振動が大敵、ヘリコプターと送電線、、、、、

電発紀和 (7)

 飛行機が初期のころはプロペラやシリンダーが往復するピストンエンジンのため常に振動に曝されていましたが、ジェット機になると振動がほとんどなくなって、多くのデータを示すパイロットの前の計器類が並ぶ計器盤に、それぞれの計器の指針が引っかかって正しく示すようにと、インスルメント バイブレータなるものが装備されたほどでした。

 その点、ヘリコプターは進歩が進んだ今でも、いかに振動を抑えるかが乗り心地だけではなく、故障や寿命に大きく影響するほか、いったん異常な振動が起きると数分で空中分解するような事態も考えられます。

 定期的な点検整備では各部の振動を計測し、一定以下の数値まで調整をするのですが、中型ヘリでも数百キロの重さのローターが回転するため、ちょっとした異常でも大きな振動が出る可能性があります。

 そのため定期的に、振動計測器を着けて確認しますが、それぞれーローターが同じ軌跡を通るか、重量バランスはとれているか、そして前進飛行中は速度によって、前進側に回る時と、うしろへ回る時に同じ揚力を出すために迎角が大きく変化しても軌跡が外れないような調整をします。

 テールローターやエンジンのタービンの回転中の振動も計測します。

 おなじように振動が故障の原因となるのが送電線の鉄塔や送電線自体です。

 送電線は巨大なギターの弦と同じで微妙に振動し、場合によってはブーンと言うような音を出して騒音公害となることがあるようですが、そのため線の途中には重い重りを何か所も付けて振動しないように工夫しています。

 それでも長年にわたる期間には、クランプというもので止めてある場所で線がやせるということが起きるようです。

 また鉄塔自体も線の振動の伝搬によって振動しているので、鉄塔を組み立てて閉めてあるボルト類が緩んだㇼ、やせる現象があるようです。

 またそのゆるみの狭い隙間に水分が入って凍結,溶解を繰り返して、やせて緩みで50年程度ですべてのボルトを取り変えるような工事もしたことがあります。

 ヘリコプターも送電線も定期な点検整備で重大な事故を防ぐようにはなっているのですが、ヘリの場合は飛行中にパイロットや整備士が異常振動に気が付くようなこともあり得ます。

 ヘリは振動の塊なのですが、ほぼ大事故防止は達成できているようです。

 オスプレイの場合は、5000馬力で回りながらの巨大なローターのほかエンジンもギアボックスも可働するので、通常のヘリ以上の点検整備が必要でしょう。

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陸自のオスプレイ、予防着陸、、、

オスプレイ

 https://news.yahoo.co.jp/articles/c8cd5c16e3797e883b251bc57210f5bbf3351d4d

 陸自のオスプレイが8月31日、静岡県沖を飛行中、オイル系統に金属片を探知し、空自の静浜基地に予防着陸したというニュースが入っています。

 エンジンやギアボックス内を循環するオイル系統にそれぞれ複数個のマグネチックデテクターという、微小な金属片を磁石で吸い付けて、通電して注意灯を点灯する装置に何らかの金属片を吸い付いたということです。

 おおむね吸い付ける金属片などには3種類あって、ベアリングのメッキなどがはがれて髪の毛状になったもの、また同じものでかけら状の箔のような物、スラッジという粉状のものの集まり、この3種があるのですが実は本当にギアの先っぽが欠けた塊のようなものだったら、大変危険でギアボックス内のギアがすべてバラバラになる可能性があります。

 細かいものが付いていて飛行に対して影響がないものかどうか確認するため、瞬間的に高電流を流すと一瞬で溶けて飛散して注意灯が消えれば、すぐに墜落する可能性はほぼゼロとなります。

 消えても消えなくても一応近くの基地などへ着陸し、オイルを抜いて細かい布で濾してみて、どの程度金属類があるかを確認し、チップデテクターに着いたもの以外がないなら、ギアボックスはほぼ正常なので、飛行を継続して様子見となります。

 一定以上の金属類が確認されたら、当該ギアボックスは取り下ろして、正常なものと交換します。

 ここで問題なのは、去年のアメリカでの事故原因となった、エンジンとプロペラとつなぐクラッチと、胴体中央部にある左右のプロペラをつなぐギアボックスで、注意灯が点灯したなら、左右のプロペラの連結が外れてバランスを失って墜落する事故につながる可能性を否定できませんので、厄介な故障ということになります。

 このチップデテクターという装置は大変敏感に反応するように作ってあり、100回点灯しても一回も墜落する可能性がないほどなのですが、私の一生のフライトではただの一回だけ、エンジンオイル系統から5ミリほどのギアのかけらが出たことがあり、即エンジン取り卸しとなりました。

 この陸自のトラブルは場所によってはアメリカでの事故と同じことが起きる可能性があり、慎重な対応が必要でしょう。

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ヘリコプターの寿命、、、、

ボルネオにて

 防災ヘリが日本で初めて各県に導入配置されて、ほぼ25年過ぎたころ、つまり最近ですが、一斉に新しいヘリに更新しました。

 つまり、何か寿命があるように一斉に更新した様子なので、まるで寿命が来たようなことでもあるのかと思うほどです。

 航空機は一定の飛行時間ごとに点検整備をしながら長年飛び続けるのですが、防災ヘリが某縫うされ始めた25年30年前には、点検整備の方法がオーバーホール式と言って、ヘリの機種やエンジンの型式によって、1200時間ごととか 300時間ごととかで、ほとんどすべてをバラバラにして、決められた部品やいたんだ部品の交換をして再組立てするような整備方式でした。

 官庁のヘリは年間の飛行時間を予算によって決めていて、防災ヘリの場合は年間300時間などと決め、25年間で6000時間で廃棄、それまでにはオーバーホールを何回すると決めていたようです。

 6000時間で廃棄するのは過酷なフライトをする自衛隊の航空機に倣ったようで、年間何時間飛ぶかわからない民間のヘリの場合は25年も飛べば1万時間飛ぶことなど普通にあったので、6000時間などと決めないで、どんどんオーバーホールを繰り返しながら飛び続けることが普通でした。

 忙しく飛ぶ送電線建設のヘリは月150時間以上飛ぶこともよくあり、一年間に1000時間も飛べば1万時間など10年で過ぎてしまいます。

 世界で一番飛んだヘリで、自分が知っている例ではインドネシアで石油開発で飛ぶベル205が23000時間というヘリがあり、自分自身が乗ったヘリでは、13000時間を超えた204Bがありました。

 多分ロ-ターは寿命の短い金属製なので確か5000時間、エンジンは3600時間オーバーホールなので、新品の時から乗っている部分品はほとんどなく、胴体だけがもともとのモナだったようです。

 つまり少なくとも1万時間以上、頑張れば2万時間でも使えるものを6000時間で更新するとは贅沢なのですが、飛行時間だけでなく、経年変化でも痛むので25年は妥当なところでしょうか。

 予算で管理する官庁ヘリは年間の飛行時間を決めてしまって、長年にわたって運航するので計画的に正確に維持できますが、どの程度飛ぶ景気次第な民間ヘリの耐用年数の見極めは難しいところです。

 自分自身は長年にわたって、送電線パトロールや送電鉄塔建設、木材搬出など兆時間飛ぶ仕事ばかりいていたので、振り返ってみれば、飛行時間の多い、おばかり乗っていたような気がします。

 唯一新品に乗った機種は富士重工が新規に開発した富士ベル205B、JA6181で、新規製造から1000時間までのフライトのうち半分の500時間以上は飛んだのですが、新車のにおいに包まれていました。

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大阪府警 無車検で2500キロ走る、、航空機は?、、、

朝日時代 (24)
  写真は大阪府警のヘリではありません、  某県警のヘリです。

 https://news.yahoo.co.jp/articles/f21d05472872deddc3744d0dea71c11ca87f44a1

 ポカミスはどこにでも起こりますが、法律が絡むと謝って済むなら警察はいらないということになります。

 大阪府警が捜査用に使っていた車の車検を見過ごして、約1か月2500キロ走ってしまったそうです。

 一応法規違反なので運転手は6点の減点、自賠責が同時に切れていると12点で一発免停だそうですから、1か月の間に運転した者はすべて運転業務日誌でバレますので、全員罰金を支払うことになります。

 これだけでも相当な汚点ですが、ほかにもパトカーの車検証が亡くなったまま走っていたのと、もう一台車検切れで走っていたことがばれていて、今後厳正に運用すると謝罪したのですが、再度言いますが謝って済むなら警察はいらないということを強調しておきます。

 これと同じことは航空機で起きるかというともちろん起きるということなのですが、スピード違反で止められることはないので、点数を引かれて罰金はなかったようです。

 1か月150時間も200時間も飛んで、原発につながる大送電線の工事が集中していた当時、車の車検に当たる、耐空検査を受けることを整備管理が見過ごして、1月、100時間以上飛んでしまったそうです。

 耐空検査は1年が期限で当時は3週間くらい準備の整備点検を行い、検視官が会社に来て、書類検査を半日以上行い、その後、地上で機体の検査をし、次は同乗して試験飛行を行って、各種系統が正しく作動し、誤差の範囲に収まっていることを確認して合格となり、翌日くらいに耐空証明書を受け取って晴れて飛べることになります。

 飛行記録を正確に残すことになっていますので、100時間はさすがにごまかせなくて、自首したそうですが、たしか、検査官もさすがに困って飛行記録を改ざんするように指示したと聞いていますが、、、、、

 耐空証明のない飛行機を飛ばすとパイロットが処分されるようですので、飛行前の確認事項にカバンいっぱいの書類をチェックして、天候をチェックして、重量重心、燃料、オイル、と全部きっちりすると離陸前に半日かかります。

 ドクターヘリは3分で離陸しますので、できるだけ朝の点検で済まし、本当の離陸前は最小限となります。

 いかに最小限と言えども、いち早く離陸するためには、どこへ飛ぶのかと、天候は行けるかが絶対に必要な情報なのですが、どこかのドクターヘリはパイロットにどこへ飛ぶかをいち早く教えないで、「ドクターヘリエンジンスター」 とか、患者の症状はどうしたとか、アホなことを言っている現場もあるようです。

 出動要請が入りましたので、まず 耐空証明書から確認します、、、、、、、、アホか!!

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ヘリコプターの振動、、、

8月13日 018

 https://news.yahoo.co.jp/articles/f512639f90debf5f6a4f5afd8cf0cec569d644bf

ネットニュースで鳥取県境港の海上保安庁のヘリが飛行中に重さ2グラムのアルミ製のプレートを落としたと大々的に報じていましたが、何故このようなノミの小便のような小さなことを報じるのかと言えば、当局が万一に備えて発表するからでしょう。

 マスゴミはニュースを取捨選択す能力がなく、ニュースがない日なら何でも取り上げるということでしょう。

 ヘリが部品類を落とす原因は整備不良や強い風などがありますが、ヘリは固定翼機に比較して、特有の振動があり、場合によっては一瞬で機体が破壊されるようなものから、ほとんどわからないものまで、さまざまなものが回転しているので、周波数や振幅など様々です。

 そして振動自体をゼロにすることは不可能ですが、さまざまな調整を行ってそれぞれの許容範囲内に抑えて日常的に飛行することになります。

 一番大きな回転するものと言えばローターで、大型機なら一枚が100キロを超えるのも普通で、これがエンジンの出力で毎分300回転くらいで回っていますので、振動が出れば機体はすぐに空中分解することすらあります。

 どのような調整をするかと言えばまずはブレードの重量を同じにする静的なバランスを取ります。

 通常はブレード内の重りを調整するのではなく、ブレードをハブに止めているボルトの中に鉛を調整して入れて、遠心力が等しくなるようにしてやります。

 次は回転しているときにすべてのブレードが同じ軌跡を通るようにしてやることで、回転するごとに起きる振動を低減させるのですが、前進飛行中には、ヘリの前進飛行側と、その逆に後ろへ回る時ではブレードとしての対気速度が前進速度の2倍違うことになります。

 この対気速度差はホバリングの時はゼロで同じ速さですから、速度によってローターの迎角を変えて左右の揚力を同じにするのですが、そのような変化があっても同じところを通過するように、先端に着いた小さなタブで変えるか、機種によってはピッチロッドの長さを変えてやります。

 この調整はホバリングから高速巡航速度まで、区切ってそれぞれ調整して、振動値を規定値に抑えるのですが、ホバリングで良くても速度を出すと暴れ出すなど、特に後家ブレードと言って一枚だけ変えると調整がむつかしいことがあります。

 このほかテールローターの振動や大型ヘリではエンジンの振動調整などがあって、それぞれ規定値に調整するのですが、ヘリは振動の塊で、全体が長期間の振動によって劣化すると言えるので、いきなり墜落するような事例もあるようです。

 そしてさらに、完全に調整が取れた機体でも、離着陸のホバリングから巡航に、またその逆の場合も大きな振動が起こる局面が毎回起こるので、その部分をスムーズに通過してやって無用な振動が長く続かせないようなテクニックが必要です。

 そのような飛び方がヘリを傷めない機体愛護の飛び方で、エンジンのパワーを使いすぎないことよりはるかに重要な操縦方法と言えるのですが、そのようなことは基本操縦法には何の教えもなく、過酷な重量物の輸送で自然と身に着いた裏技です。

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プロフィール

bell214b1989

Author:bell214b1989
35年間のヘリパイロット生活 
最終5年間はドクターヘリでした。

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