春になると思い出す事故、、、、、
1982年4月はじめのころだったと思います。
新潟県の小出町といえば豪雪地帯です。
奥只見の只見川水系にある豪雪を利用して発電するダム、発電所 首都圏へ起こした電気を送電する送電線などの、冬季間の維持管理するために、電源開発小出送電所の敷地内にヘリポート格納庫を設置して、ヘリコプターを常駐していました。
12月から5月まで雪深い発電所、ダムなどは車が入れないため、定期的な点検はヘリコプターで作業員を送り込んで、その作業を行っていました。
又 豪雪の山間部にある送電線の定期的な点検もヘリコプターでのパトロールでした。
さすがの豪雪地帯も、4月にはいると晴天の日も多くなり、当日も朝から快晴でしたので、何便も奥只見方面へ作業員の方を送り込んで12時過ぎ社員食堂で昼ごはんを取っていました。
そうすると食堂の電話に呼び出され、ヘリ担当の方から『 東電のヘリが湯沢からパトロールに飛び立って帰ってこない。すぐに捜索に飛んでやってもらえないか。』とのことです。
食事もそこそこにヘリポートに駆けつけて、すぐに離陸しました。
湯沢に着くと東電の方が待ち受けていました。すぐに飛行ルートの図面を見せるようにいい、そのルートにしたがって飛び立つこと6,7分でしょうか。
柏崎原発から東京方面に電力を送る新新潟幹線が奥清津発電所に分岐し、その下を電源開発の送電線が複雑に交差した90メートルの高さの鉄塔の真下にヘリらしきものが見つかりました。
100メートル上空からは工事用の発電機かコンプレッサーが雪の中においてあるかのように見えましたので、確認すべく送電線の下に入ってホバリングしたところ、ヘリの屋根のようなものだけ雪の外へ現れていて、周りにはローターのブレードの中に充填してあるハッポウスチールのようなものが一面に飛んでいました。
少し離れたところにはパイロットが使う航空図のようなものや、タバコの箱も雪の上にあったようでした。
人影はまったく見えませんでした。
前方の送電線に囲まれて、45度くらいの斜面でしたので着陸することはできませんでした。いったん送電線の下から離脱し、5000フィートくらいに再上昇して、東京の自社と新潟空港の管制塔に事故機発見の通報を入れました。
もしかしたら生きているかも知れないと思い、同乗の整備士に近くに下りるから見に行ってやってくれないかと頼んだところ、行きますという返事だったので送電線の別の方向から下にくぐり30度の雪の斜面に片足接地でホバリングして、100メートルくらいの場所にI整備士に降りてもらいました。
そのまま一人でヘリポートに引き返して捜索の人たちを乗せ事故現場から数百メートル上のカッサダムの人口湖の雪の上に 3便ほど運びました。
その後すぐに、一番に現場に着いた整備士を迎えに飛びました。
同じところに片足を接地させてホバリングしましたところ、上方にいる整備士のひざのところでローターが回っています。もう一度高度を上げて、ローター回転の中へ整備士を呼び、再度片足接地してへりにに乗せました。
どうだった と聞いたところ、パイロットと電力会社社員共に近くにいませんでしたとのことでした。
後に聞いたところパイロットは投げ出されて200メートル下の雪の中で、東電社員はまっさかさまのヘリの風防を破ってさらに雪の中へ3メートルほど入ったところで見つかったそうです。
われわれがヘリの屋根だと思ってみたものはスキッドが取れてしまった床面だったのです。
一番に現場に降り立った整備士は彼らを発見することなく、回収したわけでした。
夕方近く、すでに到着していた東電子会社のヘリで2人の遺体がヘリポートの回収されてきたのを見た後 小出の基地へ飛んで帰りました。
事故原因はパイロットが複雑に交差した送電線のグランド線を見落として、スキッドを引っ掛けてきりもみ状に落ちたようでした。
ちょうどスキッドがあたったグランド線には2点にスキッドのペイントが付着していました。まったく素線切れもなくただペイントがついているだけでした。
航空用無線機器類はすべて外国製、、、、、、
外国映画やニュース映像に出てくる、警官が使うハンディの無線機類はほぼ日本製であるようです。小型軽量で性能がよく故障が少ないものとして、世界を制覇しているようです。
これはゲーム機や車載ようのGPSやオーデオ機器とも共通の技術があるように思います。
日本のもっとも得意とする製造後術分野なのでしょうか。
航空用の無線機器、GPS、などもまったく同じような技術で、製造可能だと思うのですが、日本の航空機で日本製を積んでいることはまったく皆無のようです。
たとえばICOMは大阪の無線機メーカーで航空用の全周波数を送受信できるトランシーバーを海外に輸出しているようです。
日本では同じものを持つこともたぶん違法ではないかと思います。飛行場管制塔や進入管制の周波数を自由に送信できるのですから、誰でも持ってよいということになると、電波ジャックして、管制塔の周波数を送信しっぱなしにしたら、空港は大混乱になります。
ところがこのトランシーバーを香港などで購入し、国内へ持ち込んでいる人が多数いるようです。もちろんマニアなどが空港付近で、航空無線を聞きながら、写真を撮るときになどに使っているようです。
ドクターへりなどは普通機上に無線機を複数積んでいて片方の故障に備えていますが、自家用機や事業機であっても単発機など小型のものは1台しか積んでいないことも多くあります。
自家用機のオーナーなど気の利く人はこのような海外向けトランシーバーを飛行中携行していて、無線機の故障に備えているようです。
事故や不時着の場合も非常に有効ですし、ELTと呼ばれる緊急時の位置を知らせるGで自動的に発信する機器は100万円もするようですから、5万円から10万円で買えしかもVORの機能もついているものがあるようですから、一概に違法だからやめろともいえないような状況です。
民生用ハンデイ類は非常に発達しているのにいざ航空用といえばまったく国産はなく、馬鹿高い値段のものをつけるしかありません。
消防無線や防災無線、医療無線をへりに装備する場合も、ハンデイのタイプを臨時につけるようなつけたかしか出来ませんし、送信セレクターがインターホンコントロールシステムに入れることが出来ないなど、日本の無線機器類の安価高性能の効果をまったく享受できない寂しい状況です。
ICOMさん ドクターヘリの無線システム全体を設計して50機分作ってくれませんかーーー
ロットが少ないとやはり無理でしょうねーーー
今日の出動、、、、
今日 朝から めずらしい状況の出動がありました。
8時半ごろ山間部の過疎地、飛行時間にして10分くらいのところから要請が入りました。
ちょうど朝礼ミーテングが終わってドクターナースが下の救急外来へ降りていくため、ドアーに近かづいたときにホットラインが鳴りました。
高齢者の方の脳梗塞とのこと、4分で離陸、飛行時間8分で現場救急ヘリポートに着陸、救急車とランデブーしました。
直ぐに救急処置をしながら、ドクターが収容先病院との電話での打ち合わせ中、なんとヘリポートの直ぐ下の民家から救急車要請の119番が入ったと無線で言って来ました。
今度は60代の女性の意識障害とのことです。救急車の中には先の脳梗塞の患者さんが収容、処置中です。この町にはほかに救急車がないとのこと、とりあえず消防の支援車両(ライトバン)がその民家に行きました。
民家はヘリポートから見下ろせる位置です。
そうこうするうちに、近くの開業医の先生が駆けつけたとのことです。
さあ どちらの患者さんをヘリコプターで運ぶかという風になりました。
先の脳梗塞の患者さんの処置が一段落、救急車はその患者さんを乗せたまま、2番目の患者さんのお宅までドクターナース家族の方など、皆乗って行きました。
上から眺めていると、ライトバンに一番目の患者さんを乗せ変えて、サイレンを鳴らしながら下へ向かって走り去って行きました。
2番目の患者さんを救急車に乗せ変えて、ヘリポートへ向かいはじめたのが見えました。
この方はくも膜下出血で危険な状態であるとのことヘリコプターで医大へ搬送となりました。
その方は家の中でドクターヘリが飛んできたんだなーと家族の方の話をした後直ぐに意識をなくしたとのことでした。
狭い過疎地域で高齢者の方の急病が重なって、ヘリが有効に使用できた一例でした。
この2件の救急に対処中 さらに別の消防からもう一件の要請が入ったそうですが、対応できないということで救急車での対応をお願いしたということでした。
同時に3件も要請が入ることはめったにない事例でした。
ヘリコプターはどの程度の場所なら安全に離着陸できるのか、、、
(このように25メートル角のヘリポートの隅に駐機すれば後3機着陸できます。その昔は東京の芝浦ヘリポートでは同じ大きさで3機常駐していました)
長い間ヘリコプターに乗って、色々な仕事をさせてもらってきました。
法的な規制は別にして、自分なりにヘリコプターがどの程度の場所であれば安全に離着陸できるかと言う、基準と言うものが身に着いています。
簡単に言えば、テニスコート2枚分の空間と、5メートル角の接地のための平面があれば、5トン程度の防災機以下の大きさのヘリコプターならほぼ安全の着陸できると思っています。
法的な規制ではおおむね20メートル角の平面と離陸方向8分の1 着陸方向4分の1 横方向45度の勾配面より上に障害物があってはならないこと、防災運航など特別な場合はこの制限空間を10メートル垂直にあげて、仮想面に進入して10メートル垂直に降りて良いことになっています。
今のヘリコプターはほとんど馬力に余裕があるので、垂直に離着陸することが可能なので、規制されているような進入離脱の勾配に障害物があっても全然危険性はありませんし、着陸する平面もスキッドや車輪が入る大きさの2倍もあれば十分ですので、5メート角くらいで問題はないようです。
このような法的な規制は過去の性能があまりよくないヘリコプターには安全上必要な規制であったのですが今の高性能なヘリコプターには過剰規制ではないかと思っています。
このような状態の規制ですのでドクターヘリ、ランデブーポイント400箇所のうち70%以上が申請許可にならないため、救助時の特例を適用して、許可を受けることなく離着陸しています。
ヘリコプターのパイロットと言うものは、ドクターヘリに限らず、狭いところに安全に着陸する技術がもっとも基本中の基本と言えます。
法的に基準以下の狭いところに着陸することを緊急時以外には認めていない、日本の制度では、パイロットが免許を受けるときも、その後のドクターヘリに乗務する訓練においてもその能力をチェックできないことになっています。
少なくとも、緊急時とはいえ、日常的に狭いところへ着陸することが普通になっている、パイロットがそれが出来るかどうか、またその訓練 審査を出来ないようなシステムは早急に改善するべきでしょう。
それともどうしても今の基準以下の広さの離着陸場に着陸することはまかりならんと言い張るならば、ドクターヘリに限らず日本のヘリコプターはほぼ飛ぶことななくなると言う世界に存在しない状態を作るかどうかです。
ヘリコプターがどこに着陸するかどうかの規制の基準は、ヘリコプターのパイロットが中心になって決めるべき事なのですが、日本ではどうもそうではないようでした。
ただし これは民間のヘリコプターだけの話であって、自衛隊のヘリパイは皆狭いところへ着陸する訓練、低空で安全に飛ぶ訓練を思う存分やっているようです。
ヘリコプターとはそういうものなんですが、、、、、、
ヘリポートと場外離着陸場、、、、、、
ヘリコプターの着陸するところは、ヘリポートと呼ばれる場所と、場外離着陸場と呼ばれるものと2種類あります。
ヘリポートはいわゆる飛行場と同じで、周りの利害関係者との公聴会を経て、決められた規格に作られたものです。1年以上の準備としかるべき工事が必要で、ヘリコプター離着陸専用としてしかその土地は使用できません。
場外離着陸場は、空き地やグランドに臨時に離着陸する場合に、一定の広さと、進入離脱の空間に障害物がないこと、周りに迷惑をかけないことなどを条件に、期間、機種 型式、操縦士、飛行目的などを限定して臨時に航空局が許可を運行者に出す、臨時へリポートです。
ヘリコプターはこの場外離着陸場の条件である一定の広さ、進入離脱の空間が許可条件よりはるかに狭くても、安全確実に離着陸できるという認識が業界では一般的で、許可条件があまりにも厳しいのではないかと、何時も業界では不満をもっているようです。
ヘリコプターはどこにでも着陸できると言う、業界と世間の認識が許可条件とはあまりにもかけ離れているので、ヘリがドクターヘリに使用されはじめたときにとても使い物にならないと、皆心配したものです。
そこで、規制側は裏技を使ったのです。救難救助に当たる公的機関の航空機、および公的機関の要請で飛ぶ航空機はこの場外離着陸場の事前許可を受けなくてもよいと言う規定を作って、ドクターヘリはこれに含まれると言う風に決めたのです。
一般にドクターヘリがランデブーポイントとしてあらかじめ決めている場所は各県数百箇所あるようですが、この場外離着陸場の要件である、着陸場所の広さと進入離脱の空間の広さが十分取れないために、事前申請しても許可がおりない、いわゆる条件が満たさない場所は70%以上でしょう。
ドクターヘリは通常なら着陸許可がおりない条件の悪い場所に毎日着陸していると言うことになります。
これって不通に考えれば非常に危険なことを毎日やっていることと言われてもしかたがないのでしょうが、逆に言えば毎日安全にやっているのだから、許可基準があまりにも厳し過ぎて現実とはかけ離れているともいえるのではないでしょうか。
航空局は許可に際して、使用するヘリの機種や機番、操縦士 使用目的 などを限定して許可を出せるのですから、あまりにも広さや空域にこだわらないで、あまりにも、画一的な審査で規制しないで、実際的な運用をするべきでしょう。
高速道路や県道、国道など今まで着陸しなかった場所にも着陸の要請が増えてくるような傾向になっています。
本当に危険が多いところには着陸許可を出さないことも許認可権の重要な役割です。今の公的機関の要請なら許可はいらないという項目は航空局のへりコプターに対する行政監督義務の放棄としかいえないでしょう。
今日も新しい高速道路の開通を前にした、トンネル内での大事故を想定した救助訓練に参加してきました。
高速道路や公道に着陸するかどうかが問題になっている今、航空行政の元締めがヘリコプターの運航に関して重要な決定にかかわるべきでしょうし、それが出来ないならつまらない規制はやめて、常識ある運航関係者の相談にまかせば良いのではないでしょうか。
ドクターヘリ 悪天候を克服できるか、、、、、
ヘリコプターが定期便の飛行機のように天候が悪くなって、視界(視程)が効かない状態であっても、安全確実な運航が出来るでしょうか。
答えはやはりできないと言うしかありません。
それではどの程度までの悪い視程であっても飛行できるのと言うと、通常は1500メートルの飛行視程(飛んでいて前方 側方が1500メートル先まで見えること)が必要とされています。
ただし、地上が引き続き視認できれば視程が0であっても飛行は可能という、抜け道も用意されています。
それはヘリは速度が0であっても飛べると言う特性があり、それの特性を有効に使って、天候の非常に悪い空域を安全に通過 回避できると言うことでしょう。
ヘリコプターの操縦士はこの低速低空で視程のきわめて悪い、降水、降雪、雲に囲まれた空域を安全に飛べる能力がどの程度持っているかと言うことが非常に重要となります。
それは、今の時代のように、気象情報がいかに豊富に提供されていても、いざヘリが飛ぶ空域のごく局地的なものは期待できませんし、時々 刻々 変化する状態までも提供されないと言うことです。
もちろん雲の中を飛べる基本的な計器飛行能力をヘリコプターには備わっていますので、パイロットもその能力を持っていることは必要なのですが、ドクターヘリが通常飛行する空域に限らず、日本国内でヘリコプターが飛ぶ計器飛行方式はどこにも設定されていませんので、いったん雲に入ったら、地上との衝突回避は自らの力のみで行うしかありません。(唯一東京へリポートにあります 忘れてました)
それは低空で飛ぶヘリコプターにはほぼ不可能です。過去に雲に入って山にぶつかって死亡事故となったヘリコプターの事故は10件では足りないでしょう。
今から飛んで行くランデブーポイントや飛行経路が果たして、視程が1500メートル以上あるか、経路に雲が立ちはだかっていないか、そのようなことは現在の気象情報では、確実なことはわからないと言うのが実情でしょう。
それを判断したり、克服するものはパイロットの経験と、低空低速で悪天候空域を回避したり通過したりできる操縦技術ではないでしょうか。
いわゆる計器飛行能力を言うものは、計器飛行経路が設定されているところを安全に飛ぶ技術なので今現在ではほぼ何の役にもたたないといっても過言ではないでしょうか。
アメリカでは一部病院ヘリポートにGPSによる計器飛行経路を設定されたところがあると聞きますが、計器飛行の場合は必ず複数の位置確認機能が求められるはずです。GPSが故障した場合には、VORやレーダーによるバックアップがなければ安全に雲の中を飛べません。
今 この県で400箇所もあるランデブーポイントの内 少なくとも10箇所以上にGPSその他の計器飛行方式を設定しないと、悪天候時の飛行は実質的には出来ないでしょう。
基地病院ヘリポートのみ設定したとしても、悪天候時 ほぼ何の役にもたたないでしょうし、山岳地帯が多い日本の地形では、ランデブーポイントやヘリポートの計器飛行による離着陸経路の設定がずいぶんと困難でしょう。
いずれにしても、ヘリコプターの基本である低空低速で、悪天候空域を回避通過する技術の重要性はなくなることはありません。
ドクターヘリの離着陸する場所、、、、、、
ドクターヘリの目的は、救急患者さんをしかるべき病院へ出来るだけ早く搬送することだと言う風にいまだに誤解されておられる方が数多くおられるようです。
本来ドクターヘリは、事故や急病でいまや瀕死の状態にある患者さんに出来るだけ早く適切な救命処置を施して、死の瀬戸際から助け出すために、ドクター ナースを届けることが本来の仕事です。
現場での処置によって、容態を安定させそれから、救急病院へ搬送して本格的な救命治療を施すことはその次の使命です。
よって、ドクターヘリは患者さんがおられる場所に着陸することがもっともその望ましいのですが、発病、事故から救急車を呼んで、さらにはヘリコプターを要請し、現場に着くまで一定の時間がかかるので、ヘリが安全確実に着陸できる場所をあらかじめ決めておいて、そこで救急車とドクターヘリがランデブーする方式を取っています。
ドクターヘリをとばす各県では数百箇所のランデブーポイントを決めているようですので、通常は10キロ圏内に1箇所程度はランデブーポイントがあり、ヘリが到着すると同時位にはほとんど救急車が到着することが普通です。
ところが場所によっては近くにランデブーポイントが設定できない地域があったり、事故現場での救出に長時間かかり、迅速な救命処置のためには、事故現場に着陸したほうが良い場合も出てきています。
しかし、事故現場やあらかじめ決めたランデブーポイント以外の場所に着陸するには、ある程度の危険が伴うことは確かです。
電線や電話線の線状障害物や立ち木や建物、着陸場所の広さや、風圧による飛散物など着陸に対する物理的な問題点があります。
もう1つには、その着陸場所の所有者、管理権限者等が果たして、ドクターヘリの着陸を許容するかどうかと言う、財産権、管理権の問題があります。
ドクターヘリが着陸することによって生じた損害はどのように補償するか、最悪付近の人にヘリの風圧で飛んだ板切れが当たって死亡したらどうするのかなど、問題点を挙げればきりがありません。
やはり ドクターヘリが安全確実に飛ぶためには、良好なランデブーポイントを整備し、安全運航の実績を上げて、徐々にその範囲を広げていくしかないようです。
しかし、どこにでも着陸できる、と言う運航技術と言うものは一朝一夕には出来るものではないことは確かです。それはパイロット整備士や会社の運行管理、訓練だけではなく、地上で支援に当たっていただく、消防の関係の方、警備していただく警察関係の方たちのヘリコプターに対する理解や、状況判断というものが必須条件であることは言うまでもありません。
欧米並みにドクターヘリが銀座のどまんなかへ着陸する時代がいずれやってくるのでしょうか。
暖かくなってくると、、、、、
今日はあちこちで桜の開花がニュースとなっています。
いよいよ暖かくなって来ましたので、行楽の事故でドクターヘリが呼ばれることが多くなってきます。
お天気はくだりとは言え春の日曜日ですので、やはりそのような事故で2回 出動がかかりました。
一件目はくだりの天候で南風が急に強くなった影響でしょうか、レジャーボートから転落して溺水事故でした。
要請がかかり、現場上空に着いた時にはまだ救出中との無線でしたので、偵察飛行の後、ランデブーへリポートへ着陸し、ドクターナースは支援車両で港へ向かいました。
救出したボートが患者さんを運んで港に着き、直ぐに蘇生をしようとしましたが結局そのままなくなられたようでした。
給油してすぐ、今度は山岳部の道路から、バイクの単独転倒事故ということで、要請が入りました。
事故現場を確認して、指示されたランデブーポイントで待機しましたが、救急車が残雪で進入できず他の場所へ移動してやっと患者さんに接触できました。
幸いそれほどの重症ではなかったので、狭いところへ強硬に着陸しなくてもよい事例でした。
今日のように海難に絡む事故や、山間部のバイク事故は、救急車が患者さんを収容するまでに相当の時間がかかることが多く、ドクターヘリが先着して、治療開始までの時間を大きく短縮できる事例です。
このような事例が起こることはよろしくはないのですが、いざ起こったらドクターヘリが役に立つ可能性があります。
今日はこのような事例が2件も続きました。
これから さらに暖かくなって、行楽の週末や連休にはこの様な事例が多発することがよくあります。
ヘリコプターの最大の能力 ホバリング、、、、、
長い間ヘリコプターに乗っていると、その最大の特徴であるホバリングと言う能力がややもすると忘れてしまいがちです。
パイロットをしていてもそうなのですから、一般の方々はヘリコプターは漠然と空中で止まれると言う程度の認識があれば良い程度でしょう。
空中で静止ことができると言うことは、どれほどの能力、特徴であるかすこし書いてみます。
飛行機は着陸離陸に際して空中で止まることは出来ませんの、一定の滑走路の長さがないと安全ではありません。
過去に日航機がインドで着陸進入中に、付近のローカル空港を国際空港と間違って着陸してしまい、オーバーランして大破しています。
また 空自のF104が4機編隊で横田基地に着陸するところを、間違って入間基地に着陸してしまい、全機 無事に停止できたものの、離陸できなくて陸送したことがありました。
ヘリコプターはこのようなことはほぼ、起こり得ないでしょう。
空中で停止できるわけですから、着陸地が狭かったりて安全でない恐れがあるなら、ゆっくりと進入できますし、さらには空中で停止して心行くまで確認してから、着陸するかしないかを決めればよいわけです。
むかし、航空大学の本科(固定翼)出身の会社の後輩がいておもしろいことを言っていたことがあります。
定期便の副操縦士をしている同期生をヘリに乗せる機会があったとき、横に乗せて飛んだそうです。
そのとき 着陸進入でヘリポートにアポローチし、30メートルでホバリング着陸と言うところまで来たとき、そのまま来たコースを逆に後進して、後戻りしてやったそうです。
その 副操縦士君 体が 固まっていたそうです。
そのような極端な飛行がいとも簡単に出来るのが、ヘリコプターなのです。
そういえば、基本訓練の時に、普通進入着陸の降下角(パス角と言います)がよくわからなくて決まらなかったとき、同じようにバックして飛んで教示してくれた教官がいました。
故 宮田 豊昭 教官は、止まっていても制御できる乗り物はヘリコプターだけだと言っておられました。
そのようなヘリコプターが、飛行機の基準を緩和しただけの、着陸帯 進入空域の基準によって規制されているのはどうも納得がいかないのです。
ヘリコプターは狭いところに着陸するときは十分速度を落としてアポローチすればいいし、障害物があるなら進入方向や進入角度を変えればいいだけの話ですし、さらに心配ならホバリングして納得がいくまで確認すればいいだけのことです。
狭いところに許可を受けないで違法に着陸することが、無法者ヘリパイロットのような目で見る風潮がありますが、逆に言えばヘリコプターの最大の特徴であるホバリングということを理解しない今の制度が異常なのかも知れません。
この最大の能力を生かさないで、ドクターヘリの運航はあえないでしょう。
MRJ ついにゴーサイン、、、、
三菱が構想していたMRJがついにゴーサインが出たようです。
YS11から40年ぶりのことだそうで、航空関係者としては非常にうれしい限りです。
世界中に売れて高い評価をされるように願っています。
しかし、この100人乗り程度のジェット旅客機は需要も多い代わりに、競争相手も多く後発の三菱に勝ち目があるかどうかは、5分5分程度かも知れません。
自動車では世界中にこれだけの評価を受けている日本が、いざ航空の世界ではその名はほとんど評価されていません。
スペイン インドネシア ブラジル カナダは固定翼機をずっと生産していますし、ヘリコプターはイタリアがオリジナル機を作っています。
日本で戦後オリジナル機を作った例は、空自の練習機 富士重のT1 三菱T2 輸送機 川崎C1
OH1 くらいでしょうか。
民間の航空機では有名なYS11 と ヘリのBK117くらいでしょう。
日本の航空機工業はアメリカ機のライセンス生産と下請けで暮らしてきたと言っても過言ではないでしょう。
武器輸出禁止原則があるために自衛隊の使う航空機は練習機を含めて輸出することが出来ないために、よほどいいものを造っても、国内使用に限定されるためずいぶんと割高になり、はじめから輸入でお茶を濁す体制で、新規開発に力が入ることはありませんでした。
A航洋が使っていた204B-2 UH1の出力向上型ですが、全部東南アジアに売って、B212に変えようとしたことがありましたが、通産省から武器輸出はまかりならんと言う横槍が入って計画は頓挫したことがありました。
いわく、小改良で機内に機関銃を装備できるからだと言う理由だったそうです。
屁理屈はどこにでも着きますので、今のゲーム機の性能を思う時、武器輸出の最たるものだと思うのですが、最近は通産も余計なことを言わなくなったようです。
警察や消防にヘリコプターが100機単位で装備されましたし、防災ヘリも50機でした。そして今ドクターヘリが50機装備されようとしている時、純国産のヘリが1機もない状態を見る時、非常に寂しい気持ちになります。
三菱MH2000はある程度そのような需要も見越して開発されたものと思いますが、テールロータードライブ系統の設計不備で墜落死亡事故を起こしていまって、ほぼ消えた格好になってしまっています。
同じような事故をMD900もEC135も起こしていますので、一人三菱のみが消えていくことはないと思います。是非復活してさらに新しい物も実現できないでしょうか。
航空機の技術は最高で、自動車の技術の比ではない。 このようなことはまったくないと思います。今の高性能で極限までコストを切り詰めてなおかつ耐久力、信頼性の高いものを造ることが出来る日本の底力をMRJにぜひともぶつけて世界最高のものを作ってほしいものです。