さまざまな雪害を受ける送電線、、守るヘリコプター、、、
私がヘリコプターの操縦士として始めて本格的に業務飛行に従事させてもらったのは、送電線にかかわる仕事でした。
山中深い発電所や遠いところにある原子力発電所から延々と山を越え野を超えて電気は都会へと送電されてきます。
冬になると日本海側の地方などでは時によって大雪となり、送電線に様々な被害が出たものです。
そしてどのような被害が起こったとしても、その復旧には必ず作業員の方が現場に復旧資材を持ち込んで作業をしないことには電気は止まったままとなってしまいます。
大雪によって起こる被害はさまざまなものがありました。
飛行機で言う着氷のようなことが原因で起こる被害には、電線自体に雪が丸く凍りつき直径が30センチもの雪で覆われたりして、その重みに耐え切れずに断線したり、鉄塔もろとも倒れたり、着氷した氷が突然落ちて線が弓の弦のようにはじいて上の線と衝突して、激しくショートして断線したりもしました。
京都大学の先生が発見されたという風に聞きましたが、強風下の降雪によって着氷した電線は強い横風を受けて、ついた氷が翼の断面形と同じようになって強い揚力が発生してまるで飛行機の羽のように飛び回って上の線とショウトするということがあるそうです。
降雪が10メートル以上にもなる大雪の山間部も珍しいことではなく、春になって雪解けの時期のなると、鉄塔の下のほうで水平方向に入った補強材を雪解けとともに下へ押し付けて曲げたり折ってしまったりもするようで、鉄塔がひねりの方向の力にきわめて弱くなっていた例もありました。
また10メートル以上に積もった雪が解けるとき地熱で暖められて下のほうが先に溶け出して、下の雪の層が徐々にずり落ちて鉄塔の足元をすくうように倒れた例もありました。
この例は、ヘリコプターを使って資材を運び、10メートル以上の積雪地に地面まで何本もの細い穴を掘って、その中におが屑を入れておき、融雪時にそのおが屑の変形具合を調査して雪のずれ方を調べて立証されました。
いずれにしてもこのような被害の復旧現場にはヘリコプターによって運ばれた作業員の方がヘリによって運ばれた資材や重機を使って復旧作業をするしかありませんでした。
このような厳しい冬の雪山でのヘリコプターの運航がなければどうにもならないような場所でまた被害が多く発生していました。
ヘリコプターの雪山での運行を可能にしたのは実はこのような強いニーズがあって運行会社が鍛えられたればこそだったのでしょう。
この仕事の始まりはやはり黒部ダムの開発にヘリコプターが参加したことで始まりました。