ヘリパイロットの5感、、、

飛んでいるヘリコプターに何らかの異常が起きて、パイロットがいち早く正しい処置ができれば命を長らえることができ、異常の発見が遅れて、さらに間違った処置をすれば帰らぬ人となる可能性があります。
とはいうものの、パイロットはただの人で、神ではないので豊富な知識と経験があったとしても、そう簡単には異常の発見はできないのが普通なので、多くの計器類が様々な情報を指示し、それでもパイロットはそうやすやすと状況がつかめないことが多いので、重要な故障はまず警告灯や注意灯で教えてくれることになっています。
ただし注意灯は数多いので、どこかで何かが起きたという指示灯、マスターコーションの注意灯が装備されている場合が多いようです。
マスターコーションはおおきな注意灯でパイロットの正面にあるので着いたらいち早くわかり、ヤワラ何かなと計器盤を見渡して何が起きているかを探すということになります。
すぐに不時着しなければならないようなものなら、マスターコーションを消して異常のある部分の注意灯も消してということになります。
いきなり墜落するような故障なら、警告灯のほかに警報音が鳴ることになっていますので、直ちに処置が必要なのですが、車輪が降りていないよと警報音が鳴っているのにうるさいなとわざわざ警報音を消すパイロットもいたそうですから、思い込んだらパイロットは何をしでかすかわかったものではありません。
特にヘリパイロットには計器類や注意灯以外に体感や音、そして匂いなども重要な情報源で音はローターの回転数、エンジン音は爆発音以外はよほどでないとわからないようです。
匂いはオイルの焼ける匂いや電気配線が焼ける匂いが重要ですがどちらも体験しています。
体感で重要なのは振動なのですが、よほど大きい振動でないと判断できないことが普通で、明らかにわかるものだと5分後に墜落となりかねません。
ドクターヘリに患者を収容して離陸し、スピードを上げるとかなりの振動を体感し、不時着しようと減速すると収まるという経験があり、念のため5分以内に着陸し、点検、検討したことがありました。
隣に座った整備士のシートベルトの端末がドアに挟まれて、5センチほど外に出ていて、速度を上げると胴体の外板を叩いていたのではないかと判断したのですが、本当の故障なら墜落していた可能性があります。
多くの計器類のうち、一部は正常範囲にグリーンマークがあって正常値がわかるのですが、他の計器類やスイッチの位置の正常位置を覚えておくことが重要です。
パイロット自身の5感や感覚、経験、知識が最終的に命を守るか死ぬかの分かれ目となることがあるので、日ごろから漫然と飛ばないことが重要となります。
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ホバリングターン

空を飛ぶ航空機の中で、ホバリングターンという飛び方をできるのはヘリコプターだけしかなく、これをマスターすることがヘリパイロットの基本であってまた醍醐味と言えるでしょう。
特にヘリであってもタンデム式という前後に2機のローターを装備しているバートルや左右に2機のオスプレイはやや特徴が違い、今日の記事はシングルローターと呼ばれるごく普通のヘリの話です。
カモフのような2重反転式はほぼ、同じですが操縦したことがないので何とも言えないのですが、若干の違いはありそうです。
ドクターヘリが垂直に上昇しながら、向きを変えて任意の方向へ向かっていく動画がよく公開されていますが、まともにホバリングターにをできるパイロットはほぼいないようです。
どのように飛んでいるかというと、ホバリングターンは軸がぶれないでターンすることで、ターンしながら位置がずれるのは下手糞ということになります。
わざと後ろへとか横へとか移動させながらターンをしていると言い訳が聞こえてきそうですが、ならば一回でも軸をずらさないでホバリングターンをしながら上昇して見せてみなとい言ってあげたくなります。
そもそもヘリパイロットになるための最初の訓練で行う、ホバリングターンの科目の訓練試験から軸がずれるターンをするのは、パイロットを中心にターンをすることになっていて、ローター軸を中心にターンすることをさせないのは、自分を中心に回ることほうが操縦がやさしいからです。
ローター軸を中心に回転させることはヘリが一番安定し、旋回したときに狭い周りの障害物に当たりにくくなる回り方です。
そして乗っている乗客にとってもヘリが安定し、揺れが少なくなるので空力的にも理にかなった操縦法と言えるでしょう。
重量物を吊り下げていた場合には軸を中心に回らないと、つり荷が大きくぶれてヘリは引き回されてしまいますので、物輸パイロットは自然と安定する無理がかからない飛び方として、軸を中心にホバリングターンをする習性が付いています。
ホバリングターンではなく、極遅い速度で方向を変えるときに横ばいのような動きは普通しないかごくゆっくりとするような,空力的に無理のない飛び方をすることがかなり重要となります。
おおきなコマが回っているのと同じなので、いかに安定したまま動かすかというような飛び方が理論にあっていて、安全で乗り心地が良く、エンジンにも無理をかけないということになり、自由に動くからと言って理論を無視した飛び方はいずれ、危険な目にあう可能性があります。
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パイロットは空気の濃さを感じるか、、、、

人間が空気の濃さを実感するのは国内では富士山に登った時などで、酸素を必要な量を取り入れにくくなって酸欠の症状が出るときでしょう。
航空機はエンジンが力を出すための酸素と、翼を通過する空気流量で揚力を発生し、空中に浮いているための力を得るという二通り空気にお世話になっています。
空気の濃さは上空に上がるにしたがって薄くなり、ほぼ18000フート 6000メートルで半分の密度になります。
ということンあるとほぼ6000メートルでエンジンの出力は半分になり、空気が翼を通過して得られる揚力も半分になり、航空機の重量も半分しか支えられないということになります。
地上で最大重量1トン航空機が6000メートルでは500キロしか支えられないということになりますが、厳密には地上ではもっと余裕があるので、上空での逓減率は必ずしも完全に比例しないようですが、ヘリコプターの場合、ホバリングというもろエンジンとローターの力で重量を支える飛び方の場合はてきめんに空気密度が影響してきます。
固定翼機の場合は最良上昇速度で飛んでも支えられない高度が上昇限界となり、金魚がぷかぷかという状態になり、舵は全く効かなくて、フラフラ、エンジンは加速しないとというか減速加速が反応しなくなります。
ヘリの場合は2000メートルくらいから舵が利きにくくなり、3000メートルくらいはふらふらする感じが出てきて、エンジンの加速もワンテンポ遅れで、重量限度まで荷物を吊って、減速して定位置にホバリングすることがむつかしくなります。
もちろん夏は暑く冬は寒いので、空気は暑いほど薄く、寒いほど濃くなりますので、夏場が重いものは吊れない、冬場は重いもに出平気となるようなことが起きてきます。
ローターは重量を支える役目ですが、テールロータも空気で揚力を出して、トルクで回されるのと釣り合うように働くのですが、実はこのテールローターの揚力も上昇とともに低下して、重量を吊れるのに、テールローターの能力が先に弱くなるという、設計者が意図しないような現象が起き、ベル社は何回もテールローターを強化する改修を行っています。
真夏の黒部渓谷のダムよりさらに上流の7000フィートくらいのところへホバリングして、荷物を降ろそうとしたときに、ラダーをいっぱいに踏んでも回転が止まらなくなり、回転しながら荷物を着けたことがありました。
周囲にぶつかるものがなかったので助かりましたが、その後テールロータだけでなく、ギアボックスまで強化されました。
空気密度の低下による最大重量の制限はフライトマニュアルのデータ表に精密に書かれているのですが、テールローターの性能低下は表になっていないので、体験するまでわからないということなのですが、ちょっとした風で変わるの安心できません。
十分に性能表を研究して実際のフライトに当たっていても、カタログデータなのである意味、車の燃費などと同じで盛ってる可能性があり、墜落してからしまったと思っても後の祭りです。
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ヘリパイロット 成長の限界、、、、

人間は生まれて死ぬまで通して同じ日はなく、常に変化の中で生きて、そして死ぬのですが、その中で必ずピークというものがあり、進歩成長がいつかは止まりそして衰えていって人生が終わります。
死ぬ寸前まで現役で働き、社会に貢献し、一つのことを継続して、最後まで成長を続けることができる職業の人はずいぶんと幸せでしょう。
職業の中でも体力や、微妙な感性を必要とする仕事は40代とか30代でピークが来てその職業を継続できないものは野球選手などスポーツ選手などですが、コーチになったり監督になったりで一応職業は継続は出来ますが、やはり昔はよかったなと思うこともあるでしょう。
ヘリパイロットも体が資本の職業なので、40代ころにはピークが来て、少しずつ技量が落ちてはきますが、70歳ころまではほぼ飛ぶことはできるように思いますが、職業として金をもらって飛ぶのは65くらいでしょうか。
20代から飛び出して3000時間くらい飛ぶとほぼ一人前として一応の技術は身に着くようですが個人差はかなりありそうです。
そしてどこまで伸びていくかは、経験とともに乗るヘリが大型化し、技術的に難易度が高い飛行に進んでいくとその都度一段と技術は上がりますが、同じことを続けざるを得ない飛行を長年やるとどこかで進歩が止まるとともに、いつかはゆっくりと低下していくようです。
飛行する区域も経験や飛行任務を種類が変わるたびに、ヘリパイロットとしての経験技量は向上しますが、一生一つの県内しか飛ばないと、パイロットとしての能力は限定されてきます。
自分自身は小さなヘリから大型機まで、地域は日本国内ほほすべての県はもとより、インドネシアまで、飛行任務は農薬散布、送電線パトロール、テレビ取材、物資輸送、ドクターヘリと、ヘリが飛ぶ任務はほとんどすべてを経験することができたので、その都度、新しい経験を重ねることができて、本当にラッキーでした。
つまり、ほぼ強制的に進歩を迫られたということなので、新しい刺激が自分を鍛えてくれたということになったようです。
さて、近年のヘリパイロットは私と同じような道を歩めことは大変困難で、よほど自らを律しないと早くピークに来てしまう恐れがあり、人事管理や運航体制の改善などでヘリパイロットの経験技術を向上させる工夫をするべきでしょう。
特に県単位の運航にこだわる、警察、消防防災ヘリはこの傾向が大変強いので、パイロットの成長に大いに支障が出る可能性があります。
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ヘリパイロットの錯覚、、、、、

人間の目はハイビジョンの映像の千倍、1万倍の情報を取り入れることができるほどのとんでもない高性能がある反面、情報を処理する脳での段階で、だまされやすいという特徴があります。
ビックリハウスで傾斜をだまされたり、矢印の方向で長さを見誤ったりするのはある意味では正常だということも言えるようです。
ヘリパイロットは経験がない場面や知識がない場合、だまされることが多く起こり、いきなり命取りになる場面があるので大変な仕事なのですが、大ベテランの戦闘機パイロットが二人も載っていて離陸直後にいきなりロールを打って海に激突して殉職した例も同じ類の事故例と言えます。
写真のヘリは雪が積もったヘリパッドに着陸する様子ですが、ホバリングでダウンウオッシュが雪面に当たると同時に舞い上がった雪が四方八方へすかなりのスピードで飛散します。
この時に舞い上がる雪の量が多くて、周りの地形が見えなくなり、パイロットから、風防を通して飛んでいく雪しか見えなくなると、ヘリが猛烈な速度で後ろへ進んでいるように感じてしまう恐れがあり、それを止めようとするといきなり前へ動き、前方に障害物があれば激突します。
同じような現象は水面でホバリングした時に、同じように波紋が四方八方に広がり、錯覚するとうしろに進んでいるような感覚になり、どんどん前へ前へと移動してしまう過ちをすることが起こり、消防防災ヘリが山林火災の消火作業でホバリングして、バケットに給水する場合に起こりやすくなります。
山火事消火作業の映像がテレビニュースで流れることが時々あるので気を付けて見るとよいでしょう。
もっと小規模の錯覚があり、荷下ろしや救助の吊り下げなどの場合、高度を上げるときには見え方で少し前に出るような配慮が必要です。
深い谷間で長く吊り下げワイヤーを出して高度を変えるときには、精密な場所を維持するためには見えかたが変わるはずなので、安易に同じ見え方で上下すると周りの障害物にローターやテールローラーをぶつける恐れがあります。
ヘリパイロットが錯覚に陥らないためには、どのようなときになるかをあらかじめ理解していて、そのような状況にはなるべく近寄らないような操縦を心がけることでしょう。
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