます。離陸から8000フィートくらいまでは両方の高度計は同じ値を指していますがそれ以上になるとキャビンアルトは一定の値でとまりますので、ここで異常を発見したら松山へ戻るべきでしょう。
さてどこで異常が発見したかは正確にはわかりませんし、急激な緊急降下をしたか、比較的緩やかな降下をしたかもわかりませんが安全な高度になってからどうしたかが興味のある点でした。
そのような一連の緊急操作が運行規定やフライトマニュアルに従って行われたかどうかを疑問に思ったから最終的に緊急着陸は無料だということまで取り上げたのですが。
つまり運行規定で最寄の空港へ着陸することが決められている緊急状態なのにその規定に反して最終目的地の羽田まで飛んだのではないかという疑問を持ったから取り上げたのです。
規定に反して飛行を続け羽田まで飛んだとしたら、その理由は危険を冒して経済性を優先させたとしかほかには理由はないでしょう。
そしてその経済性は前も書きましたように、他の空港に着陸した場合、乗客のケアーにかかる費用、故障機の修理復旧、空輸にかかる費用 さらには緊急着陸に優遇される着陸料無料の規定までありますよということでした。
羽田まで飛んだことは運行規定に違反もしてないし、運行の安全性にもまったく問題もなく、羽田を飛ぶ他の航空機にもそれほどの影響も与えなかったですよという見解は当然表明されることはわかっていました。
私にはこの着陸空港の選択がフライトマニュアルや運行規定に違反していたかどうかを確認する手段はありませんが、航空当局は当然持っているでしょうし、万が一違反していればそれ相当の処置があるでしょう。
着陸料が只かどうか等はぜんぜん問題になる要素ではないのですがそのようなこともあるんですよというだけの話です。
そこまで考えるものはいないしお前は変わったやつだなで終わりなのですが、その前段階の状況は検証して安全運行に対する姿勢の判定には役立つことでしょう。
状況の詳しいことはわかりませんが、自分が機長だったとしても羽田まで飛んだとは思いますが、、、マニュアルで直近の空港と決まっているならば運行管理者は羽田へ来るなと指示するべきでしょう。たとえ1000万円程度が飛んだとしても
許認可 ドクターヘリの夜間飛行、、、、
日没間際の出動要請でやむを得ず日没時間を切りそうになってしまうことがままあります。
それは出動先での患者さんの処置に予想した以上に時間がかかったり、患者さんの容態や受け入れ病院の事情で搬送先病院が変更されたりするとこともあるからです。
どのようなときでも、患者さんのことを第一に飛ぶべきなのですが、航空の規定上のルールというものがあり、日没時間のことは救助救急のための例外規定は決められていませんので、患者さんのことよりもこれらのルールを守ることを優先するように強制されます。
しかし、絶対出来ないかというと、一定の条件を満たせば定期便の航空機が夜間自由に飛んでいるようにドクターヘリも許認可を受けることによって、夜間飛行も自由に出来るという規定上の平等は保障されてはいます。
離着陸場所の夜間照明施設を規定どおり設置すること、パイロットが一定期間のうちに夜間着陸の経験回数を満たしていることこの2つが最低の条件です。
確認は出来てはいませんが、ドクターヘリ運行が運送事業として夜間の運行を認可されている運行会社はいまだないと思います。
過去にヘリコプターの夜間運行が運送事業として認可されたのは、ローカルフライトの夜間の遊覧飛行がほとんどで、2地点間の運送事業が夜間運行も含めて認可になった例は、バブル時期の東亜国内航空のAS365で行った宮崎空港と延岡の間を飛んだ旭化成の社内コミューター便だけだったと思います。
これとても代替に入った阪急航空のBK117で経験飛行時間の比較的少ないパイロットが夜間の降雨中に山に激突して10名の方が亡くなって消滅しています。
夜間 たった2地点間の定期的なフライトでさえこの様ですので、縦横無尽に飛び回るドクターヘリの夜間運行はこの10倍以上の危険性を帯びているといっても過言ではないでしょう。
どのような安全基準を持って許認可の対象として検討し、許可を出すというようなことはいまだ検討の段階にも入っていないのではないでしょうか。
場外へリポートに簡易式の夜間照明をつけた程度で縦横無尽に飛ぶ権利を持つのは民間航空では防災ヘリや県警へり消防ヘリなど自家用運行の範疇に入るヘリのみです。
ドクターやナースは乗客ではなく、運行クルーと認定しそれなりの訓練や経験はつけられますが、不特定多数の患者さんはそうは行かないのでドクターヘリは運行会社が飛ばす限りは今の規定ではドクターヘリは運送事業という範疇に入れざるを得ないので、いい加減な許認可は出せないでしょう。
おもえば救急救助における官庁の主導する民間ヘリの場外離着陸 低空飛行 規制空域内の自由飛行を追加条項で認めてしまって、他の規定を触っていないことは今までにない矛盾をつくり出したともいえるのではないでしょうか。
つまり 救急救助では運行の許認はどうでも自由にやっていいよと言う姿勢なのですが、運航の大元締めは運送事業であるという規制が多い、相反する二つの考え方が今も許認可の底流にありますから、さて夜間運航の許認可申請をドクターヘリが求めた場合にどのような基準で、許可を出すことにするつもりなのでしょうか。
あるいは好き勝手にしなさいということになるのでしょうか。
緊急着陸は無料です(2)、、、、、
前日の記事はどうも言いたいことがうまく伝わっていなかったように思いましたので続編です。
定期便の航空機が緊急事態や天候不良などの場合にどこを着陸地に選ぶかは、一番は安全性でその次が経済的な理由というものが当然入るでしょう。
そのことに関してはなんら異議はないのですが、今回のキャビンプレッシャーが抜けた件では、安全な運行の継続に問題があるのならば、直近で安全な着陸が可能な空港へ着陸するべきでしょうし、安全に問題がないならば当初の目的地へ飛ぶことは一向に差し支えはないでしょう。
767のフライトマニュアルやANAの運行規定を見たことはないので偉そうなことはいえませんが、フライトマニュアルにはたぶん安全に着陸できる空港を超えてさらに遠方の空港へ飛ぶことは推奨しないと書いてあるのではないかと思います。
たぶん関空や中部までは20分で着陸できたでしょうが50分近くもかけて羽田まで飛ぶことは規定上は許容されていたので、関空や中部に着陸した場合の乗客へのケアーにかかる経費、そしてトラぶった機体の復旧にかかる時間や経費も馬鹿になりませんし、それを完全に無視して安全だけのために関空や中部に下りるという選択肢は民間航空会社としてはなかったといわれてもいや違うとは言えないでしょう。
羽田に下りるという選択肢は安全上ほとんど100%問題はなかったことは十分理解は出来ますし、エマーを宣言して超過密空港へ入ってくるということも周りには迷惑をかけるとはいえ、特別の優先権を主張し、それを100%認めた管制をすることもなかったと想像できます。
ですから当然のことなのですが緊急着陸だから着陸料を請求されない、払わないという選択はあってはならないように思っただけなのです。
緊急着陸機に着陸料を請求しないという考え方はたぶんアメリカらしい考え方でこれに日本も倣ったのではないかと思いますが、それは昨日 書き込んでいただいた方が折られるように、緊急事態にある航空機が着陸料金が原因で最適の不時着空港をはずして最悪の事態を招かないようにとの思いやりではないかと思います。
パイロットが目的地と違う空港に着陸した場合の経済的負担増と安全性を天秤にかけることは現に慎むべきでしょうし、地上の支援部門もこれを理由に運行を左右することはもってほかではあります。しかしだからといって着陸料が免除される要件を知らないでよいという理由にはなりませんし、緊急着陸は着陸料が免除されるからどこに着陸してもいいよとせっかく規定を設けてくれていることを知らないでよいわけはないでしょう。
もしそのような知識もなく飛んでいる、飛ばしているならばなんと殿様商売なんだと世間は思うでしょう。
予断ですがどこかの航空会社はキャビンプレッシャーが壊れたジェット旅客機を、運用許容基準の修理にための空輸に限るという条件を守って九州から羽田まで低高度で倍の燃料を使って飛ばしたことを知っています。
羽田で直らない故障はないでしょうから、それも羽田を選択した条件の一つであることは容易に想像できますので、たぶん緊急着陸 着陸料免除は自ら辞退されることでしょう。
しかしパイロットも地上も緊急着陸が着陸料無料だということ知らなかったとはかなり意外なことでした。
その程度のことは常識だと思っていましたので、悪いかんぐりをしてしまったようです。
余談ですが当県ではドクターヘリの県の空港への着陸は着陸料はもともと小さな金額ですが全額免除されています。
これはありがたい処置ではありますが、民間航空会社が100%県からチャーターされて飛んでいるので、ある意味規定の拡大解釈ではないかとも思えます。それだけ県や官民の方たちの期待を背負って飛んでいるということでしょうか。
緊急着陸は無料です、、、、、
もう十年以上前ですが、204Bで八尾空港から六甲山方面へロープーウエーの延線作業のため朝一番に空輸中でした。
武庫川の河口付近を通過するころ、エンジンのオイル温度計が高くないと整備士に声をかけられてふと見ると、指針が触れながら少しずつ上がっていくところでした。
ありゃと思いながらエンジンの他の計器類を見渡すと異常はありません。誤指示かなと思いながらエンジンオイル温度計を強めにたたきましたが、正常に戻らないどころかますますあがってきて限界値を超えようとしています。
本物だーーーやばーーい すぐに会社の無線機で呼び出して手短に神戸へリポートへ向かうと連絡を入れました。
エンジンをアイドル近くまで絞って高度を下げ六甲アイランドを通過するころはいったん限界値まで下がって指針が落ち着いたので一安心、しかし今度は高度を維持するためにパワーを入れるとまたしても振り切ってしまいました。
そして機内にはエンジンオイルの焼けるにおいが充満し始め、オイル圧力計は0から最大まで振れています。どうやらエンジンオイルは沸騰しているようです。
回れーー回ってくれーーと叫びながらも何とか神戸へリポートまでたどり着いて、急減速フレアーしたとたんにエンジンから大量に出ていた白煙がヘリを包んでしまいました。
気がつかなかったのですがブルーインパルスのような白煙を引きながら飛んでいたようでした。
落ち着いてから、ヘリポート管理事務所へ出向いたら、担当者の方の開口一番の言葉、、なんと『 緊急着陸の場合は着陸料は無料です 』
この話は以前アップした内容ですがここからが今日の本題です(笑)
昨日のお昼のニュースでは珍しくNHKが仲間のANAの異常運行をしつこく取り上げていました。
松山から羽田へ向かっていた767が機内の気圧が下がったので緊急着陸したそうです。
潮岬付近を飛行中キャビンプレッシャーが下がったそうですので、緊急着陸なら関空か中部などの経路上の空港へするべきでしょうが、わざわざ目的地羽田まで飛んでおきながら緊急着陸はいかがなものでしょうか。
パイロットにはふと緊急着陸は無料ということが浮かんだのでしょうか。羽田の空港管理規定はどうなっているかはよく知りませんし、自分が神戸へリポートへ緊急着陸するまでは無料かどうかなど知りませんでしたし知る必要などないと思っていました。
いまや苦しい定期航空会社としては、このような状態になっても十数万円の着陸料を節約しながらも目的地まで客を運ぶような営業努力をしているのでしょうか。
そしてその指示がカンパニー無線で発せられていたのでしょうか。誰か聞いていませんでしたか 129,65 130,45 129.7
ヘリコプターの窓、、、、、
ヘリコプターは一般固定翼機に比較すると胴体が幅広、そして室内高も高くなっていて一般的に同じ定員でも広くなっています。
ですから窓も面積が大きくて、見晴らしの良いようですので、遊覧飛行など良い条件です。
速度も最大250キロ程度でしかも、飛行高度も低いので与圧はありませんので、要求される強度も高くありませんので、見た感じ 実質ともつくりがちゃちな感じです。
そのもともとちゃちな構造にホイストや捜索に便利なようにバブルウインドウ(泡の形の丸い突き出たもの)に改造してあったり、古くなってガタが出たりで たまに飛行中に落としてニュースになったりしています。
最近は何かあるとすぐにニュースになる時代ですが、以前はおおらかだったので人知れず山中に落ちたり、海底に沈んだ窓はかなりの数ではないでしょうか。
不時着や不時着水、ハードランデングのときなど緊急脱出のため窓やドアーそのものがワンアクションで放出できるようになっていることも強度が弱い理由です。
AS350は乗客用の窓は上下に手動で開けることが出来るようになっていますが、窓のアクリル板の強度が弱いので開閉の途中で止めることは禁止されていて、途中で止めておくと風圧で曲がるほどです。
窓やドアーはこのように強度は最小限で重さで出来るだけ軽く造ってあって、取り扱いは車のドアーと違ってばたんと閉めることは厳禁です。
その昔、防災の日の訓練で看護師 ドクターを乗せとある学校へ着陸したとき、看護師さんが車のドアーのように勢い良く、開けたところストッパーを通り越してそのまま地上に落ちたことがありました。
ドクターヘリやVIPが使用するヘリは遊覧飛行と違って外の景色を楽しむことはなく、反対に患者さんのプライバシーのなどのためにスモークがかけてあったり、カーテンがつけてあります。
これは救急車の窓は中がぜんぜん見えないように遮蔽してあるのと同じ考えです。ただしこれとても耐空性審査上からはかなりグレーで、メーカーが作ったものしか認められないという恐れ大かもしれません。
アクリルの窓はどんな小さなものでも50万円100万円単位ですので、アメリカなどでは非正規部品が多く出回っているようです。
ただしドクターヘリに使用されているEC135 BK117 MD900はもともと売れている機数が多くても1000機にもならないのでそのような非正規部品が出回るどころか、正規部品の供給すら怪しいかもしれません。
ということはヘリコプターとしての完成度はいまいちといわれても仕方がない面が多々ということになるでしょう。
窓のつくりを見てもそのヘリコプターの完成度が判断できそうです。
20万ヒットありがとうございます、、、、、、
2007年5月3日にはじめたこのブログはおかげさまで本日20万ヒットを記録します。
そして去年の12月20日から更新記録連続休みなしの記録が250日目を迎えました。この時期から毎日休むことなく何でも書き込もうと決めて何とか250日続いています。
長い日時ですのでどうしても書くことが浮かばないような日が何回もありましたが、そのつど何とか乗り切ってきました。
毎日 書き込むことが大切か、いやその内容のほうが大切かいろいろ考えましたが、プロではありませんので、ちょっとしたことでも毎日書くことのほうが自分自身の日課に、頭の体操に良いのではないかと続けています。
ですから同じ事象に対してまったく正反対の意見を述べるという普通では考えられないようなラフプレーもしでかしてしまっているようです。
自分の歩んできたヘリコプターという変わった乗り物が、世間の人々にさらに理解されて、飛ぶことによって世間の人々にさらに役に立つようにと願ってはじめたのがこのブログでした。
最近も書きましたが、自衛隊を含んで官民、総数2000機に満たない、空を飛ぶヘリコプターというこの小さい乗り物がテレビ新聞などに出てこない日はないほど飛び回っていますが、このヘリコプターを取り巻く様々な問題点を理解している人は本当に少ない限りです。
麻生総理は予想したように選挙の大きな武器としてヘリコプターの性能特性を最大限に生かして、1昨日は四国4県を一日で回って応援演説をしたようですが、残念ながら自民党が政権政党として党首がそのヘリコプターを使うことも最後になってしまうかもしれません。
自民党が負けてもさいわいドクターヘリの普及の速度は上がっても落ちるようなことはなさそうです。
しかし普及速度が上がれば上がったなりに、要員の育成や運行体制の整備に問題がないとはいえないところですので、今しばらくはこのブログも続けていこうと思っています。
幸い現役として飛ぶことがしばらくは続けられそうですので、現場の老いぼれパイロットの戯言を書き連ねて行きますので、気の向いた方は今しばらくのお付き合いよろしくお願いします。
今後とも忌憚のない意見、反論 あれば応援意見 激励 などなど 何でも遠慮しないで書き込んでください 重ねてよろしくお願いします。
ヘリパイロットの時間外手当、、、、、
ドクターヘリの乗るフライトドクターだけにかかわらず、一般に勤務医の皆さんは過酷な長時間労働に従事していながら十分な時間外手当をもらっていないようなことがあちこちで表沙汰になっているようです。
そもそも時間外手当ては、通常の報酬よりも1,25倍の金額を支給することを決め、偏った人員に時間外手当が集中して、割増賃金を支払うよりも新たに別の要員を雇ったほうが特になるという懲罰的な意味をこめた割り増し賃金であったはずです。
ところがその手当てすらまったく支払わないのですから黙ってこの状態を続けたほうが得だと思い込んで医師たちの犠牲的精神を悪用しているような面が見受けられます。
またまじめに別の要員を雇おうにも医師不足でもともとそのような要員はどこにもいないという切羽詰った事情もあるようですし、まともな時間外手当や深夜勤務手当てを支払おうにも医療崩壊でそのような資金はどこにもないということでしょうか。
またもともと高い医師の年収をさらに上げるような支払いをしなくても何とか言い逃れできるとでも思っているのでしょうか。
ヘリのパイロットにはもともと時間外勤務という認識がまったくない時代が長く続いていました。
それはヘリコプターの年間稼働時間が1機当たり多くても500時間くらいでしたので、そのヘリ1機当たりパイロットは1,3人以上配置しないと事業認可は下りませんでしたので、多い人でも年間500時間程度ですので、年間の所定労働時間1800時間の3分の1程度、前後の飛行準備 間の待機 後の片付けなどをいれても年間の労働時間よりかなり下回り後は手持ち時間となっていました。
ですから農薬散布などで朝4時から勤務しても年間を通すとトータル的には勤務時間が少ないので、時間外手当をもらうようなことは何十年ありませんでした。その代わりフライトのない手持ち時間の日は10時出勤 3時には帰るような大名勤務が黙認されていました。
しかしその後勤務の状況が少しずつ変わってきて、報道待機や防災ヘリの業務で一日拘束され所定時間を常に越えることが多くなり、また手持ちの時間も雑用が増えてトータル的に勤務時間は1800時間程度を越えるようになってきて、時間外手当を要求するようになって来ました。
そこへ持ってきてドクターヘリのような長時間の勤務形態が増えたり、報道関係も早朝に事件事故が多いことで、朝は6時から待機を求められたり、カメラの性能が飛躍的に向上したせいで夜間も航空取材が出来るようになったりしてきました。
さらに近い将来にはドクターヘリが夜間も飛ぶというような体制が始まりかねないようになっています。
よって最近ではかなりの運行会社ではすでにパイロットに対しても時間外勤務を正確にカウントして支払うようになってきているようです。
これには長い間会社の支払いに対する抵抗がありましたが、時代の流れには逆らえないということでしょう。
会社は運行契約に際して、顧客と正確な時間外勤務に対するコストを協議しその分を請求して社員に支払えばよいだけの話です。
阪神淡路大震災の折、テレビ局は24時間ぶっ通しで飛んで航空取材を続けました。このような運行は1月近く続き、社員には多額の時間外手当、深夜勤務手当てを支払うこととなりましたが、対テレビ局にはそのような種類の請求は出来ない しないような契約となっていました。とぼけた契約というしかありませんが、某テレビ局はこのような昼夜を通した運行に感謝しますということで100万円の現金を持ってきて皆さんで有効に使ってくださいとおいていきましたが、それの十倍もの経費が夜間運行にかかっていることを考えるとテレビ局にとってはずいぶんと有利なとぼけた契約だったでしょうか。
ドクターヘリは何回飛んでも同じ金額しかもらえない契約となっているところも多くて赤字で泣いているということなら、乗員にはもちろん飛行手当ては支払っていないでしょうし、もしかしたら時間外手当もまともに支払っていない会社が多いのかもしれません。
もはやサービス残業、勤務時間の管理 休日の管理などの条件が守られているかどうかというような時代は過去のことだと甘く見てはいけません。
医療の世界のような国民に重要な貢献をしている、科学的に進んだ世界にあって、悲惨な勤務状態に泣いている多くの方がいるようなことが黙認され、誰も大きな声で正常化を言い出せない日本ですので、経済状態が大きく減速している今、さらに悪くなるような気がしてなりません。
ドクターヘリ 着陸に何分かけるか、、、
ドクターヘリは患者さんの傷病発生からドクターが救急救命処置を始めるまでの時間が勝負です。
ドイツでは出動要請から15分以内と決めてそれを目標に必要なヘリを全国にくまなく配置し、飛んでいるようです。
ヘリは200キロ以上で飛びますから、100キロ30分50キロ15分で着くのですが、いかんせん要請から離陸までに3分から5分はかかってしまいます。
この3分から5分で最低限しなければならないことは、ヘリコプターのエンジンをスタートし、各種機器類系統に異常がないかということは絶対に確認する必要があります。
その前にどこへ飛んで行くのかということ、その目的地までの天候状態が安全確実に飛行することに支障がないかということも確かめる必要があります。
最低限これだけは絶対にやる必要がありますが、法律的には、機長の出発前の確認事項としてもっと詳細な確認する事項を定めていますが、そんなことを全部やっていたら離陸まで30分では済まないので、朝の始業点検、ミーテングで確認して、飛行前の確認としています。
離陸したら雲などの障害がない限り、GPSで直線飛行しますので、誰がやってもほぼ時間は変わりませんが、問題は着陸にかける時間です。
上空に到着していても、着陸に5分も10分もかけているようではドクターヘリにならないでしょう。
いかに安全確実にそして出来ればスムースに時間をかけないで、最適地に着陸するかと言うことがドクターヘリのパイロットに求められる操縦技術や状況判断の一番大事な点で、これがどの程度出来るかでドクターヘリのパイロットの価値 評価の80%は決まってしまいます。
ヘリのパイロットが通常着陸できる場所は、全国各地の空港とヘリポート、そしてもうひとつはあらかじめ地上から調査を行って、広さや障害物、進入離陸方法が設定されて、事前に許可申請がなされ、安全基準をみたした、いわゆる場外離着陸場と呼ばれるところの2種類しかありません。
つまりこのように許可されている空港や場外は事前に広さや障害物の状態 そして進入離陸方向など離着陸に必要な情報が全て事前にわかり、安全上問題なく離着陸できることが保障されています。
ところがドクターヘリがこのように申請許可された場所だけで活動しようとすると、広さや障害物の状態などが基準を満たさないところが70%以上にもなってしまい、ほとんど着陸できないと言うことになってしまいます。
つまりドクターヘリが飛べないと言うことになりますので、許可は要らない、許可を取らないところへ自由に着陸してよいと言うことになりました。
ではそのような広さや障害物が問題となり、進入離陸方向が決められていない、任意の場所へ安全に離着陸することの、責任は全てパイロットに押し付けられた格好になっています。
そしてそのような判断をするために5分10分もかけて上空で旋回して、確認していてはドクターヘリにならないと言う相反する事情があります。
最近応援協定で他県へ飛んでいくことなり、広大な芝生の広場へ着陸するに際して、直線で進入してあっという間に着陸したところ、防災ヘリは何回も旋回して安全を確認し、地上の支援消防隊の無線の許可を受けてから着陸するようにしているのでそれにならうようにと強い申し入れを受けたそうです。
まことにあきれ返る話です。この県ではドクターヘリは着陸に5分以上かけて安全を確認するようですので患者さんの命はいったいどうなるのかと心配してしまいます。
5分以上かけないと安全に着陸できるかどうかを判断できないパイロットはドクターヘリに乗ってはならないでしょうし、早く降りて事故るようなパイロットもドクターヘリは無理でしょう。またそもそも許可にならない狭い場所への離着陸を十分出来ないパイロットも同じでしょう。
ただし 聞くところによると過去にドクターヘリが着陸に際して2回のインシデントを起こしているようですので、慎重に そしてスムースにやることでしょうが、着陸はどんな航空機でも操縦技術の集大成であることは間違いないようです。
ドクターヘリクルーの飛行手当、、、、、
パイロットは定期便の操縦士、小型機ヘリの操縦士、そして戦闘機操縦士 そして官庁の操縦士など従来から何らかの飛行手当と称する一部危険手当、一部技能に対する評価手当て等でしょうか、飛行手当なるものを基本的な給料にプラスしてもらうことが普通です。
ドクターヘリが飛ぶようになって、ヘリコプターで飛行して現場に出向いて救急医療に従事するドクター ナース パイロット 同乗の整備士にはどのような処遇をすることが良いのでしょうか。
今のところ各地で飛んでいるドクターヘリ従事者たちがどのような処遇を受けているかということはほとんど調査すらされていないようです。
医療従事者のみなさんは特に各地の病院とも始めての事業ですのでどうやらばらばらと言う状態のようですが、これとても有る程度はあわすことも必要かも知れませんが、全て同一と言うまではあわせる必要はないかも知れません。
ただ一般的には全国のそれぞれの現状や、手当て支給に対する考え方と言うものは知る必要はあるでしょう。
漠然と見聞きするところでは一般的に、公立病院は驚くほど安く、私立病院は高い評価をされて相当額を支給されているところもあるようです。
最近はどこの企業も官庁も手当てと言う手当ては人件費カットの大きな流れの中で大きく見直されているようです。ということは手当てを支払わなくなると言う傾向にあるようですので、ドクターヘリ従事者に手当てなんか支払う必要はないと一刀両断に切っておしまいと言う考えもあるようです。
私の意見は、同じ会社内 同じ病院内で働く他の同僚、同じ社員と比較して、その業務が著しく危険性がある、従事環境が極めて劣悪、そして会社や病院内で同じ業務をするのに比較して、困難 同僚や上司の指示 支援が受けられないなど、特有の条件があって、誰にでも出来ない仕事である、または選抜された者のみしかこなせないなどの条件があるならば一定の手当てを支給してその業務に対する見返りとするべきだと思います。
某大手ヘリ会社は最盛期 1時間最大8000円支払っていたパイロットに対する飛行手当ては基本給に組み込むなどと言う理由をつけて、飛行時間あたりの手当てはまったく支払わなくなりました。そこで何が起こったかというと、パイロットたちの飛行作業にする情熱が極端に落ちてしまい、飛ぶ仕事より報道待機の時間外手当で1時間3000円 月25万円ももらったほうが得だという風潮でした。
これに反省した会社は1時間1000円支払うと言う修正策を打ち出しましたが、20代の女子職員が1時間残業しても2000円支払われるのに、命を張って飛んでも1000円の評価しか受けないならやっぱり報道待機で寝ていたほうが断然得だという風にいったん飛ぶ情熱を奪った制度改悪はパイロットの考え方を大きく損ねてしまったようです。
かなりのリスクと業務の困難性、そして選抜された者だけが使命感を持って現場へ飛ぶドクターヘリの従事者にはそれなりの評価としての出動手当てを支給することが必要でありまた、全国的にも一定の範囲になるような指針が出ても良いと思います。
一日5回も出動してもスターバックスでコーヒーいっぱい飲めない程度だとやはり自分たちはその程度の評価しか受けていないのかと嘆く気持ちもよく理解できます。
214Bの思い出、、、
1989年3月214Bの限定変更訓練を受け、無事国家資格を与えられました。
そして5月中OJT訓練を25時間、物資輸送の現場で受けて、社内審査も無事合格して機長として飛べることになりました。
一緒に受けた同僚 A はすでにOJTを先行して終わっていてひとり立ちして飛んでいました。
自分は204Bをほぼ専門にやっていましたので 214は乗るチャンスはあまりないのかと思っていましたし、リスクが高いへりなのであまり気乗りはしませんでしたが、盆明けにいよいよ出番がやってきました。
物資輸送の仕事は、現場が盆休みに入ると一斉に仕事が止まり、作業員の人たちは故郷に帰って10日間ほどの長い休みに入ります。
そして盆があけるとヘリはいっせいに現場へと飛んでいったものです。
初の214 機長としての仕事はなんと、電柱の立て込み作業です。ゴルフ場に夜間照明を新設にあたり、ヘリコプターで数十本の照明架設用の電柱をあらかじめ掘削された穴に吊り下げたまま立て込むというちょっとした難しい仕事です。
ゴルフ場に数十本の電柱を立てるとなると、重機が通る部分の芝をいためてしまうので、ヘリコプターを使うとまったく芝に傷がつくことなく、一日も営業を止めないうちに工事が終わってしまうので、各地のゴルフ場がこのヘリコプター工法によって、夜間照明施設の工事をしていました。
電柱の重量が1.3トン程度まではベル204B-2で可能なのですがそれ以上の重い電柱になると214の出番となります。
204では何回かこの仕事をしていましたので、214新人の自分にお鉢が回ってきたのでしょう。
朝一番7時離陸で三重県のあるゴルフ場へ八尾から空輸しましたので、3ヶ月ほど触ってない214を何とかエンジンをかけ、120ノット以上のスピードにおいていかれそうになりながらも現地に無事到着しました。
入念な打ち合わせの後、吊った電柱がいきなり2トン以上でした。じゃじゃ馬の214はなかなか思ったように言うことを聞いてくれません。1.2メートルの触れ幅で電柱の先がゆっくりと振り子運動で止まりません。
204程度が運ぶ1トン程度の電柱なら、3人ほどの地上作業員が押せば、ヘリごとすえつける穴の直上へ押さえつけてくれるのですが、2トン以上になると人力ではとても抑えきれなくて飛ばされてしまいそうです。
当日は風も強く、5分ほど何とか抑えようと、ホバリングをとめようとするのですがどうしても1メートルの触れ幅が収まってきませんので、同乗する横の相棒整備士M君に、だめだなー入らないなーーやめて帰るかーーと弱気な言葉を出してしまいました。
どうやらSAS(安定装置)と電柱のゆれと操縦桿の動かし方が微妙にずれて、止まらないようでした。
操縦桿を動かすことをやめ、安定装置に任せると触れ幅が収まってきます。この状態で穴の直上へ移動して高度を下げればうまく入るのですが、動かしたときのあて舵が合わないとまた触れだします。
10分ほど格闘しているとやっとその操縦感覚が手に入り、何とか1本目 成功 作業員の方たち ありがとうーーーー
後26本 どうなることやら という心配はありませんでした。後の26本は1時間もかからないで終わってしまいました。
電柱が15メートル程度 吊りワイヤーが15メートル 計30メートルヘリの真下の電柱の先を近著ロールして電柱と同じ径の穴の中へ、うまく直上へ持ってきて安定させて増したに降ろせば作業員の方たちが押さえ込んでくれます。
この作業に付き合ってくれた 機付長整備のM君はその後若くして病死、下で働いてくれた新入整備士 K君は1月以内に起こった214Bの墜落事故で同僚パイロットのA君とともに小浜湾に墜落殉職しました。
会社はこの事故を最後に214の運行をあきらめアメリカへ全機売却してしまいましたので、このフライトを最後に214に乗る機会は終わってしまいました。